外国人を「労働力として活用」議論の行方と「移民容認」との関係
JIJICO / 2016年4月22日 15時0分
外国人を「労働力として活用」議論の行方と「移民容認」との関係
政府が外国人材の活用を検討する背景
新聞などの報道によると、深刻な人手不足への対応として、政府や与党で「外国人材の活用」の検討が具体化してきた、とのことです。
少子高齢化が進行することによって、わが国の生産年齢人口の全人口に占める比率は年々低下しており、このままでは、農業、製造業、建設業や子育て・介護の現場などで深刻な人手不足が起こるのではないかと危惧されています。
その解決策として外国人労働者を積極的に受け入れようという議論が高まってきた訳ですが、一方で、外国人に対する労働市場の開放は、高度のスキルを求められない仕事に就いている国民から就労の機会を奪うことや、外国人労働者の安い賃金に引きずられて国民の賃金が引き下げられてしまうのではないかという懸念も拭えません。
外国人労働者をこれまで積極的に受け入れてこなかった日本
そのため、これまでは、出入国管理及び難民認定法において就労のための在留資格には厳格な制限を設け、専門家や経営者などを除いては、IT技術者や調理師などの「専門的・技術的分野」の技術者としての外国人を受け入れることはあっても、それ以外の「単純労働者」などは基本的に受け入れないという方針でした。
しかし、急速な人口減少社会は社会の活力を奪う面もあることから、そのような方針を見直すべきではないかという議論が起きてきているのです。
外国人労働者受け入れのメリットとデメリット
外国人がわが国に多数入ってきて活動するということは、不足している労働力を補てんするだけでなく、消費者としても国内の経済の活力になってくれる可能性があります。
また、外国人に門戸を開放することによって、アジアの優秀な人材が我が国に入ってきてくれることも期待できます。
アメリカが、世界の中で圧倒的な地位を築き上げられたのは、海外から多くの有能な人材を受け入れて、その人たちが社会のあらゆるところで活躍したことも大きな要因です。
私は、わが国も、海外の多様な人材を受け入れることで社会の活力を取り戻すことが期待できるのではないかと考えています。
その一方で、外国人が増えることによる治安の悪化や、日本という国の形が変わってしまうという危惧も少なからずあります。
しかし、変化を恐れていては社会の進化はないと思いますし、進化しなければ周りから取り残されるだけなので、個人的には、変わることを恐れるべきではないと思っています。
外国人労働者受け入れ問題は国家観にかかわる議論である
現在も、外国人技能実習制度があって、技能実習生という建前で実際には労働力不足を補う人材を外国人によって賄っているという現実があります。
しかし、この制度には、建前と実態の齟齬があり、事業者は技能の伝承よりも安い労働力として技能実習生を当てにしているので、技能実習生は労働者としての適切な待遇を受けられず、人権も虐げられているといった問題も実際に起こっています。
そのような観点からも、今回の議論が、現在の外国人技能実習制度のような中途半端な制度ではなく、さらに制度を一歩進め、多くの有為な人材がわが国に活力をもたらすような制度設計をしてもらえるのであれば、その改革は肯定的にとらえるべきではないかと思っています。
上記のアメリカの例ではありませんが、これから確実に訪れる人口減少社会を受け入れて縮小均衡の社会を目指すのか、それとも、外国人を積極的に受け入れて、社会の同質性を捨ててでも活力ある社会の維持を目指すのか。
この問題は、そんな国家観にかかわる議論なのだという視点で注目して見守りたいと思っています。
(舛田 雅彦/弁護士)
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