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ペットの死と向き合う

JIJICO / 2017年6月24日 9時0分

ペットの死と向き合う

ペットの死と向き合う

家族同様に過ごしてきたペットの死に直面するとき

「親が亡くなっても泣かなかったのに、ペットの死に向き合うと涙が止まらなかった」といった話をよく飼い主の方から聞きます。
近年、ペットは伴侶動物(コンパニオンアニマル)と呼ばれ、家族の一員として、いやそれ以上に人との心の繋がりが緊密になってきているように感じます。
このような背景の中で、ペットロスという言葉も頻繁に耳にするようになってきました。
今回は、どのようにしてペットの死と向き合い、その悲しさを克服していくことができるかということを一緒に考えていきたいと思います。

ペットの死から受ける悲しみ

ペットとして飼われている動物は、主に犬と猫です。
それぞれの平均寿命は、犬で14.36歳、猫で15.04歳といわれています。(平成28年度 全国犬猫飼育実態調査より)
当たり前のことですが、いつかは別れの時が来るのですが、人と比べとても短い一生です。

その大切なペットの死に直面し、大きなショックを受けることで「ペットロス症候群」に陥ってしまう方が増えてきているといわれています。
大切なペットの死は、老衰や病気でその最期を覚悟し迎える場合、急性的な病気や事故などで突然迎える場合があります。
ペットロスの症状が強く、また長くみられるのは、後者の場合が多いよう思います。
そこには、飼い主のそのペットの死に対する覚悟と、死に至るまでの係わりあった時間が関係しているように思います。

ペットロス症候群

ペットロス症候群とは、ペットを失ったショックや悲しみなどによって様々な症状が生じてしまうことを言います。
具体的には、
• 疲労感がとれない
• 食欲がなくなる
• 何をするにもやる気が起きない
• 何に対しても興味・関心がわかない
• 楽しみや喜びが感じられない
• 後悔や自責感
• 集中できない
などがあげられます。

これらの症状は、大切なペットの死に直面し、そのショックから引き起こされるもので病気ではなく当たり前の反応といわれています。
一方で、ペットロスからの回復過程を踏むことができず、数か月間改善兆候がなくペットロス状態が続き、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった場合、病気として診療内科などで治療の必要があるといわれています。

ペットロスからの回復過程

ペットロスなど、グリーフ(悲嘆)のプロセスは多くの研究者により、それぞれの段階に分けて説明されていますが、ここではグリーフワークに積極的に取り組んでいる平山正実氏の4段階に照らし合わせてペットロスの回復過程を解説していきたいと思います。

(1) ショック(ストレス)
ペットの死に直面し、その死を受け入れることができず、感覚が麻痺し、感情が湧かず、何も考えられず、集中できない状態。日常生活の簡単なこと(食べる・眠るなど)さえもできない状態。
(2) 怒りの段階(防衛的退行)
「どうして早く気が付かなかったのか」「もっと何かしてあげられることがあったのでは」など自分を責め、後悔が怒りとなる段階。理由もなく周囲の人を責める気持ちや、担当獣医師に対する疑念や怒りが見られる。
(3) 抑うつの段階(承認)
絶望感、深い抑うつ、空虚感、無表情
周囲のあらゆるものへの関心を失い、外出せず、引きこもりのような状態。
(4) 立ち直りの段階(適応と変化)
ペットの死を現実と受け入れ認められるようになる段階。
ここでは、「あの子はやっと楽になり、今は天国で走って遊んでいる」など死の現実を認められるようになると同時に、前向きな気持ちが出て、もとの日常生活に戻りつつある状態。

ペットロスから立ち直るために

 ペットロスからなかなか立ち直れない方は、上述の回復過程が途中で止まっていることが多いようです。
次の回復段階に進むには、
① 辛いかと思いますが楽しかった思い出の写真や遺品の整理を行うこと 
②無理に悲しい心にふたをしないこと 
③つらい気持ち、悲しい気持ちを理解してくれる仲間(家族、友人など)に話すこと、などがあげられます。

また、亡くなったペットに笑顔を見せるためにも、新しいペットを家族として迎えることも決して間違ってはいないと思います。
動物を飼うことは、その動物のすべてを受け入れることで、動物は飼い主を100%信頼し、依存します。
そんな動物の眼差し、しぐさ、行動すべてが私たち人間の癒しとなっていきます。
一方、そのような日々の中で、いつしか私たち人間もペットに「心の依存」をするようになります。

それだけ大きな存在となっているペットの死に対し、その悲しみを完全に消し去ることはできませんが、その思い出が私たちにとってかけがいのない宝物であることには間違いありません。
その宝物を早く見つけ大切にしていってほしいと願っています。

(田村 兼人/獣医師)

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