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アルコールと糖尿病

JIJICO / 2017年9月10日 7時30分

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アルコールと糖尿病

「糖尿病になるとアルコールは飲めない」は誤解

「糖尿病になるとアルコールを我慢しなくてはならない」という言葉には、2つの大きな誤解があります。

アルコールは、人類が誕生する遥か前から地球上に存在していた物質です。人類を楽しませ、時には狂わせてきたアルコールとうまく付き合っていくことは、糖尿病の有無とは関係のない全人類のテーマとも言えます。アルコールについて一緒に勉強してみませんか。

アルコールとは?

アルコールは、果実などの糖分とどこにでも存在する酵母菌がある暖かい環境下では自然発生的にできあがります。現代でも、果実を容器にためて発酵させただけのお酒があります。大ヒットした映画「君の名は」でも登場する口噛み酒は、お米を口の中で噛み、唾液の酵素でデンプン(お米)を糖に変えて、吐き出して溜めたものを容器の中で放置することで出来上がるお酒です。

実際に、人類も古代からお酒は様々な地域の文化や風土の中で育まれ、宗教の儀式やお祝い事などで大きな役割を果たしてきました。日本でも、お酒は神と人とを結びつける役割を担う、神聖なものでした。現在でも、お供えや三三九度などに、その風習が残っています。
栄養学的には、アルコールはカロリーの高い栄養素です。糖、蛋白質が1 gで4キロカロリー、脂質は1 gで9 キロカロリーですが、アルコールは、1 gにつき約7キロカロリーとされています。しかし、アルコールは他の栄養素とは大きく異なった性質を持っています。実は、アルコールのカロリーは体内で貯蔵されることなく代謝されてしまうため、「エンプティカロリー(空のカロリー)」とも言われています。

つまり、アルコール自体では太ることはありません。それでは何故、糖尿病だとアルコールを控えた方がよいといわれるのでしょうか。

糖尿病にアルコールがよくないとされるポイント

糖尿病に対してお酒がよくないとされるいくつかのポイントを挙げてみましょう。

1.お酒には糖質が含まれている場合がある

いわゆる蒸留酒(焼酎、ブランデー、ウイスキー)には糖質は含まれていませんが、日本酒、ビール、ワインには糖質が含まれています。

2.食欲が亢進する

文字通りです。ついつい、おつまみに手が伸びてしまいます。

3.インスリンの効果に対する影響

血糖値を制御しているインスリンの分泌や作用に影響があることが示唆されています。

4.低血糖の可能性

人は空腹の時でも、肝臓に貯蔵してある糖分を使うことで、低血糖を回避できるようになっています。しかし、アルコールが肝臓で代謝されるときに、肝臓に蓄えてある糖分を利用できなくなってしまいます。その結果、過度にアルコールを摂取すると低血糖になることがあります。飲み会のあとに無償に食べたくなるラーメンは、これが理由です。

5.他の疾患の原因となる

糖尿病に限らず過度なアルコールは、様々な疾患の原因になることがわかっています。糖尿病に関していうと、過度なアルコールにより、肝臓や膵臓が障害されることで、糖尿病を悪化させたり、新たに発症させることが知られています。

以上のことから、血糖コントロールが安定していない患者さんにはアルコール制限が必要になります。

糖尿病でも、血糖値が安定していればアルコールを禁止する理由はない

一方で「酒は百薬の長」とも言います。実際に、適度な飲酒は糖尿病の発症を抑制することが多くの大規模研究で明らかになっています。

また糖尿病の有無にかかわらず、適度にアルコールに摂取している人は、まったく飲まない人より死亡リスクが減るのではないかとも言われています。勿論、過度なお酒が様々な疾患をもたらし、寿命を縮めてしまうことは言うまでもありません。

ここで、糖尿病に対して、お酒がよくないと言われている理由をもう一度見返してみてください。これらは全て、糖尿病ではない人に対しても当てはまります。

「糖尿病になるとアルコールを我慢しなくてはならない」という言葉の2つの大きな誤解というのは、ひとつは、適量の飲酒を心がけるのは糖尿病の有無に関わらずすべきことであり、もうひとつは、糖尿病であったとしても「血糖値の状態が安定している方」であれば、アルコールを禁止する理由は全くないということです。糖尿病ではない方と同様に捉えていただいて問題ないと思います。

アルコールを我慢することで生じるストレスも健康には良くないことは容易に想像できます。ストレスに任せて、過度なアルコールを摂取すると様々な悪影響でさらなるストレスを招きます。

鶏が先か、卵が先か…。むしろ、楽しくアルコールと付き合うためにも、血糖コントロールをしっかりと行うという考え方の方が健全かもしれません。

(松田 友和/医師)

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