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継続的な対人関係に不可欠な「自他境界」 自分と他者は別のものと理解する

JIJICO / 2017年5月31日 9時0分

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継続的な対人関係に不可欠な「自他境界」 自分と他者は別のものと理解する

人間関係とは

この世に生まれた人はだれでも、生まれたその瞬間から、一人で生きることはできません。望む・望まないに関わらず、常に誰かとの関わりの中で生きています。
「自分は一人で生きていける」と思っている人もいるかもしれませんが、それはある意味幻想です。
動物のように自分で狩りをするわけでもなく、誰かが作った服を着て、誰かが生産した食物を口にしている以上、人間は社会の中で生きています。
人間関係は常に悩みの種であると同時に一方で、人生を豊かにする上では不可欠のものでもあります。

人間関係の悩みとは

アドラーは「悩みとはすべからく対人関係の悩みである」と言っています。
なるほど、社会の中で生きている以上、悩みは自分とそれ以外―家族、友人、同僚、近所の人などのかかわりの中から生み出されます。
つまり、自分ひとりで山の中にいて、他者とのかかわりなく過ごすのであれば、他者と比較したり、他者との軋轢(あつれき)による悩みはないでしょう。

自他境界とは

自他境界とは、「自分と他者は、別のものである」という境目、「壁」のようなものです。
これは物理的なことのみでなく、精神的なことを含みます。
自他境界は、赤ちゃんの生後大体半年以内に、養育者との関係性から生み出されます。
赤ちゃんは母親と一体で、境目がありません。
ふわふわとしていて、自分と周りの人や環境との境目がぼんやりしています。
自分がおぎゃあと泣けば、おっぱいが与えられ、おむつを変えるたりあやされたりする。
あたかも、すべて自分の力のようだと感じ万能感を抱きます。
段々と、実は自分と母親は別のものであると気づき、コミュニケーションも抱っこなどの身体的関わりから言葉によるかかわりになっていきます。
この移行が上手く行かないことが起きています。

自他境界があいまいだと何が起こるか?

自他境界があいまいなことは、特に20-30代の方に多く見受けられます。
「自分と周りの人たちは、別のものであるという境目」が明確に理解できていないことは、様々な不安や葛藤の原因になります。
一つ目は、「他者は自分と違う考え方をするかもしれない」ということが思い浮かばないということです。
「自分が考えていることは絶対正しい」「自分が考えていることは、相手も考えているはずだ」と考えます。
具体的に言うと、自分の片思いに過ぎないのに、「気持ちは相手も同じだ」と思い込んだり、「自分がこんなに困っているんだから、気持ちは相手に伝わるはずだ」と思い込みます。
ですが、実際には相手が解るはずはないので、不要な怒りや不安、葛藤を抱え込んだりするわけです。
「他者には別の考え方があり、他者は自分の思いのままにならない」、ということが理解できないのです。

周りからの影響を受けやすい

もう一つの問題点は、周りからの影響を受けやすいという点です。
自分と他者は別のものだと思えないために、他者、特に周りのことを考えない「侵入的な人」に振り回されてしまいがちです。
相手の要求をうけいれてしまい嫌だと言えない、要求をはねつけることができない。
相手に振り回され、傷つけられ、他者が怖くなってしまうこともあります。

自他境界があいまいであることの最も大きな障害

自他境界があいまいであると、継続的な対人関係が難しくなります。
自分のことをわかってもらえない、相手に振り回される、傷つけられる。
苦しいはずです。
耐え難いはずです。
結果として、自分ひとりのほうがいいという結論に到達し、それまでの友人を一度すべて清算してしまうということも珍しくありません。
その時はすっきりするとは思いますが、この手段は何回も使えるものではありません。
同じことを繰り返せば、自分に対しても評価が低くなりますし、傷つきも抱えてしまいます。

自分も相手も尊重 自分が相手を変えることはできないというスタンスが大切

自他境界を強くするにはどうしたらよいでしょう?
これは、魔法のように一発で、というのは難しく、その壁をイメージとして意識して、自分も相手も尊重していく(OK)、自分が相手を変えることはできない、というスタンスを少しずつ身に着けることが必要です。
「自分はこう思うが相手はどうか?」「相手はこう言っているが、自分はどうか?」「相手の意見が嫌だ、耐えられない。上手く断ろう」ということを考えたり認識し、スキルを磨いていくことが必要でしょう。
ご自身で少しずつ意識していくことも良いでしょうし、カウンセラーなどに相談して、具体的な方法を進めていくのも良いかと思います。
自他境界は、社会で生きていくために必要な土台となるものです。今一度見つめてみてはいかがでしょうか。

(芝崎 美幸/産業カウンセラー)

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