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横行する特殊詐欺 巧妙な手口に騙されないためには

JIJICO / 2017年10月18日 9時0分

横行する特殊詐欺 巧妙な手口に騙されないためには

横行する特殊詐欺 巧妙な手口に騙されないためには

大丈夫!その一言が被害の始まり

先日の帰宅途中、暗闇の中でふと見上げた夜空に大きな月が浮かんでいました。「中秋の名月」とはよく言ったもので、それはとても美しいものでした。若かりしあの頃、月を愛でるなど考えも及びませんでしたが…。

さて、世間では様々な手口の特殊詐欺のニュースが日々飛び交っています。犯罪者は手を変え品を変え、思いもしないアプローチを編み出し金銭をだまし取ろうとしていますが、そうしたニュースを見る時に心のどこかで「私は大丈夫」そう思っていませんか?

皆さんの中に、犯罪被害に遭われた方はどれぐらいいるでしょうか。また、自分の被害を情報として発信する方はどうでしょう。

実は、メディアで取り上げられたり、SNSで話題になっているものは意外と少数派で、被害に遭ってしまった方は多数、自分の被害を口外する方は滅多にいません。つまり、多くの犯罪被害の真相は「闇の中」が定番なのです。すると、誰も知るよしの無い真相は、「こういうことがあったらしい」「原因はこうだったらしい」というように想像で繋ぎ合わせて語られます。そして、いつの間にか単なる想像が真相へ変わり、「詐欺を見極めるにはこういうことに気をつければいいんだ。これだけ情報を知っているのだから、自分は騙されない」という自信へと変化していきます。「根拠のない自信」の誕生です。

しかし実際には、何の変哲もない日常で起こる犯罪は、経験が無ければ想像し難いものです。日常的に目を凝らし、危険の予知に力を注いで過ごしている方は稀です。気づかないことが当然であり、第三者が起こす犯罪を予見することなど不可能と言って良いでしょう。

そして、犯罪被害という「暗いイメージのことを考えたくない」と言うのが本音ではないでしょうか。できれば、他人事で済ませたいと願うのが普通です。これが「対岸の火事」の始まりです。

自分は騙されないという「根拠のない自信」と、自分には関係ないという「対岸の火事」は警戒心を乏しくし、犯罪被害に遭い易くなります。もし「自分は大丈夫」と思ったなら、その時が犯罪被害への第一歩とお考えください。

詐欺とは誰もが信じるフィクション!?

詐欺には物語があり、被害者を演者の一人にしてしまう犯罪でもあります。

平穏な日々を送るあなたに、ある日突然、身内のトラブルや儲け話と言った非日常が訪れます。きっと、驚いたり、慌てたりするでしょう。思考回路は止まり、相手の言葉だけが耳に飛び込んできます。詐欺という物語の始まりです。勿論、あなたは演者の一人、主人公でもあるのです。この物語は全てフィクションです。

注意が必要なのは、突然の出来事に驚いたり慌てたりしないことではありません。自分自身で詐欺に気付くことでもありません。気付かなくても良いのです。大切なのは必ず、「誰かに話すこと」です。相談というより、雑談のひとつで構いません。驚きや思い込みで止まってしまった思考回路を、再び動かしだす事が大切です。話をすることで、解決はしなくても、他人の意見を聞くことができます。

もし、事故やトラブルなどを発端としていて、話すゆとり(時間)が無いほど相手が急ぐなら、こちらも急げば良いことです。本当に事故やトラブルが起こっていたにせよ、詐欺被害に遭っているにせよ、すぐに警察へ通報してください。驚き、慌てたままで良いのです。

「しかし、間違いだったら。大した問題じゃなかったら」と通報をためらってしまうことがあるかもしれません。そんな時は「#9110」をダイヤルしてください。警察が設けた「相談専用窓口」の電話番号です。普段の生活の安全や平穏に関する悩みごと、困りごとを受け付けてくれます。事故か詐欺かで、相談をためらう必要はありません。

詐欺師は、真実(実在する役所、会社、団体、人物など)の中に、必ずウソ(お金を払えばすぐに解決)を隠しています。ウソが1つでもあれば、その物語はフィクションです。しかし、無理やり演者に仕立て上げられたあなたにとっては、犯罪被害というノンフィクションの現実なのです。

繰り返しになりますが、自分自身で詐欺に気づかなくても大丈夫です、先ずは誰かと話しましょう。

真実よりも自分を信じる力「自信」

今年の初頭から、音声ガイダンス(要件に合わせて番号を押す)による新たな詐欺の手口が報告されています。語られた名前は誰もが知る有名企業(真実)で、ガイダンスは、返済が滞っている、利用料金を返還すると言った内容(非日常)です。

思考回路が止まり、先へ進むと担当者を名乗る人物が電話口に登場して、あの手この手で騙そうとします。また、相談や通報の為、電話を切ることなく、「警察へ転送する」(あり得ないウソ)という演出を交えた手の込んだものまであるようです。

自分の身に起きた出来事でなければ、驚いたり、慌てる人はいないでしょう。しかし、いざ自分の身に起きたとしたら、どれくらいの人が冷静でいられるでしょうか。

でも、止まった思考回路は、また動かせば良いのです。誰かと話すことです。そして、自分の経験と照らし合わせてください。

電話の主が有名企業なら、トラブルを電話で知らせ、解決しようとするでしょうか。身に覚えのない契約ならいざ知らず、正式に契約を取り交わした相手なら、こちらの個人情報を持っています。ならば、不確定要素の多い口頭(ましてや電話)ではなく、文書で行う事が常識です。特に、役所など公の機関ならなおさらです。「こんな些細な事をわざわざ手紙で、税金の無駄遣いだ」と感じたことは1度も無いでしょうか。トラブルの解決とは、そういうものです。また、解決に時間を要する事がトラブルの特徴です。トラブルの解決に「今スグ」はあり得ないウソです。

他者のできごとから想像した根拠のない自信ではなく、自分の経験を思い出してください。そして、自分の経験を信じてください。自信とは、自分を信じると書きます。詐欺師が語る真実よりも自分の経験を信じる事が、詐欺被害の予防に欠かせないものです。そして、穏やかな日々だからこそ、話題にしてください。興味を持つことが、被害予防の第一歩です。

(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)

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