組織の業務を滞らせる悪質なクレーマー、不当な要求にはどう対応すべきか
JIJICO / 2018年4月21日 7時30分
組織の業務を滞らせる悪質なクレーマー、不当な要求にはどう対応すべきか
長時間の電話や暴言が不当要求行為と認定
先日、旭川市の職員に対して常習的に暴言等を繰り返したり、長時間の電話や庁舎内での電話や暴言などにより職員の業務を滞らせた女性に対し、旭川市が、コンプライアンス条例に基づき不当要求行為を初めて認定したとの報道がありました。
ストレス社会のなかで市民や顧客などのクレーマー問題は年々深刻になっているようにも見えます。こうした不当な要求を繰り返されるなどの被害を受けた場合には、どのように対応すればよいでしょうか。
クレーマーには個人ではなく組織全体で対応する
過去、クレームストーカーについての記事でも書きましたが、今回の事案のような官公庁もそうですが、企業を含めて組織が被害を受けている場合には、まずは組織として、不当な目的を持ったクレーマーに対する一般的な対応方法を知っておくことが大切です。
複数の人間で対応しやりとりの証拠を残すクレーマーに対しては組織の特定の人だけが対応すると「クレーマー対個人」の構図となってしまい、組織対応として良くありません。
こういった際には必ず組織全体で対応するようにしてください。そして、複数の人間で実際に対応にあたるとともに、クレーマーに対して組織全体で対応していることを相手にしっかりメッセージとして伝えること。窓口で対応する場合には、必ず相手の人数よりも多い人数で対応するようにしましょう。
また、不当なクレーム行為であることを明らかにするために、文書や音声、動画などで証拠を残すことが重要です。
具体的には、電話や現場の録音、録画、対応担当者の業務日報などへの詳細な記録化などが有効です。これについても、場合によっては証拠をしっかりと残していることをクレーマー自身に伝えることが有効になります。
安易な約束・即答をしないクレーム対応の原則は様々ありますが、「相手が誰なのか」「要件は何なのか」「理由のない書類は作成・署名・押印しない」「その場で回答しない」「トップが対応しない」といったことを基本方針として対応しましょう。
わずかでもクレーマーに付け入る隙を与えない、ということが大切です。
法律・条令に基づいた対応をとれるように事前の法的整備も効果的今回の旭川市のように対応のための条例を制定し、法的根拠に基づいた対応をとれるような法的整備を行うことも効果的だと思います。
旭川市は2008年4月に「旭川市政における公正な職務の執行の確保等に関する条例」を制定し、これに基づいて不当要求行為と認定し組織として対応しました。これからもこういった対応は増えてくるかもしれません。
参考:旭川市政における公正な職務の執行の確保等に関する条例の概要
犯罪行為あるいは危険を感じた場合は迷わず警察に通報する
クレーマーから明らかに犯罪行為にあたるような行為があった場合には、直ちに警察の介入を受けることが重要です。
具体的には、大声で暴言を吐く、謝罪を求めるなどの行為を続けたり、長時間、窓口等に居座り続け、退去を求めても応じないなどの場合には、威力業務妨害罪や不退去罪が成立する可能性がありますし、対応する人間の身体や財産などに害を加えるような言動があれば脅迫罪、これに金員の要求や不当な強要が加われば、刑法で定められている恐喝罪や強要罪成立の可能性もあるでしょう。
このように、現に危険を感じるような行為を受けた、あるいは受ける恐れのある場合には、被害発生を防止するために迷わず警察に110番通報をしてください。
通報すべきかどうか自分で判断がつきにくい場合でも、警察への相談をためらうことで被害が出るほうが問題ですので、通報をためらう必要はありません。また、顧問弁護士等に対応を依頼するのも1つの方法です。
この場合、弁護士は、組織の代理人となり、今後の一切の窓口は弁護士となることを先方に伝え、違法行為に対しては、警告を行うとともに、それでも状況に変化がない場合には警察への被害相談や刑事告訴を行ったりします。
また、民事事件としても、損害賠償請求や、場合によっては営業妨害行為の差止を求める申立を行うことも考えられます。
相手によっては、弁護士が入っただけで問題が収束する場合もあります。とにかく早め早めの対応が効果的です。そして、こうした弁護士や警察との連携が有効なのは、組織だけでなく個人が被害を受けている場合も全く同じですので、ぜひ参考にして下さい。
(永野 海/弁護士)
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