チケット高騰の歯止めとなるか、定価転売サイト開設
JIJICO / 2017年6月13日 13時0分
チケット高騰の歯止めとなるか、定価転売サイト開設
人気チケットがネット上で高額に取引されている現状
人気アーティストのコンサートチケットが入手困難になっています。
もちろん人気が沸騰しているアーティストだからという理由もあるでしょうが、他方で、転売する目的を隠してチケットを買い込み、ネットなどで高額転売する悪質な輩が後を絶たないため、人気チケットが「定価の20倍」で取引されるという異常な事態も起きています。
ネット上での転売は「ダフ屋行為」ではない?
そもそもコンサートチケット等を高額転売することは違法です。
このような行為は「ダフ屋行為」として、従来から各都道府県の迷惑防止条例で取り締まられてきました。
「転売目的でチケット等を購入すること」や「公衆の場でチケット等を他者に転売すること」が「ダフ屋行為」に該当します。
ただ、昨今はネットによる取引が多いので、大量のチケット入手行為であれば迷惑防止条例での処罰が可能ですが、ネットでの転売行為は「公衆の場で」という要件を満たさないため、同条例で処罰することは無理です。
取り締まる方法は無いのか?
そこで、取り締まる側もいろいろと工夫をします。
まず、チケットの転売行為を古物営業法違反に問うことが考えられます。
通常、「古物」とは一度使用された物を指しますが、コンサートチケットのように未使用のもの(新品)でも、使用するために取引されるものは「古物」に該当し、古物営業法の対象となります。
したがって、チケットの高額転売行為を「無許可の古物商営業」としてとらえ、3年以下の懲役または100万円以下の罰金という処罰が可能になるのです。
また、通常、コンサートの主催者は「チケットの転売行為」を禁じています。
主催者は高額転売を意図しているような購入者にはそもそもチケットを販売しません。
ですから、転売目的を隠してチケットを購入する行為は、主催者を欺罔して(ウソをついて)チケットを騙し取ることになり、詐欺罪(10年以下の懲役)に問うことが可能になります。
このような欺罔行為を、インターネットを使って実行した場合は、電子計算機使用詐欺の罪(10年以下の懲役)に問われることになります。
定価転売サイト開設 高額転売を防ぐことができるか?
ところで、このようなチケットの違法取引を無くすため、FMPJ(日本音楽制作者連盟)やACPC(コンサートプロモーターズ協会)等の団体が、定価でチケットを取引できる公式サイト「チケトレ」を開設し、この6月1日から本格的に運用を開始しました。
業界としては初の試みであり、現段階では対象アーティストが限定的で、かつ、発券済みのチケットだけが対象ですが、今後は対象を拡大して利便性を高めることで、この公式サイトの利用を促進させたいとしています。
このような公式サイトが開設されたことで、チケットは入手したもののコンサートに行けなくなってしまったファンが、他のファンにチケットを「定価」で譲ることができるようになり、正常な取引の促進が期待されます。
ただし、これは「心あるファン」同士の関係においてのみ成立することです。
本当のファンであれば、ファン心理につけ込んで「濡れ手に粟」のような金儲けを目論む「転売屋」の手口には、怒りを覚えているはずだからです。
しかし、他方で、高く売れる「プラチナ・チケット」を「定価」で手放すことに「抵抗」を感じる人も少なくないかも知れません。
やはり一番問題なのは、違法なチケット高額転売を事実上容認することで、このような「犯罪行為」を「助長」している「転売サイト」の存在でしょう。
もしも「転売サイト」が規約でチケットの高額転売にストップを掛ければ、このような「犯罪行為」は実行できなくなるからです。
その意味で、これら「転売サイト」の運営者が、古物営業法違反や詐欺などの「共犯」として検挙されることも、決してあり得ないわけではないと私自身は考えています。
今後は、明確にチケットの高額転売を禁止し、これを取り締まるための法規制の整備が進むものと考えられます。
しかし、そのような法整備が進まない限り「転売サイト」でのチケット高額転売は続くのでしょうか。
あるいは、警察がこれら「転売サイト」の運営者の検挙に重い腰を上げる方が先になるのでしょうか。
どうか「転売サイト」の運営者には、一日も早くみずからの「社会的責任」の存在に気づいて欲しいところです。
それこそが、この問題を解決するための「次なるステップ」になるのではないかと思われます。
(藤本 尚道/弁護士)
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