セクハラの法的問題と防止対策
JIJICO / 2017年10月25日 7時30分
セクハラの法的問題と防止対策
セクハラの多発と違法性の判断
ハリウッドのプロデューサーが女優にセクハラ行為をしたとの話が有名になりました。セクハラはともすれば人生を狂わす大事に発展しますが、加害行為者、被害者ともに著名人ですと、双方が負う社会的なダメージはより大きくなります。日本においては、「セクハラ」という言葉の定義づけがされ、厚労省の告知が普及したこともあり、セクハラはいけない行為であることは十分に浸透しているかに見えます。しかしながら、セクハラ事件は後を絶たず、近年は、大学や医療のアカデミックな職場などでも多発しているところです。
セクハラは職場におけるいじめ・嫌がらせ行為のうち、相手の意に反する不快な性的言動を指しているものです。たとえば、性的要求を拒否したら雇用契約上の不利益を受けた、性的嫌がらせによって職場環境が悪化したなどが大きな区分けになります。ただし、こうしたセクハラの概念に法的な意味はありませんので、当てはまることで違法となるものでもありません。違法性の有無は、セクハラと言い得る行為があり、その因果関係のもと損害が生じた場合、具体的には健康や良好な職場環境で就労する雇用契約上の権利などを侵害された場合などに、それらの要件に照らして判断されることとなります。
セクハラの問題は多面的、対応によっては労働問題に
セクハラの法的問題は、「被害者から加害行為者に対する違法行為を根拠とする損害賠償請求(違法行為とそれに起因する損害)」、「被害者から企業に対する違法行為を根拠とする損害賠償請求(使用者責任、雇用契約上の義務違反など)」が典型です。しかし、「セクハラの加害行為者が企業から受けた懲戒処分の合理性を争う事件」も多発しています。加えて、「精神疾患が発症した」ケースでは、業務に起因した災害として労災申請の対象にもなってきます。つまり、多面的に法的問題になり得るのがセクシャル・ハラスメントであるとも言えます。
たとえば、セクハラ行為を予見できたのに、十分な予防措置をしなかった場合や、上司のセクハラ行為を職場の問題と捉えず、加害者と被害者の個人間の問題として、セクハラ被害者を退職に追い込んだ場合、また、被害者の申告がありながら(あるいはセクハラがあったことを知りながら)、加害行為者に対する十分な調査をせずに、被害者を加害行為者のそばで継続勤務させた場合などでは、労働問題に発展する可能性があります。
企業ができるセクハラ防止対策
これらセクハラ問題の防止については、まず企業に対し、性的言動の対応により労働者の労働条件が不利益になったり、就業環境が害されたりすることがないように、企業に必要な措置を講じることを義務付けています(均等法11条)。関連して、セクハラの周知・啓発、相談体制の整備、適切な事後対応などが要請されています。
これらの十分な措置をとっていることは、使用者責任や職場環境配慮義務の点でも、考慮されるものとなるため、防止対策の筆頭と言えます。企業対応の特徴として、「調査した結果、事実は確認できなかった」「証拠がないから」との対応も見られますが、被害者の納得性が得られないため、企業の事後対応の不適切さが職場環境の問題となって、セクハラ問題をエスカレートさせることにもなりますので注意が必要です。
労働者にとっては回避が難しいセクハラ問題
一方、労働者の方は、行為を事前に回避することは困難かと思われますが、注意できるとすれば、セクハラは密室的・閉鎖的行為ですので、普段からその点に用心するに越したことはないでしょう。
セクハラの当事者になった場合は、申告し相談対応、続けて、綿密な調査を要求することになります。企業が誠実に対応しない場合でも、要求行為を行った事実を残すことは有効です。
(亀岡 亜己雄/社会保険労務士)
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