ストレスの慢性化で発症するパニック障害 その症状と治療方法は?
JIJICO / 2016年10月17日 15時0分
ストレスの慢性化で発症するパニック障害 その症状と治療方法は?
芸能人にも多いパニック障害の罹患者
近年、精神疾患に対する世間一般の理解は深まりつつあります、その中で「うつ病」の罹患者が増加していることはご存知の方も多いと思いますが、この「うつ病」と同じく「パニック障害」の罹患者数も増加傾向にあることをご存知でしょうか。
「パニック障害」は古くは「うつ病」や「不安神経症」「全般性不安症害」等の一症状としてこれらに含まれると考えられていましたが、1980年に独立した病気として認定され1992年にはWHO(世界保健機構)において「パニック障害」の病名が登録されました。
日本では、堂本剛さん・安西ひろこさん・円広志さん、といった芸能人が「パニック障害」に苦しんだ経験を伝えられ、そこでこの病名を耳にされた方も多いのではないでしょうか。
パニック障害によっておこる3つの症状
「パニック障害」には主に「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」の3つの症状があり、これらの内1つまたは複数の症状が継続的に繰り返される病気です。
「パニック障害」の発症は、最初に「パニック発作」から始まることが一般的です、「パニック発作」とは、なんの前ぶれもなく「動機」「過呼吸」「息苦しさ」「めまい・震え」「手足のしびれ」「吐き気」等の身体症状が強く起こり、このまま死んでしまうのではないかと感じるほどの強烈な不安感と恐怖感に襲われます。
しかし、救急車を呼んでもらい病院に到着する頃には症状は治まり、その後様々な検査を受けても身体的な異常は無いと診断されます。
「パニック発作」が起こる原因としては諸説ありますが、日々の生活の中でのストレスの慢性化や、その日の体調や、人混みでの圧迫感などの状況が複雑に重なり合って、爆発的に自律神経が乱れることで起こると考えられます。
よく言われることですが、「パニック発作」で死んでしまうことはありえません。
しかし本人にとっては「死ぬのではないか」と感じるほどの苦しさと恐怖なのです。
人間の脳は、強烈な恐怖や不安を体験した時にそれを学習します。
これは理屈の学習ではなく感情の学習です。
この学習自体は人が生活していく中で危機的状況を回避し、危険に備え対処する上で必要なことなのですが、前述したように「パニック発作」には身体的原因がなく、それに対処したり状況を回避したりすることが出来ません。
このことが更なる不安や恐怖を喚起し、「また起こるのではないか」「具合が悪くなって周りに迷惑をかけるのではないか」などの考えが頭から離れなくなってしまう状態であり、これが2つ目の症状である「予期不安」の状態です。
これと同様に、「パニック発作」が起こった場所(状況)と、発作の苦しさ・恐怖感とをセットで学習してしまうことで、本来、場所と発作には何の関連性も無いのにその場所へ行くことに異常な恐怖・不安を感じて行けなくなってしまう状態が3つ目の症状である「広場恐怖」なのです。
ストレスの慢性化で発症するパニック障害 その治療方法は?
パニック障害の治療は症状の出方によって変わってきますが、パニック発作が繰り返される場合は、まずSSRIなどの抗うつ薬や抗不安薬を使って不安や症状を抑え、状態が落ち着いた頃から「認知行動療法」などの心理療法を行い、不合理な学習を合理的な学習へと正していくことが行われます。
「パニック障害」発症の根本的な原因として、ストレスの慢性化は見逃せません。
そしてこのストレスを溜め込んでしまう要因には、職場環境や対人関係などの外的要因と、ストレスを受けやすい性格といった内的要因が重なり合っています。
前述の芸能人の方々は一般的にストレス耐性の強い方が多い様に感じますが、常に他者からの注目を浴び、人気という目に見えない成果を求められ、身分に保証のない環境は強烈な外的ストレス要因となるのではないでしょうか。
現代人はストレス社会と呼ばれるほど複雑で多様化した価値観の中で生きて行かねばなりません。
だからこそ多大なストレス要因の中でストレスの慢性化に気づかずに、「パニック障害」や「うつ病」を発症する人が増えているのでしょう。
仕事や人間関係は人生の大切な一部ではありますが人生のすべてではありません。
必要以上に無理をしたり我慢をしたりしてストレスを溜め込む前に、自身を客観的に見てストレスから身を守ることを考えてみましょう。
(西尾 浩良/心理カウンセラー)
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