遺産相続争いに備える正しい「遺言」の書き方
JIJICO / 2016年3月17日 15時0分
遺産相続争いに備える正しい「遺言」の書き方
欧米では相続時、遺言を書くのは常識
「え!?遺言書いてなかったの?」
アメリカやヨーロッパで相続の時、遺言がないと遺族はこう言って驚くでしょう。欧米では半数以上の人が遺言書を作成しています。
日本でも最近は遺言書の作成が増えてきましたが、まだ数%。誰もが残された家族に争ってほしくないと思っているのに、残された家族が争わないために具体的な行動される方はごくわずかです。
日本でも変化しつつある相続に対する考え方
しかし、高齢化社会が進む日本において、遺産相続問題は社会問題化しつつあり、テレビでの特集やドラマのテーマに取り上げられたりすることで、意識する人は増えてきています。
平成26年度の公正証書遺言の作成件数はついに10万件を超えました。
最近は「終活」や「エンディングノート」がブームとなり、日本人の「相続」に対する考え方が変わってきたなぁ~と感じています。
10年前は相続の話をすると「俺の死んだ後のことなんか知らん!」と一蹴されることも多かったのですが・・・。
公正証書遺言のほうが遺言としては安全
遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言は自筆で書いた遺言を封筒に入れ、自分で保管する遺言。公正証書遺言は公証人に遺言を作成してもらい公証人役場等で保管する遺言です。
どちらも効力は同じですが、信頼性が担保され、確実に実行されるという安心感が公正証書遺言にはあります。
特に、同居している親族がいる場合や、特定の人に財産を多く残したいという場合には公正証書遺言の方がいいでしょう。
自筆証書遺言だと後で「書かしただろ!」という話になりかねないからです。
公正証書遺言を書くにはそれなりの手間と費用がかかります。
しかし、遺言のおかげで家族が争わずに済むなら万金の価値があるのではないでしょうか。
遺言でもめないための5つのポイント
遺言を残すときに注意する点がいくつかあります。これらを忘れるとやはりトラブルの元になりかねませんから気をつけてください。
①相続税の事も考える
相続税は誰がどのような財産を取得するかで大きく税額が変わってしまいます。
例えば配偶者。配偶者が相続すべき財産は2次相続の事も考えて決めなければなりません。
私は、配偶者が相続すべき財産として「現預金」や「家屋」をおススメしています。
「現預金」はその後の生活費で使いますし、相続対策がしやすい。「家屋」は持っているだけで減価するため自然発生的に節税できるからです。
そのような、将来の相続税の事も考えて遺言を書かないと無駄な税金を払うはめになるかもしれません。
②先に相続人が死亡した場合は?
高齢の方が遺言を書く場合、自分よりも先に相続人が亡くなるというケースも考えられます。そうなるとその部分は無効になってしまいますので、まさかのケースも想定した遺言が必要です。
③財産漏れがないように注意する
「○○銀行△△支店は長男に・・・」とひとつひとつの財産を指定する方がおられますが、個別に書くと自分でも気付かない財産が漏れているもの・・・「現預金の半分は長男に」「上記以外の財産は妻に」などの表現なら財産漏れを防止できます。
④遺留分は大丈夫?
「全ての財産を長男に」という遺言だと、二男や長女が長男を相手に「遺留分の減殺請求」の訴訟を起こす可能性があります。
遺留分とは相続人に最低限認められた権利の事、遺言がむしろ争いの種とならないように配慮しましょう。
⑤付言は最後のメッセージ
「このような遺言にしたのは、長男が最後まで親身になって介護してくれたことを考慮しました」など、何故そのような遺言にしたのか、「今まで本当に有難う、この遺言をもとに皆さんが争わず、幸せに暮らしていってくれることを願っています」など、最後のメッセージを伝えるのが付言です。
遺族が争うのは感情面も大きなきな要因です。付言は必ず書きましょう。
(松岡 敏行/税理士)
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