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株式会社から合同会社への“移行”、その背景や目的は?

JIJICO / 2018年5月21日 7時30分

株式会社から合同会社への“移行”、その背景や目的は?

株式会社から合同会社への“移行”、その背景や目的は?


去る2018年4月24日に、株式会社DMM.comが株式会社DMM.comラボを吸収合併し、株式会社から合同会社へ組織変更すると発表されました。株式会社同士の合併ですが、合併後は合同会社になるとのことです。こうした流れはまだ珍しいようですが、いったいどういうことなのか。解説を試みます。

法人新規設立は「株式会社」「合同会社」のどちらかしか選べない

12年前の2006年に改正された会社法によって、新規に設立できる会社は「株式会社」と「合同会社」の二種類しか選べなくなりました。「有限会社」は株式会社に組み入れられ、「合名会社」と「合資会社」は合同会社に吸収された形になったのです。

いちばん大きな違いは、株式会社は資本と経営を分離して、出資分の「有限責任」ですが、合同会社は資本と経営が一体のため「無限責任」になってしまった、ということです。

合同会社は設立ハードルが低いが大企業が合同会社になるのは稀

合同会社は株式会社に比べて、会社の設立にかかわる手続きが簡便になり、費用も安価になったため、個人事業からの移行や、小規模零細企業の新規設立が増えているようです。これは、ここ数年著しく低下している“開業率”のリカバリーには寄与していると思われますが、DMMのような大企業のケースはまだ稀です。

株式会社のメリットとデメリット

資本は株主、経営は取締役、と意思決定事項によって株主によるものと取締役によるものに分離しているのが株式会社です。そのため、会社の意思決定では株主の意思に左右される領域が多くなり、昔のような“家族的経営”は非現実的になってしまったのです。

株式会社は、株式を公開したり上場すれば資本を拡大することができますが、リスクとしては、会社の運営に関わる重要事項は株主総会で認められなければならないというジレンマを抱えることになったのです。

そのため、このごろでは、雇用の問題や社員の待遇などが株主総会で認められずに、非正規社員が増えたり、社員の給与が上がらなくなったり、役員報酬が膨大になったり、社内留保も膨大化したり、配当率が上がったりする傾向がたくさん見られるようになっているのです。

合同会社のメリットとデメリット

一方、合同会社は資本と経営が一体であるために、意思決定の手続きがシンプルになっているので、経営サイドと社員の意思が会社の運営にダイレクトに反映される傾向になっています。

合同会社は、株式を発行することはないので、会社の資金調達を無限拡大することはできませんが、その必要のない会社は、株主総会での意思決定に左右されることなく社員の意思で会社の運営が決められるので、かなり自由な意思決定ができるようになっているのです。

経営資金が十分で株主が不要なら合同会社に移行する株式会社は増えていくかも

では、株式会社から合同会社に移行するメリットは何でしょうか。

株主に左右されず迅速な意思決定がしやすくなる

有限責任か無限責任か、という点も大きな問題ではあるのですが、会社の意思決定に関わるメカニズムのほうが重要だと思われます。株式による資金調達の必要がなければ、合同会社にして株主の意見に左右されない会社運営ができる点が、合同会社への移行の最大のメリットでしょう。

安定経営で資金調達の必要がなければ株主を必要としなくなる

株式の公開や上場があれば、株式会社はいつ乗っ取られるかわかりません。公開や上場していなくてもそのリスクは常にあります。事業経営が安定期にあり、資金調達の必要もなければ、会社の意思決定が株主に左右されることのない合同会社に移行することは、充分に考えられることです。

DMMの場合がそうかどうかは不明ですが、合同会社は設立の容易さの面だけでなく、会社の意思決定の自由度のために移行するという流れは、これからも起こるように思われます。

(内藤 明亜/経営危機コンサルタント)

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