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現行の政治資金規正法の問題点について

JIJICO / 2016年6月19日 15時0分

現行の政治資金規正法の問題点について

現行の政治資金規正法の問題点について

ザル法と言われ続けている政治資金規正法

 舛添東京都知事の件で話題となっている政治資金規正法は,「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため,政治団体の届出,政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより,政治活動の公明と公正を確保し,もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的」として,昭和23年に制定されました。

 今日まで何度かの改正が重ねられてきましたが,それでもザル法と言われ続けていて,「規制」ではなく「規正」とされていることでも,作った側の政治家があえてザル法にしたのではないか揶揄されるほどですが,今回の舛添東京都知事に関連する部分に絞って,この法律の問題点を解説してみます。

政治資金規正法の問題点について

 この法律の規正のあり方は,①政治資金の収支の公開と②政治資金の授受の規正等の大きく2つに分けられます。
①は,「政治団体に設立の届出等を義務付けるとともに,1年間の政治団体の収入,支出及び資産等を記載した収支報告書の提出を政治団体に義務付け,これを公開することによって政治資金の収支の状況を国民の前に明らかにすること」,②は,「政治活動に関する寄附(政治団体に対してされる寄附又は公職の候補者の政治活動に関してされる寄附をいいます。)等について,対象者による制限や,量的,質的制限などを行うこと」です。

舛添東京都知事が,政治資金を政治活動ではなく私的に使用したのではないかということで問題視されているのは,①の規正の問題ということになります。
しかしながら,①では,政治団体が無届で寄附を受けたり支出をすることを禁じる以外には,収支及び資産等の状況についての報告に関する規正が定められているのみで,「使徒」についての規正は存在せず,罰則も収支報告書の不記載や虚偽記載などを対象とするにとどまっています。
しかも,この収支報告書は,政治団体の代表者が自ら作成せずに,政治団体の会計責任者が作成するということが大半でしょうから,不記載や虚偽記載に対して直ちに刑事責任を問われるのは,そのような会計責任者ということになり,監督責任を怠ったとか,共犯関係にあるといった事情がない限り,代表者たる政治家自身の刑事責任を問うことは困難になっているのです。
まさに,政治家には責任が及ばないようにしてあるのではないかとさえ疑いたくなる法律です。

政治家の倫理観が欠如している限り改善は難しい

舛添東京都知事が「第三者」として依頼した弁護士は,例えば,家族と正月に宿泊していた温泉施設の部屋において,出版社の社長なる人物と重要な会談をしたことで,それが政治活動に該当するから,政治資金の支出として不適切ではあるが違法ではないなどと説明していました。
しかしながら,もともと家族と私的に利用していた宿泊施設で会談を行ったに過ぎないことを考えますと,その政治活動にはほとんど費用が掛からなかったと考えられますし,百歩譲って費用が掛かったものと扱えるとしても,厳密には,宿泊代金のうち家族の飲食代金を除いた金額の中から会談時間に相応する部分に限定して計上するならともかく,宿泊代金の全額を計上したのであれば,政治資金規正法上,支出自体の違法性を問えないとしても,やはり虚偽記載に該当するものとして,違法と考えるべきでしょう。

結局のところ,政治資金の使途そのものをうまく規制する法律を作ることができればよいのですが,これをなかなか作れないのは,まさに政治家側の倫理観に問題があるわけで,そのような政治家が大半を占めているのであれば,そのような規正の実現は覚束ないといえるでしょう。

                 

(田沢 剛/弁護士)

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