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学校内での生徒から教師への暴力には、悪質性や被害を考慮した対応を

JIJICO / 2018年9月10日 7時30分

学校内での生徒から教師への暴力には、悪質性や被害を考慮した対応を

学校内での生徒から教師への暴力には、悪質性や被害を考慮した対応を


生徒から教師に対する暴力への対応に悩む学校

昨今、生徒の教師に対する暴力事案にいかに対応すべきかが議論されています。学校での生徒による暴力事案では、仮に教師に被害が生じても警察に被害を届けず学内で処理されることも多く、被害実態の全容把握が難しいという性質もあります。

法律の適用や警察が介入できない理由はない

当然ですが、学校内での生徒の教師に対する暴力事件が、学校外の事件の場合とは異なった法律で処理されるということはありません。一般の事件と全く同じように、刑法その他の法令によって処理されることになります。そのため、怪我をさせれば傷害罪、殺意を持って教師を殺害すれば殺人罪などが当然に適用されますし、警察が学校内に介入できなくなる法理もありません。

小学校から高校までの事件では少年法の適用や刑事責任能力が問題となる

もちろん小学校から高校までの事件では、多くの場合加害生徒は未成年者であるため少年法の適用を受けます。また、刑法では、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定めていますので、14歳未満の生徒の犯罪行為は刑事責任能力がないとして刑罰を課されることはありません。もっとも、その場合でも家庭裁判所の審判を受け、場合によっては少年院送致を含めた各種保護処分がなされます。これに対して、少年院に送致できる年齢は「概ね12歳以上」とされていますので、少なくとも10歳以下の生徒の暴力事案で少年院に送致されることは通常ありません。

このように、生徒の年齢により、少年法が適用されたり、また刑事責任能力という問題はでてきますが、それとて学校外の事件と同様であり、事件が学校内で起きたことや、事件の当事者が生徒と教師であることなどによって、通常と異なった法律が適用されることはないのです。

「学校の自治」は大学での学問の自由の保障を意図するもの

この点、しばしば、学校の自治とか学校の治外法権といった言葉を聞くことがあります。大学の場合には、憲法23条で保障されている学問の自由の関係で、大学の自治という制度が保障されています。これは、学問の自由を実質的に保障するために、大学の内部のことについては大学の自治に委ね、外部の干渉を防ごうとするものです。

しかし、学校内の暴力事件の捜査の問題と大学の自治の問題とは全く別ですし、ましてや小学校から高校までの学校はそもそも大学の自治と関係がありません。

悪質な暴力や重大な被害が出た場合は迷わず警察に相談すべき

そのため、学校内で生徒が教師に暴力を働いた場合、その暴力の態様が悪質であったり、被害結果が重大な場合には、迷わず警察に被害相談を行うべきですし、学校内の事案だからといって警察への被害届けの提出を躊躇する理由は何もないと考えます。生徒の更生を含めた未成年者として斟酌すべき事情は、既に少年法や刑法における刑事責任年齢の定めにより予め考慮されています。

「生徒の現行犯逮捕」はその必要性の点で疑問

ただし、以前福岡県内の中学校であったような、生徒から受けた暴力に対して教師が生徒をその場で現行犯逮捕するというのは、特殊な事案を除き、考慮が必要です。確かに、捜査機関だけでなく、一般人も現行犯逮捕が可能ですが(刑事訴訟法213条)、現行犯逮捕には、逮捕の必要性が求められます。学校内での生徒の教師に対する暴力事案では、被害者も加害者も明らかですし、生徒が事件後に逃亡することも容易ではないため、現行犯逮捕の必要性に欠ける場合が多いと考えられるからです。

学校としては、暴力行為の悪質性や被害の重大さを考慮し、事件後速やかに警察に相談をし、毅然と対応することが重要だと思います。

(永野 海/弁護士)

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