防犯カメラ犯罪摘発の効力再確認を プライバシーの保護に問題はないか?
JIJICO / 2017年3月9日 12時0分
防犯カメラ犯罪摘発の効力再確認を プライバシーの保護に問題はないか?
防犯カメラの役割と有益性
近年、防犯カメラの普及には目覚しいものがあります。
そして、事件の早期解決に多大な力を発揮しています。
真実を在りのまま映像で記録できる防犯カメラシステムは、犯罪自体の記録は基より、犯罪の予兆や抑止にも大いに役立っています。
数十年前、防犯カメラは私たちに存在を気付かせぬよう工夫された姿をしていました。
これは、監視という違和感を取り除く為の工夫です。
しかし、公共施設をはじめ、人々が集う場所には欠かせなくなってきた現代社会では、見られていることを意識させるかの如く設置されるようになりました。
私たちの意識の変化と共に、防犯カメラは姿や役割を変化させています。
カメラの存在を意識させまいとした時代では、犯罪を記録し「動かぬ証拠」とすべく“許さない正義”を貫く心情が垣間見えましたが、現代社会に於いては「犯罪予防」や「見守り」と言った“やさしさを兼ね備えた正義”へ私たちの心情が変化したことを感じさせます。
平成27年度には、国内刑法犯の認知件数が戦後最少を記録し「犯罪を警戒する地域社会の目が密になった結果」と警察庁が発表しました。
犯罪の減少は、私たちの意識の変化を称えた結果です。
また、警察による事件の早期解決が、意識の変化を後押ししていることも忘れてはなりません。
在りのままを記録する不都合?
街の至る所に設置されている防犯カメラですが、私たちの日常を“在りのまま”記録しています。
時には「他人に知られたら恥ずかしい(不都合)」と感じる行動を記録していることもあり、物議を醸すこともあります。
プライバシーの保護です。
防犯カメラとプライバシーの保護が議論される時、防犯カメラの善悪が評価されがちです。
そして、私たち個人のプライバシーと事件の公共性を天秤に掛ける議論に発展する傾向が見られ、防犯の専門家としては違和感を感じざるを得ません。
何故なら、防がねばならない犯罪(主人公)が頓挫されている感が否めないからです。
犯罪とは、人間の「悪意」という「欲」が創り出すものです。
防犯カメラは「在りのまま」を記録しているだけで、その存在に善悪はありません。
記録されたプライバシーは、人の「悪意」に触れない限り侵害されることはないのです。
つまり、防犯カメラとプライバシーの保護を対比せることに違和感を感じます。
人には、多かれ少なかれ、知られたくないプライバシーがあるものです。
それを保護するか侵害するかは、私たち一人一人が決めることです。
もし、防犯カメラが人の「悪意」を助長させるとしても、向き合わなければならない課題は、自分自身の「在り方」なのではないでしょうか。
防犯カメラの未来と期待するもの
防犯カメラの進化は、近年のものではありません。
オートフォーカスやオートズーム、暗視などカメラの進化は勿論、他のシステムとの融合など利用方法のグローバル化が進み、安全と安心へ向けて進化を続けています。
特に「生体認証システム」との融合には、目を見張るものがあります。
顔や歩き方など個人を特定できる情報を予め登録し、カメラが記録した画像と照合できるシステムです。
既にアミューズメント施設などで、会員認証を行っています。
また、犯罪ならば全国指名手配犯を少数の捜査員で見つけ出して検挙することが可能になり、試験運用が始まっています。
このように、一言で防犯カメラと言ってもシステムの利用方法は多岐に渡っています。
数年前、認知症を患い行方不明になっていた家族との再会が報じられていました。
行方不明者の捜索は、情報を集めにくい性質もあり難航する事が多々あります。
現在、警察では指名手配犯を扱うシステムと同等の新システムで情報の共有化に取り組んでおり、身元不明者との照合に役立てています。
しかし、どこかで保護されていれば再会も可能ですが、保護されていなければ、捜索は難航を極めるでしょう。
この様な場合にも、生体認証システムと防犯カメラの融合は、きっと役立つ筈です。
防犯カメラの活用方法は、私たちの不安や不便の解消が発端で見つかります。
防犯カメラは犯罪を摘発する道具である前に、犯罪を諦めさせ、命を繋ぐ道具として、私たちの防犯意識向上と共に進化することを願っています。
(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)
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