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マライア・キャリーが双極性障害(躁うつ病)を初告白 どんな症状だったのか

JIJICO / 2018年5月7日 7時30分

マライア・キャリーが双極性障害(躁うつ病)を初告白 どんな症状だったのか

マライア・キャリーが双極性障害(躁うつ病)を初告白 どんな症状だったのか


双極性障害Ⅱ型の症状・特徴

マライア・キャリーさんは2001年に身体的疲労と神経衰弱で緊急入院しました。その時に双極性障害Ⅱ型と診断されたものの、病気を受け入れられず、不眠症と思い込んでいたそうです。

かつて「躁うつ病」と言われた双極性障害Ⅱ型

双極性障害Ⅱ型とは、かつては「躁うつ病」と言われた精神疾患の一つです。感情の障害で、うつ状態を繰り返すうつ病とは異なり、軽い躁状態とうつ状態を繰り返すものです。躁状態とはうつ状態とは逆に、気分爽快感、気力と活動性の増加が見られるもので、うつ状態はよく知られているように抑うつ気分と意欲低下が主たる症状です。

頻度はうつ病の1割程度、原因は不明でうつ病よりも遺伝はしやすい

双極性障害の原因は未だに不明ですが、うつ病より双極性障害の方が遺伝しやすいことが分かっています。頻度ですが、双極性障害はうつ病の10分の1程度で、生涯有病率がうつ病では6%、双極性障害では0.4%という日本での調査があります。

なお、双極性障害はⅠ型とⅡ型に分類され、Ⅰ型における躁状態はその病的な気分の高揚から周囲に過干渉になることがあり、多弁や多動を伴うことから、日常生活に深刻な影響を与えることが多いものです。一方で、躁状態が軽い場合を双極性障害Ⅱ型といい、Ⅱ型の躁状態は本人や周囲からも気づかれにくく、診断も遅れがちになる傾向があります。

キャリーさんの症状と経過についての考察

治療を始めたのは最近になってから

2001年の入院時、キャリーさんは「働きづくめで、眠れない日々が続いていた。」と語っています。キャリーさんは軽い躁状態が見られていた可能性があります。軽い躁状態では、短い睡眠時間でも、いつもより元気に過ごせることがあります。キャリーさんの場合でも、睡眠時間が短い中で、働きづくめに働き続け、ついには入院が必要なほどの心身の疲労、すなわちうつ状態に陥ったのかもしれません。

一般に、双極性障害にあっては、躁状態がしばらく続いた後には、うつ状態に陥ります。その経過から、入院した時にキャリーさんは診断を受けた可能性があるでしょう。しかし、その診断について、キャリーさんは「病気だと信じたくなかった。暴露されるのではないかと、ずっと不安だった」と話しておられ、診断を受けいれられず、最近になって治療を始めたということです。

高い向上心の反面、不安が強まっていたのでは

キャリーさんは何と最近までの17年間近く、未治療のまま病気を隠し続け、症状を耐え通してきたのでした。うつ状態の時における感情について、キャリーさんは語っています。「すごく寂しくて、悲しい気持ちになる。自分のキャリアのためにやるべきことをやれていないという罪悪感すら感じることもあった」と。

キャリーさんほどの歌手として輝かしいキャリアを重ねてきた方にあってさえ、うつ状態にあっては、孤独感が強まり、自己評価が下がり、自分の努力への不全感から罪悪感すら持たれることがあったのです。なお、何かの物事について高い向上心を持ち、並々ならぬ努力を常日頃からしている人は、時に意識されるにせよされないにせよ、その努力の結果についての不安が強まっているものです。特にそのような場合にあって、うつ状態となった時には、その不安が刺激され、不安に圧倒されやすくなるとも言えるでしょう。

家族の理解とカウンセリング・投薬での治療が効果をあげている

「誰かに暴かれるかもしれないという恐れが常にあり、孤独で、心理的負担が余りに重く、これ以上隠し続けるのは無理だった」と話すキャリーさんは現在、精神科のカウンセリングを受け、双極性障害の薬も服用しているそうです。その結果、「今はとてもいい状態」と話しておられます。自分の感情と付き合っていくために、自由に感情を表現できるカウンセリングが役に立っているのでしょう。

また、「薬によって、過度の疲労感や倦怠感を感じることが無くなった」そうです。双極性障害の薬は双極性障害の症状である気分の波を和らげる効果があるのです。なお、キャリーさんは「闘病を相談できる恵まれた環境にある」と話し、今ではご家族の支援も受けられているとのことです。症状が目に見えずらい精神疾患を持つ患者さんは、家族の理解を得て、症状や状態について何でも相談できるようになることで、その心理的負担が大いに和らげられるものです。

精神疾患に対する社会的な理解の広がりに期待

「この障害についても話せる」ようになったというキャリーさんですが、「何かを一人で経験している人への偏見がなくなれば」と話しておられます。この社会において、精神疾患への偏見をなくし、理解を広げていくことが、患者さんが円滑に治療や援助を受けられるためにはとても大切なことなのです。

出典
「標準精神医学」第6版 監修 野村総一郎・樋口輝彦 医学書院

(鹿島 直之/精神科医)

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