減らない高齢者を狙う特殊詐欺!被害防止の方法は?
JIJICO / 2017年8月20日 8時30分
減らない高齢者を狙う特殊詐欺!被害防止の方法は?
被害の半数以上を防止、それでも減らない特殊詐欺
暦では立秋を過ぎましたが、蒸し暑い日がまだまだ続きそうです。湿度の高い日本では、体温を下げる工夫が夏を乗り切る必須アイテムになっています。しかし、この夏の対策は「熱中症」だけでは済みそうにありません。
今月3日に警察庁が発表した「特殊詐欺」の被害額は、3年連続で減少しました。しかし、認知件数では未遂を含め37.6%の増加です。この要因には、被害が比較的少額な「架空請求詐欺」の大幅増加が挙げられています。
また、金融機関の職員による「声かけ」が功を奏したことも挙げられ、防止件数が2年連続で実被害件数を上回ったとしています。このように半数以上を防止し、被害額を減らす結果となったのは、広報による周知と周人による注意喚起の賜です。数年前から始まっている金融機関の取組み(声かけ)は、当初「大きなお世話」と取り合って貰えないケースが多かったようです。しかし、被害防止の呼びかけが広まるにつれ「もしかして?」と疑いをもつ人が増えたことも容易に考えられます。他人の声かけに応じ、もう一度考え直す。正にコミュニティーの成果と言えます。
高齢者を狙う特殊詐欺の実態
被害額が減少した「特殊詐欺」ですが、手口別では親族に成りすます「オレオレ詐欺」、有料サイトの利用料を装う「架空請求詐欺」、医療費などの還付を装う「還付金詐欺」が被害の9割以上を占め、搾取方法では「電子マネー」が3.5倍、手渡しが2.5倍と激増しています。
架空請求詐欺と電子マネーによる搾取が激増している背景には、被害側の「面倒くさい」と犯行側の「楽をしたい」という合意にも似た奇妙な様子が覗えます。そして、今回の発表で最も特筆すべき点が、被害者の79.1%が65歳以上の高齢者であったことです。犯行側の「楽をしたい」は、高齢者を狙う点でも如実に表れています。
核家族化が進み、コミュニケーションが不足している高齢者は、家族の「役に立ちたい」という思いが強くなっています。そして、情報に疎くなり騙されやすいことが、犯行側の狙いになっています。
また、手渡しの激増は、ATMでの振り込みを阻止される可能性を意識した犯行側の「面倒くさい」を裏付けるものと考えられ、受取りに来た者による「凶行」を予見させます。今後、最も注意が必要な傾向です。被害を疑ったり、気づいた時には、躊躇なく最寄りの警察署へ通報してください。
特殊詐欺撲滅へのキーワード
高齢者の孤立は、犯罪に関わらず大きな社会問題となっています。核家族化が及ぼす影響は、人の生死を左右すると言っても過言ではないでしょう。今回発表された「特殊詐欺」の被害状況から、危険を回避・乗り切るための最小単位である「家族」が分断され、他人との結びつきで補わなければならない実情が読み取れます。先ずは、家族の在り方をもう一度、客観的に見つめ直す事が重要です。
人の「役に立ちたい」という思いは、体力の低下を感じた時に強まり、歳を重ねる度に深まっていきます。「家族の役に立ちたい」と強く願う、年老いた親を過保護にしていませんか?「労り」と「過保護」は違います。「立っている者は親でも使え」という言葉があります。一見、ズル賢さや甘え、厳しさを感じますが「役に立ちたい」と強く願う親にとっては、喜びさえ感じるものです。
但し、言葉や表情で「感謝」を伝えることを忘れないください。日頃から「役に立っている」実感があり、家族の情報を「共有」していれば、それが「安心」に繋がり、老後の為に蓄えた大切なお金を無条件で差し出すことも減ると考えられます。
また、金融機関で見掛けた高齢者の不審な行動を見逃さないでください。赤の他人に関わることは「トラブル」を予感させますが、発表にもあるように職員のスキルは向上しています。自身で声をかけをする必要はないのです。職員を頼り、託してください。誰にでもできる「防止策」です。このように、自ら率先したコミュニケーションを構築することが「特殊詐欺」撲滅へ繋がり、安心した生活への第一歩となります。
(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)
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