国立大学が長文記述式を必須にするメリットはあるか?
JIJICO / 2016年12月19日 9時0分
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国立大学が長文記述式を必須にするメリットはあるか?
マークシート方式に加えて、記述式も必須になる?
国立大学協会(国大協)は、国立大学の2次試験において、全ての受験生に対して「長文記述式問題」を必須にすることを検討し始め、このニュースに関心を持つ親が増えています。
そこで、なぜ「マークシート方式の問題」だけでは不十分なのか?「長文記述式問題」を必修にする効果はあるのか? といった点について、大学受験英語指導の専門家としての独自の視点から考察してみました。
マークシート方式(空所補充・選択問題)のメリット
高等学校の「英語」という科目について言えば、マークシート方式の穴埋め問題(空所補充・選択問題)が、英語が得意ではないという高校生にとって「受験勉強を始める取っ掛かりになる」というメリット(利点)を持つことは、間違いありません。
たとえば、
問題:I’m looking forward ( ) you.
(a) see (b) to see (c) seeing (d) to seeing
という問題が、その好例です。
この問題を解くことによって、高校生は、(d)の to seeing が正解であることを、知ることになります。
そうして、この問題文のポイントである
look forward to ~ing =「~することを楽しみに待つ」
という英語表現(熟語)を覚えるきっかけを、手にすることになるのです。
選択問題であるという性質から、
look forward の後ろは、to see ではなく、to seeing であるということが、印象付けられて、記憶にどどまりやすくなり、結果として、この熟語が暗記できる可能性が高まるのです。
以上のことが、マークシート方式の空所補充問題がもたらす日常学習におけるメリットです。
仮に、この問題が、マークシート方式ではなく、「記述式の英訳問題」であったとすると、
問題:次の文を英語に直しなさい。
「あなたに会えることを楽しみにしています。」
といった問題形式になり、英語が得意ではない生徒にとっては、全文を英語で書かなければならないために、大きな負担となり、英語の学習が高校初歩レベルの段階で挫折する破目になる可能性が大きくなります。
つまり、最終的な目標が、全文を覚えることであったとしても、学習初心者のレベルでは、「マークシート方式の選択問題として」与えられることによって、挫折率が低くなり、すなわち、学習能率が上がる結果になると言えるのです。
マークシート方式のデメリット
一方で、マークシート方式の選択問題には、デメリット(欠点)もあります。
(1)学習者が、「空所の答えを覚えるだけ」になってしまう可能性がある。
(2)学習者が、「問題の解答を選ぶ訓練をする」ことが勉強であると勘違いしてしまう可能性がある。
この2つの点は、高校生や受験生が最も留意しなければならない点です。
また、マークシート方式のテストには、採点に人手がかからず、平等に行えるという利便性があると言われていますが、
(3)受験者が、山勘(やまかん)で、当てずっぽうで選んだ選択肢が、偶然に正解になることもある・・・と考えると、「実力」を平等に採点できているわけではない
ということになります。
そうして、何よりも、まずい事は、やはり、
(4)学習者が、マークシート方式の問題演習ばかりを繰り返すことによって、問題部分や空所や下線部にしか目が行かなくなり、英文全体をじっくりと読んで思考したり、英文全体の和訳や要約を書いてみたり、英文全体を覚えて書いてみたりする、といった「現実の社会で役立つ学習」に取り組む機会や時間が、非常に少なくなってしまっているケースが多く見られるようになったということでしょう。
以上のことは、「国語」に関しても言えることです。
現実の社会では、穴埋め問題は、役立たない?
現実の社会においては、穴埋め問題で仕事をするわけではありません。
穴埋め問題を仕事としているのは、学校や塾や予備校の先生か、クイズ番組の出題者ぐらいのものでしょう。
どうせするなら、社会に出て役立つ勉強を目指しましょう。
実社会においては、文章全体を、じっくりと読んで思考したり判断したり、要約が書けたり、英語を日本語に直したり、日本語を英語に直したり、自分が覚えた語彙や文を使って、文章を作成したり表現したりする能力が、実際的に、役立つことになります。
「長文記述式」の必修により、思考力や表現力の向上が期待される
今後の大学入試において「長文記述式問題」が必出になれば、高校生および受験生がこの対策に取り組むことによって、実社会でも役立つ「思考力、判断力」や「文章力、表現力」の養成が進むことが、大きく期待されます。
(井川 治久/大学受験英語講師)
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