高齢化社会で増える任意後見契約とは
JIJICO / 2016年10月16日 15時0分
高齢化社会で増える任意後見契約とは
任意後見契約とは?いつから効力が発生するのか?
任意後見契約を結ぶ人が年々増えています。
昨年、任意後見契約の件数は年間1万件を超えました。
本人の自己決定権を尊重した有用な制度である反面、残念ながら悪用するケースも見受けられるようになってきました。
今回は、任意後見契約の概要と任意後見契約をするときの主な注意点を解説します。
任意後見契約とは、本人の判断能力が十分あるうちに、自分が将来認知症などになった場合の財産管理や生活、療養看護の事務を信頼できる人にあらかじめお願いして引き受けてもらい、本人と引き受けてくれた人(受任者)との間で、公正証書によってなされる契約です。
任意後見契約は、本人の判断能力が衰えてきたときに、受任者などが家庭裁判所に受任者を監督する人(任意後見監督人)の選任申立てをして、任意後見監督人が選任された時から効力を生じます。
移行型の任意後見契約
一般的に、任意後見契約は、財産管理委任契約と一緒に結ばれます。
これは移行型の任意後見契約と呼ばれています。
本人の判断能力が十分あって任意後見契約の効力が生じていない段階でも、身体的な衰えで財産管理を本人が行えない場合もあります。
こうした段階では、財産管理委任契約で本人をサポートします。
つまり、身体的な衰えなどの段階は、財産管理委任契約で、その後判断能力の衰えも出てきたら、任意後見契約に移行させて、本人をまんべんなくポートするのです。
移行型にすることにより、財産管理委任契約の段階で本人が受任者を信頼できなくなった場合に、財産管理委任契約を解除し、公証人の認証を受けた書面で任意後見契約も解除するといった対応が可能になります。
なお、本人の判断能力が衰えた後も、受任者が任意後見監督人の選任申立を家庭裁判所にしないで、本人の財産管理を行うことは違法です。
本人の判断能力が衰えているのに監督する者なしに、受任者が財産管理をしていることになるからです。
このような事態を防ぐためには、受任者に任意後見監督人の選任申立をする義務があることをよく理解してもらい、受任者以外の家族や親族その他本人をサポートしてくれる人などにそのこと周知しておくことが重要になります。
本人が受任者をしっかり選び代理権付与の範囲を考える
任意後見契約の効力が発生すれば、受任者は任意後見人となり、本人の代理人として銀行からお金をおろして各種の支払いをしたり、病院の入院契約をしたりします。
それゆえ、受任者には、自分が本当に信頼できる人、なおかつ、財産の管理や契約行為などを適切にしてくれる人をよく選ぶ必要があります。
また、財産管理委任契約と任意後見契約を結んだら、本人の取引のある金融機関やかかりつけの病院などにそれを周知させておくことにより、受任者の事務が円滑になるだけでなく、受任者による不正への監視が働くことが期待できます。
任意後見契約では、将来認知症などを発症したときの本人保護のため、広範な代理権を受任者に与えるのが通例です。
しかし、本来は、本人が受任者に付与する代理権の範囲は、本人と受任者の合意で自由に定められます。
たとえば、不動産の処分は受任者(=任意後見人)の独断で行えず、任意後見監督人の承認を要すると契約に定めることも可能です。
このように、契約内容や代理権の範囲を調整することにより、より本人の希望にそった契約にすることができます。
本人の自己決定権を尊重した制度である任意後見契約
任意後見契約は、将来判断能力が衰えてからも、契約当時に本人が決めた範囲と内容で受任者にサポートを受けながら、自分らしく生きていくようにするための、本人の自己決定権を尊重した制度です。
それを実現するためには、任意後見契約がどういったものなのか、どのような点に注意すべきか、本人が理解しようとする努力も重要です。
(畑中 晃/司法書士)
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