資産価値に影響大の「立地適正化計画」 市町村がエリア選別を開始
JIJICO / 2016年11月18日 15時0分
資産価値に影響大の「立地適正化計画」 市町村がエリア選別を開始
住む場所や施設の配置を市町村が誘導する「立地適正化計画」
改正都市再生特別措置法に基づき、全国の自治体がその地域の配置を見直す「立地適正化計画制度」が創設されています。
立地適正化計画は、概ね20年後を想定してどのような街にするかを策定する都市計画マスタープランの一部で、地域の特性に合わせて各市町村が自分たちで作ります。
11月1日時点で国交省が公表したところによると、既に4つの自治体が計画を作成・公表し、25市町が住民説明会や懇談会、パブリックコメントの募集、素案の公表など具体的に対外発信を行っています。
背景には、急激な少子高齢化やそれに伴う自治体の財政難があります。
高齢者にも快適に住みよい街づくりを実現し、また、住生活サービス水準を維持し持続的な成長を可能としなければなりません。
そのために、分散している人や施設を集め、住民と行政、民間事業者が一体となった「コンパクトなまちづくり」を促進し、それら生活利便エリアを「公共交通ネットワーク」で結ぶことで、集約エリアの人口密度を維持しながら効率的な自治運用を行おうとしているのです。
つまり、地域の中を、人が住むエリア、商業施設のエリア、医療施設のエリアなど効果的な配置となるよう誘導し、その拠点間を公共交通機関で結ぶという、都市機能集約計画ともいえます。
これは国交省が打ち出している「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」という構想に沿うものです。
住宅は資産 購入前・建築前には必ず「居住誘導地域」の確認を!
立地適正化計画を策定する各市町村は、ここに人を住まわせたいという「居住誘導地域」や、病院や子育て支援施設、複合的商業施設、交通機関などを誘導する「都市機能誘導区域」などを定めます。
また、この立地適正化計画に従って、(不動産の資産価値に大きな影響を与える)鉄道やバス路線などの延伸や再編も考えられ、公共交通ネットワークの大幅な改革が行われる可能性もあります。
逆にいうと、居住誘導地域に選ばれなかった地域は、新たな住宅を建てることを敬遠されたり、老朽化しているインフラの更新(投資)が抑制されたりするでしょう。つまり、そのエリアは人が集まりにくくなり資産価値が大きく損なわれる恐れがあるのです。
地域の公共サービスを提供する自治体側からすれば、街の機能が集約され、おカネをかけるところとかけないエリアが明確に分かれてくれた方が運用コストを圧縮できます。
裏を返せば、発展させるエリアと同時に、衰退させるエリアを作りたい意図があると考えるのが自然でしょう。
そんな中、自治体が人や施設を集めたくないという想いが透けてみえるエリアに住宅を購入すれば、20年後には買い物にも不便、バス路線もなくなり、学校や病院も遠いといった利便性の悪い周辺環境となるかもしれないのです。
マイホーム購入は資産購入であり、資産価値を強く意識した買い方が重要であることに変わりはありません。
資産価値の高い住宅とは「いつでも貸せて売れる物件」です。
この適正化計画は、将来“負債物件”となるエリアをあらかじめ自治体が計画するものであるともいえます。
市町村が人を集めたくないという地域に指定したエリアは人口流出がかなりのスピードで進む恐れもあります。
立地適正化計画を公表している各市町村の住宅を購入される場合、購入予定の立地がこの計画の中で居住誘導地域に該当しているかどうか必ず確認しましょう。
2016年度に100超の市町村が公開予定。今後も計画の見直しを継続
2016年7月31日時点で、「立地適正化計画の作成について具体的な取組を行っている都市」として合計289団体(市町)が公開されています。
東京都では日野市と福生市のみですが、既に公表した札幌市以外にも、名古屋市、神戸市、岡山市、広島市など規模の大きな政令指定都市も作成に着手しています。
公表時期について、北海道札幌市、岩手県花巻市、大阪府箕面市、熊本市の4都市は計画を作成・公表済み、それ以外の市町村の内、115団体は2016年度内に計画を作成・公表する予定です。
現時点で計画を予定していない市町村も、今後作成する可能性があります。
特に、地方の自治体は財政難に直面しており、地域すべてにおカネをかけサービスを提供する現在の状況ではいつか立ち行かなくなっていきます。
事実、今年3月末時点で具体的な取り組みを行っているのは276団体でしたが、4カ月後の7月末には289団体に増えています。
また、計画は一度作って終わりというものではなく、居住誘導区域含め、見直しがなされていく性質のものです。
人口減少が想定より進んでしまった場合、効率を高めるために居住誘導区域をどんどん縮小していく可能性も否めません。
現時点であまり報道もなされず、実際に計画が公表された自治体でも大きな注目を浴びていない印象を受けます。
しかし、今後長い目でみて住環境に大きなインパクトをもたらすことは間違いない立地適正化計画、今後も引き続き注視していきましょう。
(加藤 豊/不動産コンサルタント)
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