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最悪の場合亡くなるケースも、運動中の学内事故を防ぐには

JIJICO / 2015年6月25日 12時0分

最悪の場合亡くなるケースも、運動中の学内事故を防ぐには

最悪の場合亡くなるケースも、運動中の学内事故を防ぐには

福岡市立中学校で柔道部1年の女子が大外刈りで後頭部を打ち死亡

近年になって急増する学校事故。今年5月には、福岡市立中学校で柔道部1年の女子が大外刈りで後頭部をうち亡くなりました。死亡事故は119名(1983~)を超えています。ここ2、3年は柔道での死亡事故がなかっただけに、今回の件は非常に悔やまれます。

子どもたちの体力低下が叫ばれている昨今、このような事故は決して他人事ではありません。「安全のために」と公園の遊具が撤去されて外遊びが減少するなど、「危ない要因」を摘み過ぎたことで危険察知力、危機対応力が低下しているのではないかと感じます。子どもたちを危険にさらすのはよくありませんが、年齢や体力に応じて段階的に運動を体験していくことは大切で、それを見守る環境作りが必要だと思います。

「危険だからなくす」は、体の能力を引き出す機会を失うことに

頭から突っ込むなど、事故率の高い跳び箱を例に挙げてみましょう。この種目は、「走る」「跳ぶ」「手をつく」「跳び越す」という動作に分けることができ、いくつもの動きが必要であることがわかります。

勢いをつけて踏み切ったら跳べるという訳ではないので、手をつくことに慣れさせたり体重移動の感覚を覚えさせたりすることで、跳び箱を成功させるために必要な要素を身につけていくことができます。「危険だからなくす」という考えでは、体に備わっているさまざまな能力を引き出す機会を失うことになるのではないでしょうか?

しかし、先生がひとりで限られた時間内に20~30人を教えるのはとても大変です。「指導者ならそれぐらいできて当然」と思う人がいるかもしれませんが、生徒が全員素直で言うことを聞くとは限らないし、能力には個人差があります。私は、2人の子を持つ親ですが不完全な部分が多くあります。つまり学校の先生も完璧ではありません。そういったことを踏まえたうえで、以下の2つを提案します。

地域全体で学校と子どもを見守る環境づくりで事故を防止

昔の常識は今の非常識と言いますが、部活動の場面でも同じです。一昔前は「水を飲むな」といった慣例がありましたが、現代のスポーツサイエンスでは水分摂取は必須です。また、先輩から後輩へと代々受け継がれている準備体操や整理体操、筋力トレーニングなどが、何を目的として行われているのかを知る学生や指導者は多くないでしょう。本当は意味のないものかもしれませんよね。

「餅は餅屋に聞け」ということわざがあるように、専門家を招いてきちんと指導してもらうのも事故予防につながるでしょう。また、定年退職したシニア世代の中には、「まだまだやれる」「今までの経験を生かしたい」と考えている人もいるでしょう。高齢化社会だからこそ人財はあふれています。

体育教師だった人や各競技の専門知識と経験を持っている人などに活躍してもらうのもいいと思います。人生の先輩であるシニア世代と触れあうことは、学生たちにとっても良い学びになります。先生も、ひとりで抱えていた負担が軽減され、より一層授業に専念できるようになるかもしれません。シニアの人たちは、学生や指導者と活動したりコミュニケーションをとったりすることで認知症予防、運動不足解消などにつながります。地域全体で学校と子どもたちを見守る環境を作ることで、学校事故の減少・防止ができるのではないでしょうか。

事故が起きてしまったら素人判断による処置は禁物

ただし事故が起きた場合、素人判断による処置は禁物です。競技中、以下のような症状が現れたら、すぐに担任・顧問・保健医にその旨を伝えましょう。

・めまいがする
・吐気がする
・意識がもうろうとする

上記のような状態であれば競技の続行が不可能であるのはもちろん、ひとりで帰宅させるのも非常に危険なので、早急に病院で診てもらえるよう保護者に迎えに来てもらったり顧問が送っていったり、あるいは救急車を呼ぶなど迅速に対応する必要があります。運動中の事故が最悪のケースに至らないよう、最善の配慮と準備を心がけたいものです。

(伊藤 勇矢/柔道整復師)

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