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糖尿病だけではない「血糖値スパイク」のリスク その原因と対処法は?

JIJICO / 2017年4月23日 11時0分

糖尿病だけではない「血糖値スパイク」のリスク その原因と対処法は?

糖尿病だけではない「血糖値スパイク」のリスク その原因と対処法は?

「血糖値スパイク」とは?

「血糖値スパイク」という言葉をご存知でしょうか。
昨年末のNHKスペシャルにて、『“血糖値スパイク”が危ない~見えた!糖尿病・心筋梗塞の新対策~』という番組をご覧になった方もいらっしゃると思います。

人が生きていく上で、必要不可欠なエネルギー源である血糖は、空腹時には80~100 mg/dlに、食後でも140 mg/dl以下のとても狭い範囲で安定しています。
「血糖値スパイク」とは食後の血糖値が140 mg/dlを超えて上昇する状態を指します。
成人の20%程度が「血糖値スパイク」の状態となっているとも言われています。
「糖尿病」は、空腹時の血糖が126mg/dl・食後の血糖値が200mg/dlを超える状態ですので、「血糖値スパイク」は「糖尿病」の予備軍であるとも言えます。
「糖尿病」の状態になると、全身の血管を痛めてしまうことで様々な病気にかかりやすくなることは以前の当コラムでもお話させて頂きました。
実は、「血糖値スパイク」の状態でも心筋梗塞や癌、さらには認知症のリスクを高めてしまうことが危惧されています。

「血糖値スパイク」が生じる原因

「血糖値スパイク」が生じる原因は大きく2つに分類されます。
1つ目は、膵臓からインスリンを分泌する能力です。
食事をすると膵臓からインスリンが速やかに出て、食事によって吸収された血糖を体内に取り込み、血糖値を一定に保ちます。
つまり、「インスリン分泌能の低下」があると食後の血糖値が上昇します。

2つ目は、分泌したインスリンの働く能力です。
インスリンが血糖を取り込む能力は、運動不足や肥満になることで低下します。
その結果、食事によりインスリンが出てきても、血糖を体内に取り込めずに血糖値が上昇します。
この状態を「インスリン抵抗性」と言い、食後の血糖値上昇の原因となります。

「血糖値スパイク」を防ぐには

「血糖値スパイク」を防ぐ方法を、これらの原因から考えてみましょう。
「インスリン分泌の低下」は、実は日本人の大きな特徴であると考えられています。
もともと日本人は体質として、欧米人と比較してインスリンを出す力が弱いことがわかっています。
現在の日本人の平均的な生活習慣をしていても、インスリンを出す力が弱い体質の人の血糖値は上昇してしまいます。
インスリンを出す力は体質ですので、変化させることは出来ません。
そこで、インスリンの必要量を減らすことが大切になります。
最近よく耳にする「食べる順番」も、インスリンの必要量を減らす方法の1つです。
食べたものは、胃で消化され腸で吸収されます。
まず野菜を食べておくと野菜に含まれている繊維質などが緩衝材のような働きをし、あとからくる食べ物の吸収をゆっくりしてくれることで、インスリンの必要量を減らしてくれているのです。
「ゆっくり食べる」ことも、同じ理屈で血糖値の上昇を抑えます。

「低炭水化物ダイエット」も、インスリンの必要量を減らします。
炭水化物は、糖質と繊維質とで構成されています。
この糖質こそが、食後の血糖値上昇の黒幕です。
炭水化物を減らすことでインスリンの必要量が減りますので、食後の血糖値の上昇を抑えることが出来ます。
また、「低炭水化物ダイエット」は、体重を減らすことも知られています。
体重増加は、前述した「インスリン抵抗性」の主要な原因ですので、「体重を減らす」ことでインスリンの働きがよくなり食後の高血糖は抑制されます。
ただし、過度な低炭水化物ダイエットはかえって体調を崩す原因にもなりかねません。頑張りすぎには要注意です。

「運動」も「血糖値スパイク」を防ぐためには侮れません。
日本人の3人に2人が運動不足であるとも言われています。
なかなかスポーツをする時間や、ジムに行く時間が確保できないという方も少なくないと思います。
しかし、運動は必ずしも時間が必要なものばかりではありません。
「ニート(NEAT)」と言う言葉をご存じでしょうか。ひと昔前に社会問題になったニートではありません。
Non Exercise Activity Thermogenesisの略語で、日常生活の身体活動 によるエネルギー消費量のことを指します。
買い物・料理・ゴミ捨て・掃除・貧乏ゆすり、さらには座ったり立ったりするときの姿勢の保持まで、あらゆる身体活動を含んでいます。
実はこの「NEAT」によるエネルギー消費量は、多い人では1日2000キロカロリーにも及ぶのではないかとも言われています。
日常生活の中で身体活動を意識するだけでも、運動量は充分に増やせるのです。

「血糖値スパイク」の症例

私共の外来で経験した「血糖値スパイク」の症例をご紹介いたしましょう。
40代のAさんは、食事をしてから数時間後の意識消失を訴えて来院されました。
以前はスポーツをしていましたが、最近は運動不足で体重も増加傾向だったそうです。
食後の血糖を調べてみると、180 mg/dl程度に上昇していました。
まさに、「血糖値スパイク」です。
これが、意識消失の原因でしょうか?
実は、「血糖値スパイク」には、食後高血糖の続きがあります。
インスリンを出す能力がおちて、あるいはインスリンの働く力が弱くなり血糖値は上昇します。
一旦血糖値が上昇してしまうと、膵臓は慌ててたくさんのインスリンを出してしまいます。
その結果、食事から数時間たっても多量のインスリンが血液中に出てしまうことで、一度上がった血糖値が急降下していきます。
まさにジェットコースターです。
このAさんは、「血糖値スパイク」のあとの「低血糖」で意識を失っていたのでした。
その後、Aさんは食生活と運動により、お薬を使うこともなく「血糖値スパイク」を起こさなくなりました。

皆様も「血糖値スパイク」を起こしていませんか?
病院などで、食後の血糖値を測ってみるのも一つの方法です。
ただ、「血糖値スパイク」を起こしている人も起こしていない人も、今回ご紹介したような内容は、すべての人の「元気で長生き」に繋がる取り組みです。
何か1つでも実践してみてはいかがでしょうか。

(松田 友和/医師)

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