人気お好み焼き屋「受刑者就労支援」への情熱と広がる社会貢献の輪
JIJICO / 2017年7月2日 9時0分
人気お好み焼き屋「受刑者就労支援」への情熱と広がる社会貢献の輪
千房が取組む社会貢献「職親」の輪
紫陽花が彩る季節になりました。
雨が続き、合間を縫うように現れる日差しは、一層強く感じられます。
そんな力強さを感じる社会貢献を続ける企業があります。
大阪は千日前に本社を構える「千房」は、全国に58店舗を展開する「お好み焼き屋さん」です。
同社を率いる中井政嗣社長曰く、創業当時は人手が足りず応募者全員を採用することもあったそうです。
その中には非行者や受刑者もいましたが、後に店長や幹部に成長していったそうです。
そんな功績を知った法務省から協力要請を受け、始まったのが「受刑者就労支援」です。
当初は失敗の連続だったようですが、励ましや応援の言葉を支えに奮起し、同志を集って発足したのが「職親プロジェクト」です。
「職親」とは、単に職場を提供するだけではなく、身元引受人として24時間面倒を見ることです。
2013年2月にスタートしたプロジェクトは、東京・福岡・和歌山・新潟に実施拠点を設け、各地に広まり始めています。
社会復帰と貢献はどちらも「孤独」との戦いが鍵
本格的に始動した「職親プロジェクト」ですが、採用者が総て更生するとは限りません。
裏切り、再犯、夜逃げと離反者が後を絶たないのも現実です。
元受刑者が社会へ復帰することは容易ではありません。
例え職を与えられても、人の視線から逃れることは出来ないのです。
そして、背負った傷に後悔の念など通用しないと、初めて気づくものです。
その辛さや孤独に堪えられず、逃げ出す者、再び罪を犯す者がいて当然です。
「職親」は、そんな孤独を和らげ、更生を手助けする取組みですが、手助けする側も離反者が出るたびに、孤独を感じるものです。
しかし、この両者の孤独を和らげ、支える手段が一つだけあります。
それは「人の輪」です。
「職親プロジェクト」では元受刑者の氏名を公開するという世界初の試みを実践しています。
従来、罪を犯し償った者の個人情報は、保護の観点から伏せることが常識でした。
しかし、氏名を名乗る事で、元受刑者に過去を真摯に受け止めさせ、手助けする者にも真剣に向き合う姿勢を保つ願いが込められています。
そして、真剣に取組む両者を応援できるのが私たちなのです。
中井社長は、経営や人の教育を駅伝に例え「自分がしてもらったことを次にバトンタッチしたいとおもわないか」と言います。
正しく「人の輪」です。
社会環境が支える犯罪予防の仕組み
現在、日本では検挙された犯罪者の3割が再犯者であり、立件された事件の6割が再犯者によるものです。
つまり、再犯を防げば犯罪そのものを減らせるという事です。
更生を誓う者、それを手助けする者の取組みが広がりつつある今、両者を支えるのは私たちが担う社会環境です。
人は環境に左右されやすい生き物であり、環境が人を育てると言っても過言ではありません。
過去、一番を称え、一番になりたいと強く願った時代がありました。
その時代では、あらゆる言葉に「戦争」が付けられ、挙って競争しました。
決して競争は悪ではありません。
しかし、行き過ぎた競争が憎しみを生み、争いに発展しました。
日本には「唯一無二」という言葉があります。
既成の一番を強く願うよりも、無限の唯一を目指し、願う事で無益な争いは減らせるのではないでしょうか?
元受刑者が背負った傷は自身の過ちであり、他人が決して癒せるものではありません。しかし、生きるチャンスを与え、未来を見守る者が名乗りを上げています。
第三者である私たちは、両者を支える応援団でありたいものです。
黙って見守るのも、率先して関わるのも総て応援です。
更生を誓う者、寄り添う者、応援する者。
この三者が一体となれる社会環境こそが、新たな犯罪を予防します。
「罪を憎んで人を憎まず」現代社会に於いて、死語ともとれる凶悪犯罪が増えています。
増えているからこそ、原点に立ち返る必要性を痛感しています。
(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)
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