家事事件の件数が初めて100万件超え その背景は?
JIJICO / 2017年5月16日 9時0分
家事事件の件数が初めて100万件超え その背景は?
家庭裁判所とは
家庭裁判所は、家族関係などの身分に関する事件や少年保護事件などを扱う裁判所で、全国に50か所(支部のある裁判所もあります)置かれています。
家庭裁判所で受け付ける家事事件は、離婚や遺産分割などの家事調停事件、後見開始や遺産分割などの家事審判事件、離婚や子の認知などについての人事訴訟事件などに、権利関係や手続の性質によって大きく分けられます。
ざっくり言うと、調停は、調停委員を挟んだ話合いで、審判と訴訟は裁判官が問題となった事項について判断する手続です。
家庭裁判所の受理件数は増加傾向に
裁判所の受理件数などの司法統計は、裁判所のホームページで公開されています。
その統計資料を見ると、平成28年(2016年)1月から12月までの家庭裁判所の受理件数102万2859件(速報値)は、平成27年の96万9953件より5万2906件増えています。
平成28年の事件数の大まかな内訳は、家事調停事件が14万0643件(27年14万0830件)、家事審判事件が83万5822件(27年78万4112件)、人事訴訟が1万0003件(27年1万0338件)でした。
この内訳を見ますと、調停事件と人事訴訟は前年と大差ないものの、審判事件が5万件ほど増えています。
その平成28年の審判事件の内訳についてはまだ公表がありませんので、審判事件で実際にどのような事件が増えたのかは分かりません。
審判事件の内訳
そこで、審判事件はどういった事件が多いのかについて、前年・前々年の審判事件(平成27年78万4112件、26年73万0610件)の内訳を見てみます。
審判事件は、当事者が対立した形ではない事件(27年76万4389件、26年71万0569件)と当事者が対立した形の事件(27年1万9723件、26年2万0041件)に分けられます。
当事者が対立した形の事件は、子の監護者の指定や婚姻費用の分担などの事件です。27年と26年で件数に大きな差はないです。
当事者対立でない方の事件は、平成27年は前年より5万3820件増えています。
この事件の中では、相続放棄の申述受理(27年18万9381件、26年18万2089件)、離婚後等の子の氏の変更(27年16万9365件、26年16万5895件)が多いです。
この相続放棄の申述受理は年々増えているようです。
他方、子の氏の変更許可の審判は、平成22年にピークの18万6206件ですから、離婚した夫婦間の子を巡る争いが近年の家事事件を増加させているということではなさそうです。
では、高齢者の増加により成年後見人の関係が増えているのでしょうか。
後見開始・取消の審判は、平成27年2万7708件、26年2万7686件とほぼ変わりはありません。
この審判のピークは、平成18年2万9221件です。この数字からは、成年後見が開始された人が急増したというわけではないでしょう。
しかし、成年後見人等に対する報酬付与(27年10万1088件、26年7万6420件)、成年後見人の監督処分(27年10万9252件、26年9万3658件)、成年後見人等の選任(27年1万9971件、26年1万4932件)などと、成年後見に関係する審判が増えています。
これは、家族ではなく専門職(弁護士等)から成年後見人を選任する事案が増えているから、報酬や監督等についての審判事件が増えているものと推測できます。
平成28年も、成年後見に関係する審判事件の数が増加しているのかもしれません。
家事事件とは誰の身にも降りかかる可能性のある身近な問題
統計として見ると抽象的な話になりますが、成年後見でも離婚でも相続でも、一つ一つの事件はそれぞれに関係する方々の人生や生活にとって重大な問題です。
上記のように少なくない方が家庭裁判所での手続を利用していますので、もし何かの悩みや問題をお持ちならば、そのような方は家裁を利用した解決も考えてみられてはと思います。
裁判所での手続については、自力でするより弁護士に相談・依頼する方が良いでしょう。
(林 朋寛/弁護士)
この記事に関連するニュース
-
DV夫が離婚調停で大暴れ、話し合いが打ち切りに…妻が「訴訟」で勝つためにやるべきこと【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月18日 14時45分
-
夫が不倫を頑なに否定→「離婚調停」が不成立に…あまりにあっけない終わりに拍子抜け【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月11日 14時45分
-
夫より稼いでいる妻が「ワンオペ育児」 を理由に「離婚」を決断も、夫は頑なに拒否…訴訟でも認められないワケ【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月5日 14時45分
-
冗談じゃない…地主一家の相続で起きた家族の分断、全財産を要求する“疫病神”の正体とは
Finasee / 2024年10月29日 17時0分
-
成年後見制度は法定後見だけではないって本当ですか? FPが任意後見制度を解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月27日 9時10分
ランキング
-
1【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
NEWSポストセブン / 2024年11月25日 7時15分
-
2池袋暴走事故の飯塚幸三受刑者(93)が死亡 松永拓也さん「後悔や経験の言葉を託された。死を無駄にしたくない」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月25日 11時38分
-
3バイクパーツに「打倒県警」 SNSで集まり少人数ゲリラ化 暴走から空ぶかし「コール」合戦に 急増する騒音通報に沖縄県警「検挙は難しい」理由は
沖縄タイムス+プラス / 2024年11月25日 8時30分
-
4高市早苗氏はいつ「タカ派政治家」になったのか…「ポスト石破」に一番近い女性政治家の"克服すべき弱点"
プレジデントオンライン / 2024年11月25日 8時15分
-
579歳の男が大家に包丁突きつけ「刺してやる」 ステレオの音が大きいと注意されたことに腹を立て 札幌市
STVニュース北海道 / 2024年11月25日 7時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください