社会を変える内部告発、その効果的な方法
JIJICO / 2018年6月2日 7時30分
社会を変える内部告発、その効果的な方法
昨今、様々な分野で内部告発のニュースを耳にします。日本では今一歩内部告発がうまく機能しないことが多く、インターネットを中心に告発する者を叩く風潮すらあります。そこで内部告発をするための効果的な方法を考えてみました。
告発する内容の裏付けを集めるために録音機器を活用
まず、もしもあなたが、実際に内部告発をしたいと考えている場合、まず、自分の告発する内容の裏付けを集めましょう。最近はスマートフォンで録音しやすくなっていますし、メールやラインのやりとりも証拠となります。
録音は相手からの一言だけではなく、会話ややりとりのひとまとまりを単位として保存しておきましょう。相手方から「それはこういう意味だ」と反論される場合に、会話全体が残っていれば再反論がしやすいからです。
また、録音ができなかった場合にも、いつ、どこで、誰からどんなことを言われたのか、なるべく細かく記録をとっておくことにしましょう。相談まであの時のことを忘れないようにと何度も記憶の中で反芻することで、自分自身が傷つくことを抑えられることになります。嫌なことを思い出さなければならないこと自体、とても辛いことです。
内部告発に関する社内規定や窓口を確認
次に、会社や組織に内部告発に関する社内規程があるかどうか、相談窓口がどこにあるかを確認しましょう。内部告発やハラスメント防止に取り組んでいる会社であれば、会社の相談窓口として、内部窓口と会社で設定した第三者の窓口とがあるはずです。
社内事情を知っている人の方が事案を理解しやすく、解決も比較的期待できる場合には内部窓口が向いていることが多いかもしれませんし、社内窓口では社内の人間関係上適切な解決が期待できないような問題の場合には、第三者窓口の方が安心感もあります。
行政やマスコミに直接内部告発することも制限されていない
一方、内部告発をする人の中には行政窓口やマスコミに内部告発するというケースもあります。これらの告発自体が制限されているか、というとそんなことはありません。
内部告発に関し、公益通報者保護法という法律があります。労働者が、不正の目的でなく、この法律に定める通報の対象となる事実を、この法律が定める通報先ごとの保護要件を満たして通報した場合には、会社の解雇が無効となったり、会社での不利益取扱いを禁止してくれたり又は労働者派遣契約の解除の無効という通報者への保護がなされるのがこの法の概略です。
法で定めている通報先には、(1)通報者が労務を提供している先等の他、(2)労務提供先に処分勧告等の権限を有する行政機関および(3)その他の外部があります。この外部にはマスコミも含まれます。
法律上は特に通報先の優先順位は決まっていません。したがって、社内の内部通報窓口を最初から使わずにマスコミに対して通報することもできるわけです。
法律上の保護を意識するなら通報先に注意しかし、法律上の保護、つまり社内での不利益な取扱いをされないように、とか解雇されないようにと意識して通報するなら、保護されるのに必要な条件が通報先によって違うのでその点を注意する必要があります。
社内(社内で設置した弁護士などの外部窓口を含みます。)の場合には、例えば、「○月○日、○さんが私を押さえつけ、無理やり私にキスをした」等、通報対象事実が生じた場合、又は生じようとしていると思う場合であれば保護されます。
一方、行政機関に相談した際に保護を受けられる条件としては、これに加え、そのようなことがあった又はあると思われるに至った相当の理由を説明する必要があります。
さらにマスコミ等の場合には、
1. 内部や監督官庁に通報すれば不利益取扱をされると信じるに足りる相当の理由がある場合 2. 内部に通報すれば証拠等が隠滅されると信じるに足りる相当の理由がある場合 3. 労務提供先から正当な理由なく通報を止められた場合 4. 書面によって内部に通報してから20日を経過しても調査をする旨の通知がないか、正当な理由がないのに調査しない場合 5. 個人の生命身体に危害は発生する急迫した危険がある場合という追加的な条件のいずれかの条件を満たし、その事実を通報することがその事実の発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる場合に保護を受けられるというわけです。これはなかなか厳しいハードルと言えます。
事前に弁護士に相談するのも良い手段なお、公益通報者保護法は一般的な刑事告発や告訴、民事訴訟とは別の解決手段です。また、公益通報者保護法が適用されない場合でも解雇権の濫用であるとして争うこともできる可能性があります。
自分の手元にどんな情報があるか、情報を適切に取り扱ってくれそうなところはどこか一人で考えるのが難しければ、事前に弁護士に相談してみれば、守秘義務もあるので安心です。
(白木 麗弥/弁護士)
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