おとり物件の見分け方と対応策。不動産業界は「消費者の目」で変わる
JIJICO / 2017年12月25日 7時30分
おとり物件の見分け方と対応策。不動産業界は「消費者の目」で変わる
ネットに掲載されている図面情報だけでは、おとり物件かどうか分かりにくい
契約させるつもりがない「おとり物件」を広告し、お客様を騙して自社に来店させる悪質な営業手法が横行しています。
典型的な手口としては、おとり物件目当てに来店したお客様に対して「その物件は既に申し込みが入ってしまいました」と嘘をつき、他の物件で契約させるものです。
おとり物件の見抜き方には、様々な意見があります。例えば、他の物件より条件が良すぎることや、住所が途中までしか記載されていない、外観写真など物件を特定させる情報がないことなどは一つの目安になります。
ただ、だからといって確実におとり物件と言い切れるものではなく、消費者としては「もしかしたら掘り出し物件?」と確認したくなる気持ちが湧いてくるかもしれません。
さらに、実在する物件情報をそのまま掲載して、価格だけを安く表示させることもよく行われており、おとり物件特有の間取りというものもありません。
もちろん、不動産の相場を調べることで見抜くことはできなくはありません。ただ、同じ立地でも、築年数や広さ、設備など多くの変数があります。また、売主(貸主)が売り急いでいる場合には値段が下がることもあるのです。
つまり、ネットに掲載されている図面情報から確実に見抜くことは難しいのが実情です。
おとり広告は業者の対応で見抜く。「現地集合」を拒否する不動産屋は疑わしい!
おとり物件かどうかは、物件そのものよりも業者の対応で見抜くものといえます。
不動産屋の立場で考えれば、おとり物件を契約させる気はないため、内覧されては困ります。空室の物件を内覧されると契約を断る理由を失いますし、そもそも居住中の物件を広告することもあります。そして、業者の目的は他の物件を紹介することですので、自社へ来店してもらう必要があります。
これを逆手に取った方法として、おとり物件が疑わしい場合には「お店への来店ではなく、物件の現地で集合して内覧したい」と不動産会社に伝えてみましょう。
業者としては、わざわざ来店を待って現地に行かなければならない手間暇が省けるため、本来であれば業務が効率化でき、嬉しい申し出のはずです。
しかし、おとり物件は「内覧不可」かつ「自社来店」が大前提ですので、業者としては頑なに拒みます。「お客様が近隣から不審者扱いされてしまう」「現地で迷われたら困る」など、いろいろと理由をつけてくるでしょう。
現地集合を拒否された場合に「外観だけでも一人で見たいので、住所を教えてほしい」と言っても「お会いしてからでないと住所を教えられない」と拒否反応を示す場合には、おとり物件と考えてほぼ間違いありません。
中には、現地集合を承諾しながら、当日その場で「この物件は先ほど申し込みが入りまして…他の物件をご紹介しますので一緒に店舗へ行きましょう」と決まり文句を言ってくることも考えられます。
その場合には、決して店舗へ行かず、毅然とした態度で断りその場で解散してください。屋外での対面だからこそ、周りの目もあり逃げやすい状況であることも現地集合の強みです。
おとり物件の排除に有効なのは消費者の厳しい目線。閉鎖的な業界が変わる第一歩に
物件を見抜くだけでなく、おとり広告自体を消費者の力で無くす対策はないでしょうか。
いち早くおとり広告の撲滅に取り組んでいるのが、自主規制団体である「首都圏不動産公正取引協議会」(不動産公取協)や、その会員である物件情報サイトの運営会社です。
特に、「at home」「CHINTAI」「マイナビ賃貸」「LIFULL HOME’S」「SUUMO」を運営する各社は、不動産公取協の中に「ポータルサイト広告適正化部会」を発足、悪質業者に対して広告掲載停止処分を含む罰則も規定するなど、おとり広告の排除に注力しています。
さらにその輪は広がり、2017年には上述の5社に加えて、「ヤフー不動産」「いい部屋ネット」「ラビ―ネット」「スマイティ」「健美家」を運営する5社もこの掲載停止措置を行うことを表明しています。厳罰に賛同するサイト運営会社が倍増しているのです。
一方で、業界団体の活動にも限界があり、古くからいたちごっこが続くおとり広告問題を一気に解決する特効薬はないのが実情です。
そこで、「消費者の目」が危険な取引を排除するための大きな助けとなります。
例えば、不動産業界の悪しき営業手法である「囲い込み」の問題も、売主(消費者)が取引状況を確認できる仕組みが導入され、一定の効果をあげています。消費者の目に勝る妙薬はありません。
ぜひ、おとり物件を見つけた場合には、不動産公取協や物件情報サイトに通報・相談ください。これらの団体・企業は、違反物件や悪質業者の情報を共有しており、速やかに物件削除などの対応を行う体制が整えられています。
そして、罰則や悪質業者の排除といった「守りの対策」が実を結び、「物件情報でお客様を騙すことはできない」と悟れば不動産会社各社は「攻めの対策」へ乗り出すでしょう。
つまり、消費者に真に受け入れられる仲介サービスのありかたを見直し、物件情報以外の顧客価値を提供することに繋がることが予想されます。
おとり物件の課題を健全な業界へと変革するチャンスとして生かし、消費者にとって安心安全な不動産取引の環境が実現することを切に期待します。
(加藤 豊/不動産コンサルタント)
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