定年後に気をつけたい老人性うつ病。カギは社会とつながり続けること
JIJICO / 2017年7月7日 12時0分
定年後に気をつけたい老人性うつ病。カギは社会とつながり続けること
老人性うつ病とは?
「老人性うつ病」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
うつ病と聞くと一般的には働き盛りの社会人が、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスなどを溜め込んでしまい発症するといったイメージがありますが、近年の日本では高齢化に伴い「老人性うつ病」に罹患する方が増えており、これは「認知症」に次いで老年期の方が罹患することの多い精神疾患と言われています。
「老人性うつ病」とは、65歳以上(高齢者)が罹るうつ病のことで、その症状としては、不眠・早朝の目覚め・食欲がない・無気力・不安感・記憶力の低下・今まで好きだったことに興味が持てない、などであり、症状を見てみると青年期や壮年期に罹るうつ病と大きく違いはありません。しかしその原因というか、発症の背景には異なるものがあるのです。
一般的なうつ病の場合は、前述したように仕事や生活・人間関係のストレスが背景にあることが多くみられますが、「老人性うつ病」の背景には定年退職によって社会との関りが希薄になる「喪失感」や、長年続けてきた生活パターンや環境が大きく変化することへのストレスがその背景にあると考えられており、また、老化に伴う脳機能の低下も発症要因の一つとされています。
老人性うつ病の特徴
「老人性うつ病」の症状には、「認知症」の症状に似たものがあり、専門医であっても初期の診断が難しいものがあります。
例えば、「老人性うつ病」の方はよく記憶力の低下を訴えられます。今聞いたことが思い出せない・何かを取りに来たのだけれど何が必要だったか思い出せないなど、これは認知症の初期症状として代表的なものです。しかし、「老人性うつ病」の場合は「認知症」と異なり、知能検査などでの記憶の障害は見られません、さらに、「老人性うつ病」の場合は症状の改善と共に記憶力の低下も改善されていきます。
「老人性うつ病」の罹患者が増えている背景には、高齢者の増加に加えて「喪失感」「環境の変化」があると述べましたが、ではこの「老人性うつ病」を予防するためには何が必要なのでしょうか。
老人性うつ病を予防するには
以前の日本では、二世帯・三世帯家族も珍しくはなく、家族を持ち子供を育てるために一生懸命働き、退職してからもその子供が結婚して孫が生まれ育っていく過程を、身近で見守ることが出来ました。仕事がなくなっても、おじいちゃん・おばあちゃんという役割があり、次の世代を見守るという社会的な使命感と喜びを感じながら高齢期を過ごすことが出来たのです。また地域の関りも現在よりは密接で、同世代の茶飲み友達がいたり、そんな人達から新しい趣味に誘われたりと、環境の変化を受け入れやすい時代だったと思います。
しかし現代では核家族化・少子化が進み、前述のような環境は望めなくなっています。また、子供達からは「何か趣味でも始めたら?」と勧められますが、日本人は退職してから新たに遊びを始めることが苦手な方が多い様です。以前からやっていた趣味であれば、退職してからでも、今まで時間が取れなかった分を楽しもうと思えるのでしょうが、人間は年齢を重ねる程、過去の経験からの学習が多くなるので、そこから外れた新しいものを始めることに躊躇してしまうのです。
日々のお仕事は大変でしょうが、出来れば在職中から何か楽しめる趣味を一つ持ち、引退したらこれを思う存分やるんだ!と考えることは、仕事へのモチベーションにもつながるでしょうし、退職後の「喪失感」も和らぐでしょう。
また、地域の関りが希薄になっているとは言え、市町村などが運営する高齢者のコミュニティも探せばあるはずです。
高齢化社会だからこそ高齢期を心も体も健やかに過ごせるように、今から考えてみられてはどうでしょうか。
(西尾 浩良/心理カウンセラー)
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