「雇い止め」が続出する労働者派遣法改正案の問題点
JIJICO / 2015年6月20日 10時0分
「雇い止め」が続出する労働者派遣法改正案の問題点
改正労働者派遣法のポイント
現在、国会提出中の労働者派遣法改正案をめぐり、与野党間では未だに対立が続いています。まずは、今回の改正案のポイントについて確認しましょう。
1)一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止し、労働者派遣事業を全て許可制とする
2)専門26業務を廃止し、受け入れ期限を一律最長3年にする
3)派遣労働者の均衡待遇を推進するため、現行の規定に、派遣元に対し派遣労働者の均衡待遇の確保の際に考慮した内容の説明義務を追加。また、現行の規定に加え、派遣先に対し、同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金の情報提供、教育訓練、福利厚生施設の利用に関する配慮義務を追加。
4)派遣労働者のキャリアアップを図るため、派遣元に対し、計画的な教育訓練やキャリア・コンサルティングを義務付ける 等
派遣労働者の長期雇用が不可能に
これらの改正点の中で、最も大きな影響が出るといわれているのが2の「専門26業務の廃止、受け入れ期限の一律3年」です。専門26業務とは、労働者派遣法で定められた特定の26業務で「プログラマー」「設計」「OA機器オペレーター」など、派遣期間制限のない業務のこと指します。雇用関係の多様化により派遣労働者は急増し、全国で126万人(平成26年統計 厚生労働省)になりますが、そのうち13万人の派遣労働者が法改正の影響によって失業する可能性が懸念されています。
専門26業務の中でも、3分の2を占めている事務関係の派遣労働者は、3年という受け入れ制限期間がないというメリットから、企業側も長期間にわたり契約を継続していました。しかし、原案の法改正が通れば同じ職場で働き続けていた派遣労働者は働くことができなくなり、「正社員として受け入れてもらう」「他の事業所に派遣される」、もしくは「退職」という選択肢を迫られることになります。
双方が良好な雇用形態の構築と労働環境の整備が求められる
改正案では、派遣先が正社員雇用するよう派遣会社から申し入れることや、派遣会社が無期雇用として採用するなどの雇用安定措置も義務付けていますが、女性や高齢者などは正社員化の可能性は極めて難しく、事実上「雇い止め」として近い将来、仕事を失うことは間違いないとささやかれています。このような方々に対する措置を、どのように補うのかを政府は早急に検討すべきでしょう。
労働者のキャリアアップや正社員化の助成金活用等が政府の応急的な救済措置となりますが、その場しのぎではなく、中長期的なスパンで企業側・労働者側がともに良好と思える雇用形態の構築と労働環境の整備が求められています。今後、それを実現できるような法改正が必要ではないでしょうか。
(田中 靖浩/社会保険労務士)
この記事に関連するニュース
-
「これで65歳までは安心」と思っていると痛い目に遭う!再雇用に潜むリスクを専門家が解説
日刊SPA! / 2024年5月4日 8時52分
-
パートタイマーでも給料アップ?雇用形態にかかわらない「同一労働同一賃金」とは
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月27日 5時0分
-
うちの会社は60歳定年です。「再雇用で65歳まで働くと、給与は下がる」と言われたのですが、受け入れるしかないのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月25日 23時0分
-
非正規で働き始めてもう5年。転職できないまま、時給も上がらず。非正規の時給はどのくらいが平均なのでしょう?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月11日 10時20分
-
【健康診断】週に32時間勤務しているアルバイトです。「健康診断を受けて」と言われましたが、義務なのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月10日 5時10分
ランキング
-
1世界3大投資家ジム・ロジャーズの残酷すぎる直言「日本の40代以上は日本以外の場所へ今すぐ引っ越しなさい」
プレジデントオンライン / 2024年5月7日 16時15分
-
2いきなり!ステーキが、名物「オーダーカット」を廃止していた! ピークから5年、経営再建の現在を探る
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月6日 6時30分
-
3一時1ドル160円から乱高下 為替介入2日で8兆円規模か【Bizスクエア】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月8日 6時30分
-
4アップルやアマゾンでも「失敗する」共通の特徴 プロジェクト自体は最終目的ではなく達成する手段
東洋経済オンライン / 2024年5月7日 17時0分
-
5ローソンの「韓国コスメ」がバカ売れ 7カ月で200万個も売れた「4つ」の秘密
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月7日 6時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください