人はVRを使いこなせるのか? VR元年に見るその歴史と未来
JIJICO / 2016年10月2日 15時0分
人はVRを使いこなせるのか? VR元年に見るその歴史と未来
東京ゲームショウ2016の目玉となったVR
本年9月に幕張メッセで行われた「東京ゲームショウ2016」での一番の話題はなんといってもVR(Virtual Reality;仮想現実)であったと言われています。
10月に日本でもPlay Station 4と接続してVRを体験できる「Play Station VR」が発売されることもあり、非常に注目を集めたようです。これ以外にも今年に入って各社からHMD(Head Mounted Display;頭に直接装着するタイプの高解像度な画面がついたディスプレイユニット)が発売され、それに伴うコンテンツも増えてきたことから、今年2016年はVR元年とも呼ばれるようになってきました。
近年の技術進化により仮想現実の世界が現実のものに
VRとは「コンピューターが作り出した画像を現実のように知覚させる技術」であり、人類の認知を拡張する、という意味で「仮想現実」あるいは「人工現実感」と呼ばれています。
それ自体は以前から聞かれる言葉ですが、近年の技術の進化によって、実写に近い画像がCGで作り出せるようになったり、ポケモンGoに代表されるようなAR(Augmented Reality;拡張現実)によって実在の映像にCGを被せたりすることが可能になってきたので、仮想現実の世界というのはより現実味が増してきたと言えます。
VRは実際に1989年頃から本格的な研究が始まっていましたが、当時の技術ではコンピューターの処理能力もさることながら、画面の解像度も非常に低かったので、画面の中の世界はあくまでもコンピューターグラフィックスでしかなく、現実とはほど遠い世界でした。
しかしながら、近年の技術進化は目覚ましく、そのあたりの問題をほとんど解決してしまいました。
最近のIT技術は精細な映像を作り出すための高い処理能力を当然のように発揮し、4Kや8Kに代表されるような超高画質な映像はあたかもその場所にいるような臨場感を醸し出します。
VRはゲームや映画などの娯楽産業から進化・発展
ところでVRはその研究・進化の過程においては主にゲームや映画などの娯楽産業から広がってきたと言えます。
なぜならば、ゲームや映画はVR要素を取り入れると果てしなく臨場感が広がり、現実味が出て非常に楽しく、充実したものになるからです。
そして、それらは高速かつ精細な制御が必要になってくることから、そこで培ったVR技術が現在では医療や軍事の分野にも応用されるに至ります。
遠隔地から画面を見ながら別の場所にいる患者に対して高度な手術をしたり、地球の裏側から無人飛行機を操縦して敵地を攻撃したりという昔では考えられなかったSFの世界のようなことが現実化しているのです。
VRがもたらすリスクも改善していくことが必要に
このように、様々な分野において今後の発展が期待されるVRですが、あまりにも精細な画像が目の前で目まぐるしく展開されるため、「VR酔い」と言われるような現象が起こったり、目の筋肉や視力が成長段階にある10歳未満の子どもが長時間使用すると斜視になりやすいといったリスクも報告されており、業界では「13歳未満には使用させないことが望ましい」というガイドラインを設けています。
また、ゲームなどでは、そこで繰り広げられる映像があまりにもリアルなため、脳が現実との違いを認識できず、ゲーム内での暴力や殺人などを実社会で起こしてしまうような人が出るかもしれないとも言われています。
その他にも近年の高性能なVRはかなり新しい技術分野であり、人間の心身に対する影響に関しては未知の要素が多いため、今後様々な問題が起きてくるかもしれません。
近年の技術進化はすさまじく、昔夢だったようなことが次々と現実化してきています。
VRに関しても非常に身近なものとなってきましたが、その魅力的な部分や楽しい部分だけをクローズアップして使うのではなく、メリット、デメリット双方をきちんと認識して生活に取り入れていかなければならないと考えます。
(目代 純平/ITコンサルティング、ITコンシェルジュ)
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