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高齢者の車の運転事故と免許返納を家族全員で考える

JIJICO / 2019年4月29日 7時30分

高齢者の車の運転事故と免許返納を家族全員で考える

高齢者の車の運転事故と免許返納を家族全員で考える

高齢者が運転を続ける背景

この数年、高齢者が運転する車によって引き起こされる事故が後を絶ちません。最近も母親と子供が犠牲になる痛ましい事故があったばかりです。高齢者にとって他人ごとではない、このような事故が多発しているにも関わらず、運転を続ける高齢者が減らないのはどうしてなのでしょうか?

私は介護施設のコンサルティングと介護アドバイスを行う会社の代表をしており、多くの高齢者やそのご家族の方と直接お話を聞く機会があります。高齢(後期高齢75歳以上)になっても車の運転を続ける方はいらっしゃるのですが、ご本人はあまり「危ない」と思うことは少なく、自由に行きたい場所にいき「自分のことは自分で出来ている」というプライドを持って生活されている方が多いと感じます。

また、生活環境によっては交通手段がなく必要不可欠と考えられている方も多いのが現状です。
運転される多くの方は、自分はまだまだ大丈夫!!という自信を持って運転されていますが、そこにはその方のプライドが見え隠れしているように感じます。

高齢者の交通死亡事故発生は高齢になるほど増加傾向に

データを基に、高齢者による交通事故が他の年齢と比べてどれだけ多いか調べてみます。警察庁交通局発表の平成29年の高齢者の交通死亡事故は次の通りです。

■免許人口当たりの死亡事故件数

年齢層別の免許人口10万人当たり死亡事故件数(原付以上)
60歳~64歳 3.6
65歳~69歳 3.4
70歳~74歳 4.1
75歳~79歳  5.7        
80歳~84歳  9.2           
85歳以上   14.6

75歳以上の高齢運転者は、75歳未満の運転者と比較して死亡事故が多く発生していることがわかります。高齢者の中でも死亡事故の発生は、高齢になればなるほど増加する傾向にあります。なお参考までに、年齢別で高齢者ではありませんが、16歳~19歳も多く11.4件となっています。

免許の返納を家族全員で考える

高齢の親で車の運転をされているご家族の方は、日々心配をされています。しかし、一概に「もう歳で車もぶつけることもあるし、危ないから免許を返納したら」という家族の声はなかなか届かず、お悩みになっておられるご家庭も多いです。特に男性は運転キャリアも長いこともあり、簡単には受け入れてもらえないケースがあります。

そこで私が提案したいのは、なぜ車を運転しなければならないのか、他に方法は無いのかについて家族全員で考え明確にするということです。

1)なぜ、運転を続けるのか?
2)これからの生活の目的は何か?

1)に関しては、ご本人には理由があります。
運転をしないと病院に行けないのか。運転をしないと買い物が困るのか?もしこのような理由であるのなら、これを解決する方法やアイデアを家族で考えてあげて欲しいのです。例えば、高齢になりお米や洗剤などを買うには、やはり車があったら便利です。

しかし、すぐに消費するものでなければ、月に1回や2回はご家族の車でお買い物に行ってあげたり、遠方に住むご家族ならインターネットで注文をして、親の自宅に送ってあげたりすることで問題は解決します。重いものを買うのでなければ、車を使わなくても行ける方法はあるでしょう。

このような形で、遠方に住むご家族が定期的に連絡を取り合うことは、振り込め詐欺防止にもつながると思います。

2)に関して、これからの生活の目的では、高齢者の方は「健康でいつまでも自分らしく、幸せに暮らしたい」と考える方が多いはずです。そこで、健康でいる為には運動は必要不可欠です。そのために高齢者が簡単に手軽にできる運動というのは、歩くこと=有酸素運動です。

歩くことは認知症予防にもなるというデータもあり、心肺機能を高め、血流をよくするため、生活習慣病の改善や予防につながります。高血圧・糖尿病・ガン・脂質代謝異常・動脈硬化などの予防に役立ちます。

さらに効果的なのは、万歩計をつけ日々記録すること。それを定期的にご家族がチェックして、頑張って歩いた時はほめてあげるようにしてください。何歳になっても褒められるのはうれしいことですから。人に認められたら相手の意見も受け入れやすくなります。親子だからこそ、ここは重要なポイントではないでしょうか?

また、同時に血圧と脈拍と体重なども毎日記録していると、健康を維持する良い指針になります。多くの病気は生活習慣からくるものですから、意識を車の運転することから健康のために歩くことへ変えるアプローチをされてみてはいかがでしょう。

重要なのは車の運転理由を受け入れ、運転しない時の不便を解消してあげること。そして、出来ないことや否定的にフォーカスするのではなく、より良くなることにフォーカスし生きる目的に近づける説得の仕方が有効だと思います。高齢者の家族がいる方は、免許返納について、ぜひ家族全員で話し合ってみてください。

(髙木理恵/介護施設コンサルティング)

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