全国学力テスト実施から今年で10年! 底上げ効果と今後の課題は?
JIJICO / 2016年10月16日 9時0分
全国学力テスト実施から今年で10年! 底上げ効果と今後の課題は?
今年で10年目の全国学力テスト 上位県と下位県の差が縮まる結果に
全国学力テストは小学6年生、中学3年生を対象に、国語と算数・数学を中心に2007年度から実施され、今年で10年目を迎えました。
正答率は福井・石川・富山の北陸3県や秋田県などが高く、2007年度から大きな順位変動はありませんが、正答率の上位県と下位県の差が縮まる傾向が見られました。
これは、全国学力テストの結果を踏まえ、多くの学校が学力の底上げに取り組んできた成果だと言えます。
子どもたちの基礎的な学力は着実に伸びています。
地域ごとの順位に過度にとらわれず、授業や教育内容の改善につなげていくことが重要です。
そもそも全国学力テストの目的は、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図ることです。
全国学力テストは、回を重ねるごとに、点数競争が激化しています。
教育委員会が都道府県別の順位を気にして、試験対策が過熱する傾向も一部で指摘されています。
過去問題や類似問題などを繰り返しやらせる事態が広がっています。
1960年代にも全国学力調査が行われていましたが、学校や地域間の過熱競争を理由に1964年をもって全国調査は中止された経緯があり、点数対策が横行する状況でテストをしても本来の学力状況を調べることにはなりません。
基礎学力と活用力をバランス良く身につけることが大切
また、「知識」に関する基礎的な問題では全体的に高い正答率でしたが、「活用」に関する記述式な問題では正答率が低く、課題が残る結果となりました。
グローバル社会で活躍する人材を育成するには、思考力や表現力を高めることが欠かせません。
活用力は今後ますます必要になってきます。
一方的に教師が教える授業を見直し、アクティブラーニングのような討論や発表を重視する学習方法を取り入れていく必要があります。
しかし、まず身につけなければならいないことは基礎学力(基礎知識)の定着であり、基礎学力なくして活用力は身に付きません。
活用力を育むことにばかり気をとられ、活用力(応用力)を養う授業に力を入れ過ぎ、基礎知識が不足してしまえば、また逆戻りになってしまいます。
活用力を付けるためには学校のテストでも考え方を必要とする問題を多くすることが効果的ではないでしょうか。
全国学力テストは、結果が分かるのは数カ月後であり、各学校や個々人がその結果を参考にしづらいという問題点があります。
学校での通常のテストは、どの子がどこでつまずいているかを教師が把握でき、すぐ次の指導に役立ちます。
1人1人の活用力を定期的に図れることは教師・生徒個人にとっても有益であり、学校でのテストに出ることで、知識だけではなく活用力が必要だと子どもたち自身がその必要性・大切さを感じることもできます。
学校側はテストの結果を見て、子どもたちはどの分野が苦手なのかを分析したり、子どもたちがその分野を克服するための指導方法を考えたりすることが重要です。
これからの時代に求められる学力が身につけられることが重要に
また、学力におけるクラス分けをもっと積極的に取り入れるべきです。
子どもたちの学力にあった内容・ペースで学習できることはとても効率的です。
学力を平均化するのではなく、全体的な底上げとともに、学習意欲の高い子どもたちがさらに発展的な学習ができる環境を整えることも重要です。
学力格差を縮めるために、下位層を伸ばし、上位層をそのままにしておくのではなく、上位層をさらに伸ばすことも同時に行われなければなりません。
全国学力・学習状況調査は学力テストだけではなく、生徒や学校に多くの質問のアンケートも行っています。
結果を丁寧に分析し、指導の改善に役立てるとともに、これからの時代に求められる学力が身につけられるよう、しっかりと活用してもらいたいと思います。
(竹村 洋/家庭教師、学習塾塾長)
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