檀家制度を廃止?寺院が生き残るために取るべき策とは
JIJICO / 2015年7月14日 18時0分
檀家制度を廃止?寺院が生き残るために取るべき策とは
檀家制度を廃止した寺院で逆に信徒が増加
先日、埼玉県熊谷市の寺院で檀家制度を廃止したところ、逆に信徒が増えたという記事がありました。みなさんは檀家制度(だんかせいど)という言葉を知っていますか?この言葉をウィキペディアで調べると、「檀家制度とは、寺院が檀家の葬祭供養を独占的に執り行なうことを条件に結ばれた、寺と檀家の関係をいう」と出てきます。
つまり、寺院が先祖供養や葬儀などの葬祭供養を独占的に行う代わりに、檀家は寺院の経済面のサポートを行うというシステムです。しかし、現代ではこの仕組みが破綻しかかっています。
その理由はいくつか挙げられます。
(1)無宗教化(生活の中から仏教という宗教が、だんだん消えてきている)
(2)寺院が葬儀を仕切ることが少なくなり、寺院の仕事は読経のみとなってきている(葬儀は葬祭企業が仕切ることが通常になっている)
(3)寺院と檀家のお付き合いが希薄化している(家単位から個人単位へ)
(4)生活スタイルの変化(仕事の関係で地元に留まらず、人口が流動化)
(5)墓の継承問題(高齢化やおひとりさまの増加で墓を継承できない家庭も)
(6)その他(寺院と檀家間で意志の疎通が不十分でお互いの役割が不明確)
このような状況になってきたので、最近は、あえて檀家制度をやめる寺院も増えています。寺院も檀家も、なぜ檀家という仕組みが必要なのかをもう一度考え、互いによく話し合ったほうが良いのではないでしょうか。時代は変化していて、サービス内容が明らかでないと、消費者はお金を支払いません。今は契約の時代なので、契約で明らかにした方が良いとも考えます。これが面倒と考える寺院は、廃(すた)れていくのかもしれません。
寺院は集合墓地やイベントなどで収益を上げていくことで自立
ところで、私は寺院の墓地を見学していつも思うことがあります。それは、これからの寺院の姿です。檀家制度を維持しながらの昔ながらの寺院墓地、それとは別に無宗教にこだわった永代供養を行う集合(合葬)墓地、そして近所の人が集まれる集会場、これらをすべて持っているような寺院が残っていくのではないでしょうか。
このような寺院であれば、檀家であるかどうかに関係なく誰でもお参りに行くことが可能です。また寺院の集会所でイベントが開催されれば、多くの人が足を運びます。これによって、寺院は檀家制度とは別に集合墓やイベントで独自に収益を上げていくことができ、自立できるのではと考えられます。
オリジナルのサービスを突き詰めていくことがこれからの寺院の姿
日本の仏教は葬式仏教と言われることが多く、それは、葬儀のときだけしか仏教に触れず、意味も知らずに私たちが様式を真似ているだけだからです(戒名の意味が判らない、四十九日の意味が判らない、お彼岸の意味が判らないなどなど)。それでは、このような仏教の話は誰が伝えていくべきなのでしょうか。それは、寺院の関係者の人たちしかないように感じます。関係者が説法口調ではなく、参加者としっかり会話をして伝えていくこと、これに尽きると思います。私が面会する50代や60代くらいの人たちでも、葬祭の意味を知らない人は少なくありません。
檀家制度がしっかりと機能していた時代の寺院は、地域の行政機能、葬祭供養とよろず相談所を兼ねていたと言われています。今の時代、行政機能を代行することはできませんが、葬祭供養とよろず相談所の機能を寺院が提供することは可能でしょう。寺院は、地域の中でファンを増やし(フェイスブックで言う「いいね」をたくさんもらう感じ)、寺院が提供できるオリジナルのサービスを突き詰めていくことが、これから生き残る道だと考えます。
(鈴木 優治/終活・葬祭プロデューサー)
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