改憲が現実味 改憲するということの意味は?
JIJICO / 2016年8月4日 15時0分
改憲が現実味 改憲するということの意味は?
参院選挙の結果 改憲勢力が3分の2の議席を獲得
参院選挙の結果,改憲勢力は,国会発議に必要な3分の2を獲得しました。
改憲が現実味を帯びてきましたが,何が問題になるのでしょうか。
憲法96条は,憲法の改正につき,国会で衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成を経た後(憲法改正の発議),国民投票によって過半数の賛成を必要とすると定めています。
その具体的な手続については,憲法改正国民投票法に定められています(平成22年5月18日施行,一部改正平成26年6月20日)。
憲法改正国民投票とはどのように行われるのか
憲法改正国民投票の主な流れを見ていきましょう。
①国会議員(衆議院は100人以上,参議院は50人以上の賛成が必要。国会法68条の2)により,憲法改正案の原案が提案されます。憲法改正案は,「内容において関連する事項」ごとに区分されることになっています。
②衆参各議院においてそれぞれ憲法審査会で審査された後,本会議に付されます。
③両院それぞれの本会議にて,3分の2以上の賛成で可決した場合,
国会が「憲法改正の発議」を行った,つまり,国民に提案したものとされます。
④国民投票は,③の憲法改正の発議をした日から起算して60日から180日以内に行われます。具体的な期日は,国会で議決されます。
⑤憲法改正案の内容について国民への情報提供として,国民投票広報協議会が設置されます(各議院の議員から10人ずつ選任)。
⑥憲法改正案に対し,賛成又は反対の投票をするよう勧誘する「国民投票運動」については,公務員・教育者に対する運動規制のほか,組織的多数人買収・利益誘導罪(罰則あり)などの規制が設けられています。
⑦国民投票は,憲法改正案ごとに一人一票となります。
⑧賛成投票の数が投票総数(無効票を除く)の2分の1を超えた場合に,憲法改正が国民によって承認されたことになります。最低投票率の規定はありません。
国民投票の問題点とあるべき形とは?
以下に国民投票を実施する段階で発生が予測される問題とあるべき形を紹介しておきます。
・憲法改正案は,「内容において関連する事項」に区分されているとしても,その基準はあいまいで,国民の意思が正確に反映されない虞があるとされています。
各項ごとの個別投票方式を原則とすべきです。
・国民投票運動への規制についても,法律の規定が不明確で,不必要に広範であるなど,自由な表現活動(表現の自由)を萎縮させる効果が危惧されています。
表現の自由が最も尊重されるべき場面であり,削除されるべきです。
・憲法改正の発議後,国民投票日までの期間が,国民が正確な情報を得て,よく考えて投票するには,短すぎるとの批判もあります。
イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票の際も,投票の後になって「こんなはずではなかった」「情報が間違っていた」「再投票して欲しい」という声が聞かれたといわれています。
最短でも1年間に延長すべきです。
・最低投票率の規定がないことも,投票権者のほんの一部の賛成により,憲法改正が行われる事態も招きかねません。
例えば,投票率が40%の場合,投票権者の20%くらいの賛成で憲法改正が行われることになってしまいます。
最低投票率の規定を設けるべきです。
(中村 伸子/弁護士)
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