人気タレントの不倫騒動、悪いのは誰?
JIJICO / 2016年2月15日 11時0分
人気タレントの不倫騒動、悪いのは誰?
今回の不倫騒動で誰に対してどれぐらいの損害賠償が発生するのか?
CMカット、番組降板、休業宣言等々、ベッキーさんの「タレント生命」は「風前の灯」の状況にあるようです。この「不倫騒動」を突き詰めると、しょせんはプライベートな問題であり、私たちにとっては「他人事」に過ぎません。ただ、例の「LINEデータ」の出所や信憑性はともかく、生々しいやりとりの記録が流出したことで、好感度の高かったベッキーさんが「したたか」で「あざとい」キャラとしてクローズアップされてしまいました。「私たちもベッキーに騙されていた!」という視聴者の怒りが噴出し、お茶の間までもが「被害者」と化したことから、この「騒動」がここまで大きくなったものと思われます。
さて、仮に「ゲス乙女」川谷さんの奥さんが「不倫」の代償として損害賠償を求めた場合、ベッキーさんはどのくらい慰謝料を支払うことになるでしょうか。一般的な裁判例としては200万円程度が標準的な慰謝料額で、個々具体的な事情によって上下するとお考えください。夫が有名アーティストだとか、不倫相手が人気タレントだとかの事情は、それだけでは「加算要素」にならないでしょう。ベッキーさんが交際を否定する「嘘」の会見を行ったり、マスコミ報道が過熱したり、といった事情が「加算要素」になるとの意見もあるようですが、私は否定的な立場です。ベッキーさんは具体的な事実関係に触れておらず、奥さんの誹謗中傷に類する発言もありません。マスコミ報道については奥さん自身が「週刊文春」の取材に応じていますし、「LINEデータ」流出に奥さんが関与した可能性もゼロではないと思います。
慰謝料が減額されるケースとは
では、ベッキーさんに「減額要素」はないでしょうか。たとえば、男性が妻帯者であることを隠して女性を騙す形で交際が開始された場合、女性の年齢が若いために世間知らずで恋愛経験も少ないなど、男性と女性の関係が必ずしも「50:50」(フィフティ・フィフティ)とは言えないときには、女性側に「減額要素」が生じます。この点、ベッキーさんも当初は川谷さんの奥さんの存在を知らなかったようです。しかし、これを知ってからも川谷さんとの交際をやめなかったこと、ベッキーさん自身の年齢が30歳を超えており、社会人としての稼働期間が長い上に、川谷さんより年長であること等の事情に照らすならば「減額要素」は認め難いと思われます。
ところで、不倫(不貞行為)は法律上の離婚事由ですし、慰謝料の発生原因にもなります。しかし、川谷さん夫婦の結婚生活は半年程度に過ぎませんので、裁判の判決で命じられる慰謝料額はせいぜい300万円が限度だと思います。同じ理由で、短い結婚生活中に築かれた夫婦財産に関する「財産分与」も、さほど多額にはならないでしょう。もし、夫婦間に未成年の子どもがあれば養育費の支払義務も浮上しますが、今回はそういった問題もなさそうです。
女性の不倫に厳しい日本の社会
このように考えてくると、男女関係は「50:50」であるべきなのに、本件では妻帯者である男性側が問われる責任の方がむしろ「限定的」であるように感じられます。今回、ベッキーさんは仕事をすべて失うような苦境に陥っているのに、川谷さんは逆に「ゲズ乙女」の新曲の売れ行きが好調になるなど、けっして「両成敗」の状況にはなっていません。これは、日本の社会そのものが一般的に男性の不倫に寛容である反面、女性の不倫には厳しい傾向があるからでしょう。最近、タレントの矢口真里さんが、バラエティー番組で「多くの女性が浮気をしている」旨の発言をしてバッシングを受けていますが、これも女性の不倫に厳しい「土壌」と無関係ではありません。
妻帯者の男性が「家庭に居場所がない」「妻とは不仲」「早く離婚したい」などと口にして、女性の同情を買おうとすることがあります。これは「不倫男性」の「常套手段」であり、しかも結構「初級編」なのです。女性の皆様方、どうかくれぐれもご用心くださいませ。
(藤本 尚道/弁護士)
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