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再び俎上に乗る『共謀罪』 その内容と問題点は?

JIJICO / 2017年1月27日 13時0分

再び俎上に乗る『共謀罪』 その内容と問題点は?

再び俎上に乗る『共謀罪』 その内容と問題点は?

今国会で「共謀罪」が提出されることに

政府はこの度開催される通常国会で、以前から新設することについて賛否が議論されてきた、「共謀罪」の趣旨を反映した内容の、組織犯罪処罰法改正案を提出するとの報道が、先日なされました。

この、「共謀罪」というのは、もともとは「具体的な犯罪について、2人以上の人が話し合って合意をするだけで処罰ができる犯罪」を指していました。

議論の元になった「共謀罪」は、日本が既に締結している「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(国連越境組織犯罪防止条約、あるいは署名された場所にちなみ「パレルモ条約」)で、「重大な犯罪」について共謀罪を国内で処罰できるように整備するように求めている、ということから、導入が検討されてきました。
日本の現在の法律では、組織的な犯罪集団が関わる重大な犯罪の共謀行為を処罰する規定がないため、内容の実行にあたり必要、という理由で新設の話がされてきたのです。
今回再びこの「共謀罪」に関する法案提出の話が出てきたのは、2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、テロ防止の上で不可欠というのが政府の理由のようです。

「共謀罪」新設に反対する立場の主張

「共謀罪」新設について、かねてより反対する立場の主張は大きくいって以下の3点をあげています。
① 日本の刑法では、法律によって守られるべき利益を侵害する危険性がある行為を処罰するのが原則で、そこまで至らない「未遂」やさらにその前段階である「予備」は例外的にしか処罰されない。
「共謀罪」を新設するとなると、600を超える犯罪で新設され処罰されることになり、刑事法の体系が大きく変わってしまう。
② 「共謀罪」のいう「共謀」は、犯罪を行う合意をしたかどうか、合意の内容が犯罪にあたるか判断しなければならなくなり、捜査機関によって恣意的に検挙される可能性がある、実行的に取り締まるための通信傍受や潜入捜査などが許容される可能性がある。
③  既に重大な法益を侵害する犯罪などで、陰謀罪、共謀罪、予備罪、準備罪があり、判例でも一定の要件を満たす場合に犯罪に共謀した者を処罰することを認めているから、さらに「共謀罪」を設ける必要がないのではないか。

「共謀罪」新設に賛成する立場の主張

これに対して、「共謀罪」新設に賛成する立場の根拠はおおむね以下のように反論しています。
① 「共謀罪」は対象犯罪が死刑・無期又は長期4年以上の懲役又は禁錮にあたる重大な犯罪に限定されていて、しかも厳格な組織犯罪の要件が必要とされている。
「共謀」も特定の犯罪が実行される危険性のある合意が成立した場合に限定されているのであって、一般的な社会生活での行動が処罰対象になるわけではない。
② 「共謀罪」新設にあたり、新たな捜査手法が導入されるわけではない。
捜査はあくまでも現在認められている範囲内で行うことになる。
③ 現行の陰謀罪、共謀罪などだけでは処罰対象となっていないものでも「重大な犯罪」はあり、こういった犯罪についても実際に犯罪が実行される前に、共謀段階で検挙をしたり処罰をする必要がある。

国会での議論に国民も注視していくことが大切

この度提出予定の法案では、報道によると内容が一部変更されているようです。
犯罪で処罰対象になる集団は「組織的犯罪集団」に絞られ、処罰の要件も犯罪の実行について集団で話し合うことのほか、資金の確保のような犯罪の準備行為も加えられるようです。
また、罪名も「共謀」ではなく、「テロ等組織犯罪準備罪」とされているとのことです。
そのため、これまで「共謀罪」として議論されていたことが、処罰対象となる集団についてはやや明確になった印象はあります。
 
ただ、そうはいっても個別のケースでは適用の有無が問題になることがあるでしょうし、なにより処罰対象となる犯罪がかなり多い印象は否めません。
実際にも、「準備」という、未だ具体的な利益を侵害する状態が生じていない段階で、処罰に値するだけの危険な状態といえるのはどんな場合か、どういった証拠に基づく必要があるのか、実際にどうやって検挙するのかなどといった問題もあるでしょう。
今後、国会でどのような議論がされるのか、注視していきたいところです。

(片島 由賀/弁護士)

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