繰り返されるバイトテロ。なぜ過去の教訓は生かされないのか。
JIJICO / 2019年3月4日 11時0分
繰り返されるバイトテロ。なぜ過去の教訓は生かされないのか。
動画でテロップも入ることから行動もエスカレート?
最近、またもや「バイトテロ」と言われるような、SNSに不適切な投稿をしたことによる炎上事例が相次いでいます。
具体的には、飲食店やコンビニのアルバイト従業員が商品や食材を使って不衛生なことをしたり、勤務中にふざけて大騒ぎしたりした動画をTwitterやInstagramなどのSNSに載せたことにより、炎上を引き起こす、といったものです。
このような炎上事件は、今から約6年前の2013年に非常に多く起こって社会現象となりました。コンビニのアイスクリームケースの中に入り込んで撮った写真がSNS上で拡散され、炎上した事例を覚えている人も多いのではないでしょうか。
6年前の投稿は基本的に写真のみでした。しかし、最近ではSNS上に動画を載せることができるようになっており、今回の投稿もほとんどが短い「動画」によるものでした。さらに、そのような動画にスマホで簡単にテロップも入れられるようになっているので、それが余計に行為をあおることがあります。
また、Instagramの「ストーリー」など、投稿後24時間で自動的に消去される動画機能があり、つぶやき代わりに動画を上げるというようなこともできるようになりました。そのため、「拡散もされないだろう」「すぐ消えるから問題ないだろう」と思い込んで、問題のある動画を投稿するケースが増えているようです。
ネット上には炎上しそうな投稿を探し拡散する人も
現在話題になっている炎上事例をよく調べてみると、半年~数年前に撮影、投稿されたものが今になって蒸し返されて再投稿、拡散されているものも多くあります。
テレビでも、連日ニュース番組や情報番組などで取り上げています。マスコミもこの手のスクープは話題性があり視聴率が取れるので、繰り返し放送する傾向があります。毎日のように長い時間放送されるので、嫌でもいろいろな人の目に留まり、それが炎上に油を注いでいる部分も大いにあります。
ネット上には、炎上しそうな動画や画像を常に探している人もいて、そのような人が炎上記事を見つけると「拡散希望」などと記載してさまざまなサイトに転載し、騒ぎをさらに大きくしていきます。このような「火に油を注ぎ、炎上が広がっていくということ自体を楽しんでいる」といった人がたくさんいるのです。
SNSへの投稿は自己承認欲求の表れ?
では、度重なる炎上事件はなぜ起こるのでしょうか。その根本的な原因は2013年の事件から基本的には変わっていません。ちょっとおかしなことでも「自分はこんなこともできるんだぜ!」というアピールを友人に対してしたい、という自己承認欲求の表れだと言われています。
これらの投稿は、本人たちは友人の間でしか見られていないと思い込んでいますが、SNSは誰かが別の場所にその投稿を転載した瞬間に、友人だけの輪を外れてしまいます。もしかしたら、友人の一人がおもしろがって別のところに転載することもあるかもしれません。そうなると拡散に拡散が広がり、手がつけられない状況になります。
一度SNS上で炎上が起こると、アルバイト本人が職場を解雇されるだけでは済まされない事態となります。今回も一部の学生は「解雇されても別の仕事がある。クビ覚悟」という感覚だったようですが、そんなに甘い話ではありません。おおよその場合、該当する店名や動画に載せられた顔写真などから本人の氏名や学校名、自宅の住所やその他個人情報が瞬く間に暴かれ、炎上画像や動画とともにネット上にばらまかれることになります。
そして、それらの情報が一度ネット上に拡散したら最後、完全に消し去る方法は存在しないと言えます。半永久的にネット上にさらされ、本人の名前とは全く異なるキーワード(例:「炎上させた店名+炎上」など)ですぐに上位に出てくるようになるのです。
最近では企業内におけるコンプライアンス遵守が極めて重要となってきて、特に正社員の採用については、内定を出す前にほとんどの企業が対象者の名前でネット検索してみるという調査結果もあります。その結果、もし過去の炎上動画が見つかったりしたら、その人は採用されるでしょうか。おそらくは難しいと思います。
アルバイトの悪ふざけが企業に大きなダメージを与える
たった1本の不適切動画がたくさんの人の目に触れた結果、それだけでその企業の株価が大幅に下がったり、客足が遠のいて売上に影響したりすることは多くあります。今回アルバイト従業員が不適切動画を投稿して炎上した「くら寿司」では、本人に民事・刑事両方の法的措置を取ることにしたとの報道がありました。
昔から悪ふざけは確かにありました。しかし、最近はSNSに投稿することにより、思いもよらぬ速さで国内はおろか世界中に拡散します。今回炎上を引き起こしたような人たちは、6年前はまだ中学生ぐらいで、当時大きな問題になったということなど知るよしもないのでしょう。
インターネットは、買い物のみならず、世界中の人とリアルタイムにコミュニケーションができる便利なツールですが、ネットの拡散力や特性をきちんと理解し、不適切な画像や動画をむやみにネットに上げないようにするしか、このような事件の対応策はありません。
そして、従業員を抱える企業側もこれらの行為によって炎上が発生した結果、会社や本人にどのような仕打ちが待っているのかまで含めて、定期的に社員教育をしていく必要があります。
炎上を発生させた多くの学生たちが、後から自分たちのしたことの重大さに気づき、うなだれているというような報道があります。遊びでやったことの結果が、アルバイト先の会社や自分の未来を巻き込むほどの大きな問題になることが分かっていれば、こんなバカげた行為はしないのではないでしょうか。
(目代 純平/ITコンサルティング、ITコンシェルジュ)
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