増加する介護職員へのパワハラ・セクハラ 解決への糸口はあるのか
JIJICO / 2018年7月16日 7時30分
増加する介護職員へのパワハラ・セクハラ 解決への糸口はあるのか
介護施設内での職員「への」パワハラ
介護施設でのパワハラというと、職員から利用者の方に対する事例がしばしばニュースで取り上げられますが、現状としては職員の方がセクハラ・パワハラ被害を受けている場合がかなり多いようです。日本介護クラフトユニオンの調査によると、介護職員の7割が何かしらのパワハラ被害にあった経験があるとのことです。
参考:日本介護クラフトユニオン
(http://www.nccu.gr.jp/topics/detail.php?SELECT_ID=201806250004)
このうち、パワハラ被害の事例としては、大声で怒鳴られたり、契約していないサービスの強要、身体的暴力、精神的な暴言などとなっています。
なぜ利用者が職員にパワハラをするのか?よくあるトラブル3パターン
どういったことで介護トラブルになっているのか?今回はパワハラ被害について取り上げますが、このような介護施設でのパワハラはどうして利用者との間で多く発生しているのでしょうか。介護をめぐるトラブルとしておおまかに以下の3つがあげられると思います。
1. 事故等による利用者の身体に対する被害に関するもの 2. 利用者の財産がなくなったり、壊れたなどの被害に関するもの 3. サービス内容を巡るものです。これらについて、利用者やその家族と、介護施設との間でコミュニケーションがうまくとれず、ちょっとした行き違いが大きな溝になったりして軋轢になり、利用者やその家族のフラストレーションが爆発して、上記のようなパワハラになってしまうケースはよくみられるかと思います。
介護の現場という環境・業務の特殊性もパワハラを生みやすい?
報道でもよく取り上げられていますが、介護の現場は慢性的な人手不足で、職員の多くが普段の業務に手いっぱいでゆとりがないのが現状です。
ですから、職員が利用者に対して十分な対応ができていなかったり、説明が十分でなかったりしてコミュニケーションがうまく取れていないケースもありがちといえます。そうなると利用者や家族から、施設の対応がずさんである、誠意がないととらえられてしまうことになります。
また、介護は医療と異なって、業務の内容が食事、排泄、入浴や睡眠のサポートなどといった、私たちが普段自分で行っている日常生活の支援ですから、一般人からみても専門性や特殊性が理解されにくいという面があります。そのため、利用者やその家族からみて、介護施設の職員が普段行っていることは、「やって当然」という感情が利用者側にもあり、ありがたみを感じてもらいにくいといえます。
さらに預けられている利用者が認知症であったり、他の疾患のために判断能力が低下していたりすることが多く、たまに施設に訪れた親族に対して、施設についての不満を言われるとうのみにしてしまったり、ぱっと見で判断してしまい、施設の対応への誤解が生じることもあります。
施設はどう対応すればいいのか?「傾聴」「説明」「職員間の共有」がポイント
先にも述べましたとおり、施設と利用者やその家族とのトラブルの原因は色々なことから生じています。
ただ、どんな場合でも施設側が一方的に説明なく・あるいは説明が不十分なうちにシャットアウトしてしまうと、状況が分からない利用者や家族は不安・不審に思い、トラブルに発展してしまいます。
介護施設では利用者やその家族からの相談窓口が設置されていると思いますが、まずは利用者や家族の感情を受けとめる、傾聴しながら、その元となっているものをさぐり対処を考えるのが大切です。
特に利用者の家族が遠方にいる場合、まずは電話での対応になると思いますが、できれば直接会って話を聞いた方が、細かいところでの食い違いをさけることができてよいと思います。その場合には、聞き落としなどがないよう、複数で話しを聞くようにするとよいでしょう。場合によっては、第三者を交えての話し合いの機会を設けた方がよいこともあります。
また、対応は一度に限らないことがありますので、どの職員でも対応できるよう、特に重要な情報については職員の間で共有できるように仕組みを作っておくことも必要です。特に最初に対応した職員だけの負担にならないようなフォロー体制も大事でしょう。
パワハラが起きにくい体制・マニュアルづくりが予防になる
いずれにせよ、介護施設としては最初の段階で迅速かつ適切に対応することが必要になりますので、普段からこういったパワハラを含めた事態にならないようどう対処するのが良いのか、体制・マニュアル作りを含め検討するのが重要だと思います。
(片島 由賀/弁護士)
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