犯罪被害者の尊厳を守るために
JIJICO / 2016年10月12日 15時0分
犯罪被害者の尊厳を守るために
犯罪被害者週間のことがあまり報道されないワケ
「犯罪被害者週間」(11月25日~12月1日)をご存知でしょうか。犯罪被害者が直面する状況、犯罪被害者の「名誉」や「日常生活の平穏」を守ることの重要性などを理解するための「週間」ですが、その活動状況などはあまり報道されません。
それもそのはずで、犯罪被害者の人権や尊厳に対する配慮が最も足りないのは、報道を牛耳っている「マスコミ」なのですから。
犯罪被害者は経済的な打撃を受けることも多い
犯罪被害者は、身体的あるいは精神的なダメージを受けるだけでなく、経済的な打撃を被ることもあります。
交通事故のように賠償保険のシステムがありませんので、被害者は犯罪で受けた傷害の医療費や介護費について自己負担を強いられます。
重傷を負って働けなかったり、寝たきりになったりしても生活費の支給があるわけではありません。
運悪く植物状態になった場合、長期入院させてくれる病院を探す家族の苦労には、筆舌に尽くしがたいものがあると聞きます。
マスコミ報道による犯罪被害者の二次被害
犯罪被害者は、ただでさえたいへんな状況に置かれているのに、さらに追い打ちを掛けるように、被害者の「名誉」が傷つけられたり「日常生活の平穏」が害されたりする問題が後を絶ちません。
興味本位の噂や心ない中傷などは、「マスコミ」が煽り立てる場合も少なからずあって、犯罪被害者やその家族がまるで「社会的バッシング」を受けるかのような状況に陥ることも、決して珍しいことではありません。
「マスコミ」の容赦ない取材攻勢は、被害者や家族への思いやり、配慮などとはまったく無縁です。視聴者や読者の興味をそそるコメント・画像・映像こそが「命」であり、取材攻勢の手を緩めることは同業他社に負けることを意味します。
要は、如何に視聴率を稼ぎ、あるいは発行部数を増やすか、というのが「マスコミ」の最大の関心事になっているわけですから、社会の好奇の目に晒される事件については、犯罪被害者のプライバシーの暴露などは当たり前で、興味本位の噂や、偏見に基づく中傷などがどんどんエスカレートする結果を生んでしまうのです。
犯罪被害者は、犯罪によって受ける苦しみに加え、さらにこのような報道による「二次被害」を受ける羽目になります。
「二次」と言いながらこちらの被害の方がむしろダメージが大きい場合もあるでしょう。
「マスコミ」にとって、「報道の自由」と「知る権利」こそが本当の「命」なのですが、それは、国民のために権力者を監視し、ウラに隠された真実を国民に知らしめるために使われるべき「権利」です。
弱い立場に立たされた私人のプライバシーをほじくり出すことが「知る権利」であったり、それを面白おかしく報道することで社会的な好奇心を煽ることが「報道の自由」であったりするはずはないのです。
「マスコミ」は、みずからの立ち位置を常に検証し、「第二の加害者」になることがあってはなりません。
犯罪被害者の尊厳を守ることが社会の責務
そもそも犯罪は、多数の構成員によって成り立つ社会が存在する限り、不可避に発生するものであり、そこでは誰もが犯罪の被害者になる可能性があります。
犯罪の加害者に対する権利保護については憲法上の要請もあってしっかりと法整備されているのに対し、これまで被害者に対する権利保護はなおざりにされてきました。
犯罪が「社会にとって不可避な産物」であることに照らせば、たまたま犯罪に巻き込まれた被害者個人に損害を負担させるのは不公平かつ不公正です。
犯罪被害者の「権利」として、生活保障・医療保護・被害回復支援・精神的フォローなどの制度を創設し、その尊厳を守ることも、また社会の責務だと言うべきでしょう。
(藤本 尚道/弁護士)
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