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トヨタ社長の「終身雇用難しい」発言からも伺える、バブル世代の行く末!?

JIJICO / 2019年11月6日 7時0分

トヨタ社長の「終身雇用難しい」発言からも伺える、バブル世代の行く末!?

トヨタ社長の「終身雇用難しい」発言からも伺える、バブル世代の行く末!?

「正社員は一生安泰」と言われたのは、もはや過去のこと? トヨタをはじめ、日本を代表する大手企業の経営者による、終身雇用の見直しの可能性を示唆する発言が、大きな話題となりました。

終身雇用が当たり前の時代に入社したのが、50代を中心とした「バブル世代」。高齢化とともに、定年は60歳から65歳へと、働く期間はどんどん延びるのに、今さら終身雇用が約束されないなんて、とため息が聞こえてきそうです。

一方で、「年功序列のぬるま湯に浸かって働かない」など、この世代への厳しい声も少なくありません。終身雇用はなくなっていくのでしょうか。また、時代を見据えたバブル世代の心構えとは。人事評価制度の整備などに詳しい、社会保険労務士の影山正伸さんに聞きました。

若手と中高年の賃金差が小さくなるなか「先が見えた」という人は人生の棚卸しを

Q:終身雇用制度とは、日本企業独特のものですか? ------ 日本と欧米諸国では、雇用のタイプが大きく異なります。まず、日本には、「解雇」に関わる紛争を、雇用主が労働者に金銭を支払うことで解決できる法律はありません。そのため、一度雇用されると、よほどのことがない限り、定年まで続けて働けるという「終身雇用」が守られています。

給与制度についても、欧米では、仕事の内容や価値に対して賃金が決まる「職務給」が一般的です。20代も50代も同じ土俵で、「この業務はいくら」という形で支払われます。

対して、日本では、能力に対して賃金が決まる「職能給」がとられています。〝能力〟とは、理解力・判断力・決断力、改善力・企画力・開発力…など。「前年度と比べて、この人は理解度が上がった」などと、定期的に評価し、昇給する定期昇給があります。そのため定期昇給が積み重なり、長く働くほど、賃金が上昇する年功序列型に。

「働く人のモチベーションが維持できる」「社会に出たばかりの若者の雇用が安定する」という利点があり、右肩上がりの高度経済成長期には、適していたといえます。

Q: トヨタをはじめ、終身雇用の限界を示唆する大手企業が出てきています。問題点として「働かないバブル世代」が挙げられる背景は? ------ 近年、グローバル企業では、優秀な人材の確保のために、若手の給与の引き上げをめざしています。例えば、ユニクロを手がけるファーストリテイリングが、2020年入社の新卒の初任給を25万円以上に設定したことが話題となりました。

ところが、従来の終身雇用の賃金制度では、年齢に沿って賃金が「S字カーブ」を描きます。つまり、本来の働きに対して、20代の若年層は低い水準、50代の中高年は高い水準の賃金に。若年層の賃金を引き上げるには、定期昇給で賃金が上昇し、本来の働きより高い賃金である中高年の人件費が、企業の負担になります。

現在、中高年にあたるのが、ちょうどバブル入社で、人数も多い世代。働きや貢献度が賃金に見合っているかどうかを企業が見極めるのは、当然の流れといえます。トヨタの秋季労使交渉で「働かない中高年」が問題視されたとの報道も、企業の競争力に関わる人材確保の課題が背景にあると考えられます。

Q:中小企業の動きはどうでしょうか? ------ 中小企業では、もともと人材が流動的で、中高年の賃金が大きな負担となる状況は考えにくいです。人手不足が課題で、若い人の採用に苦労をしている企業も多くあります。そのため、役職定年などで大手企業から離脱した中高年に目を向ける中小企業が増えている印象です。

Q:終身雇用はこれからどうなりますか? ------ 現在の法制度のもとでは、終身雇用自体は残っていくと考えられます。ただ、役職定年などで、企業が中高年の給料を下げようとする圧力はさらに強まる傾向があります。もちろん実力があれば、評価されるため、年齢に関係なく、チャンスが広がるといえるでしょう。

一方で、これまでのように「安定していれば、仕事もそこそこでいい」という人には、厳しい環境になるかもしれません。定期的な昇給は、実力しだいと心しておくべきですね。

Q:従来の終身雇用が崩れつつある今、バブル世代が生き残る方法は? ------ これから、若手と中高年の賃金差が小さくなっていく中で、求められるのは「職務のプロ」。仕事の量や質が、給与決定の判断材料になります。すでに、職務給と職能給をあわせた賃金制度をとる企業も一部出てきています。

50代ともなると、これまでの経験や人脈の積み上げがあるはずです。一度人生を〝棚卸し〟して、自分の武器を見つけましょう。その上で、役職定年などで「先が見えてしまった」という人は、大手でのノウハウを生かせる中小企業など、転職先などの検討を。

また、国が推進する「兼業・副業」の解禁も、多くの企業で導入されつつあります。副業で見出した新しいノウハウを本業に役立て、自身の生産性の向上につなげましょう。

兼業先が次のキャリアにつながる可能性もありますので、自分自身の活躍の場をまずは考えてみてください。

(影山 正伸/社会保険労務士)

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