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劣悪な労働環境のアニメ業界 どのようにすれば改善できるか?

JIJICO / 2017年8月16日 11時50分

劣悪な労働環境のアニメ業界 どのようにすれば改善できるか?

劣悪な労働環境のアニメ業界 どのようにすれば改善できるか?

超劣悪な労働環境のアニメ業界

最近とかく話題になっているアニメ業界のアニメーターたちの超劣悪な労働環境について、そもそも何が問題なのか、労務管理のプロの立場から、採用時における意識のズレという視点で、意見を述べることにいたします。

1. 時給50円でも人が集まる謎

とある会社のアルバイトの求人広告に
勤務時間:1日8時間
勤務内容:室内の軽作業
休日:原則として週休2日(ただし休日出勤あり)
残業:有(1日5時間程度)
時給:50円

このように書いてあれば、きっと誰も応募しないでしょう。そうするとこの会社は労働力不足により、仕事を受注できなくて経営が成り立たず、そのうち倒産します。

ところがアニメ業界は、このような条件でも応募者がいるのです。なぜなら応募者側の動機として、収入を得るための就職、ではなく、修業や趣味、というのが一定数あるからです。

修業 = 勉強目的だから給料をもらうことを考えていない。むしろ授業料ゼロでありがたいくらい。

趣味 = 自分の空いている時間に好きでやるのだから、ここで収入を得ることを求めていない。

そうすると、受け入れる側の会社としては、このような人たちが集まってくる状況を利用すれば、人件費=制作費をかけなくて済み、安価な受注が可能となり、経営が成り立ってしまう、という現実があるのです。

2. そもそも企業として成り立っているのか?

経営という視点からそもそも論として、アニメーターをかかえる職場は、彼らに社員としての給料を払えるだけの「企業・会社」として成り立っているのでしょうか?

ここでもし、クライアントから制作費を安くたたかれているとしたら、しかしながら、制作原価=人件費を賄えない、つまり、原価割れしているような状況下でも新規に受注を続けているのならば、それはもはやビジネスとしての取引ではないと言えます。

もし、このように収支管理ができないレベルの経営者がアニメ作品の制作の現場にいるとしたら、その職場の労働環境を問題にする前に、そのような受注者=経営者は、市場から退場すべきです。

3. 労働条件を明示する意味

これらのことから、業界の外から見たアニメーターの年収だけを切り取って、アニメ業界は超ブラック企業であるとか、業界体質がなっとらんとか、このようなレッテルを貼るのは全くのナンセンスであると言えます。

修業・趣味でやりたい人・・・(A)
職業として就きたい人・・・(B)

まずはここを区別して認識する必要があります。

次に、職業として就きたい(B)のグループの人たちが、給料を払ってくれる職場(C)、ここに社員なりアルバイトなり、それなりの給料をもらえる身分で就職できること。このマッチング体制を作ることが求められているのです。

そして、実は以下の視点が見落とされているのですが、「職業として就きたい人(B)が多いにもかかわらず、給料を払ってくれる職場(C)が少ない」、これは業界が「不況」ということで、さらに、職業として就きたい人(B)が多いにもかかわらず、給料を払ってくれる職場(C)がゼロ、これは業界が「恐慌状態」ということ。

まずはこれらを正しく認識して、職業として就きたい人(B)が不況業界へ「不況と知らずに」就職することのないような体制にしなければいけないのです。

ということは、給料をきちんと払うことができる会社は、積極的に労働条件を情報発信した上での採用活動をすべきであって、それによって、職業として就きたい人(B)が、まちがって修業・趣味でやりたい人(A)の集団に入ることなく、自分のところに集まってくるようにしなければならないのです。

つまるところ、一般企業が採用活動の際に既に行っている、労働条件の明示。これの徹底によって、修業・趣味でやりたい人(A)と職業として就きたい人(B)、それぞれが本人の思惑と異なった職場に入らないようにするための、それぞれの職場からの情報発信が求められるのです。

(山王 裕之/)

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