固定資産の評価が迅速化?ついに東京都が新方式を検討
JIJICO / 2016年11月22日 15時0分
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固定資産の評価が迅速化?ついに東京都が新方式を検討
固定資産評価額の計算はとても複雑 大規模ビルの評価には年単位の時間がかかる
2016年4月、東京都主税局が不動産鑑定士や建築、法律などの専門家6人の委員で構成する「固定資産評価に関する検討会(座長:小松幸夫早稲田大学建築学科教授)」を新設、大規模な建物に限って固定資産の評価方法を見直す検討を始めています。
関係者の話によると、当初のスケジュールより若干遅れ来年2月ころには報告書の骨子案が出される見通しです。
現行の固定資産評価法は、「同じ建物を建てたらいくらコストがかかるか」という建築コストを積み上げ、新築時からの経過年数に応じた補正などを行う「再建築価格方式」を採用しています。
評価にあたっては、税務職員が資材の種類や材質、数量、設備の位置などを、見積書や図面、現地調査などで一つ一つ確認します。
それら資材を一点ごとに約500項目の分類に当てはめ、あらかじめ決められた点数(価格)を積み上げていき、再建築コストを算出していく極めて複雑な手順を踏みます。
そのため、大規模ビルの場合には評価額の算定に年単位の時間がかかることも珍しくなく、建物の完成から評価の確定に2年かかる例もあるほどです。
特に容積率や用途の規制緩和、税制優遇などの特区がある東京都では、延べ床面積数十万㎡、地上数十階建という大規模建物の建築が加速しています。近年の超高層ビルは数万点におよぶ建築資材が使われています。
さらに、同じ建物でも店舗や映画館、劇場など用途が分かれる複合施設も増え、資産評価が難しくなっています。
評価に時間も費用も多くを犠牲にしていることに加え、計算ミスも頻発、納税者からの不服申し立てや訴訟も繰り返し起こるなど、複雑さゆえの二次コストも発生しています。
税務職員の業務量が限界に達しつつあり、大規模な建物から固定資産の評価方法を見直そうとしているのです。
固定資産評価は幅広い税に影響を与える 投資促進にも簡素な評価法が期待される
日本の固定資産評価は世界的にみても複雑で、公平性にこだわり過ぎるがゆえに精緻さを求めているきらいがあります。
評価額を計算するのは役所であるため、不動産購入者があらかじめ税務コストを正確に把握できず、投資の妨げになっているとの指摘もあります。
日本では、家屋の固定資産税評価額は、固定資産税のみではなく、都市計画税や不動産取得税、登録免許税、相続税など幅広い税金に影響を与えます。
さらにいえば、不動産総額を土地価格と建物価格に分離する際に、土地と建物の固定資産評価額の割合で按分することも実務の現場では少なくありません。
建物価格によって、消費税や減価償却費も大きく変わるため、固定資産評価額は重要な指標の一つとなっています。
これを簡素で透明な評価方法に切り替えることで、民間の都市開発を後押しする効果も期待できます。
新たな評価法は「取得価額活用法式」?あくまで再建築価格方式をベース
現時点の議論において、検討会は「評価額」=「工事原価」×「調整率」×「時点修正率」としたものに、(再建築価格方式と同じく)経年劣化など減点補正率で調整する方式を、新たな固定資産評価法とする方向で議論がなされています。
つまり、これまでは一つ一つの資材の再建築価格を積み上げて評価額を算出していたものを、民間事業者が見積もった実際の工事原価(資材費や労務費)を基準に、上乗せしている利潤を差し引くための調整率を掛け、物価水準を調整する時点修正率をかけるというものです。
あくまで工事内訳書などから建物の費用を抜き出すという手間はかかります。
しかし、資材や設置数を確認して約500の項目に当てはめていくような手間は省けるため、検討会はこの方式で一定の迅速化が図れるのではないかとみています。
今回は、一部海外で用いられているような売買価格などを基準とする簡便な評価方法までは踏み込んでいません。
それには地方税法そのものに変更を加えるといったよりハイレベルな議論が必要だからです。
それを裏付けるように、第一回の検討会において座長が「再建築費評価法の原則はそのまま残す」という見解を早々に述べ、当初よりあくまでサブ情報として取引価格を利用する方針を示していました。
直ちに大きな影響はないが今後の見直し機運の高まりに期待
今回の検討会は、評価手法の変更を大規模ビルに限定していることに加え、東京都主税局が主幹し「国への情報提供、提言等を目指す」としており、あくまで提案に留まるものです。
検討結果が直ちに全国に展開される性質のものでもありません。
しかし、1963年に制定された評価法を、経済や社会の状況が異なるにもかかわらず50年超にわたり使われてきた固定資産評価方法の見直しを始めたこと自体に意義があるといえるでしょう。
今後長い目でみれば、一般住宅にもより簡素で分かりやすい評価法へ移行する可能性も否めません。
税の公平性はもちろん大切です。
しかし、現在のあまりにも複雑な方法から、時代にあわせてバランスの良い評価法に移行し、それが結果として経済の活性化につながることを期待したいです。
(加藤 豊/不動産コンサルタント)
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