「女性メガネ禁止」に疑問 職場で見た目重視のルールはどこまで強制できるのか
JIJICO / 2019年11月14日 12時0分

「女性メガネ禁止」に疑問 職場で見た目重視のルールはどこまで強制できるのか
テレビの情報番組で取り上げられ、SNS上で大きな議論が巻き起こった「女性従業員のメガネ禁止」。航空会社の客室業務員、化粧品会社の美容部員など、「安全上」「見栄えを重視」など、それぞれの理由で、女性に職場でのメガネ着用を禁止する企業があるようです。
女性だけに対して、理不尽とも思える「見た目」に関する社内ルール。メガネに限らず、どの職場にも少なからずあるようです。
ヒールのある靴を履くことへの強制に疑問の声を上げる、靴と苦痛をかけあわせた「#KuToo(クートゥー)」運動の広がりもその一つ。「身だしなみ」の名のもと、企業が服装について細かく規定することは、問題がないのでしょうか。社会保険労務士の大竹光明さんに聞きました。
メガネ禁止は女性のみという点が問題。ルール化には「業務上の合理性」があるかどうかがポイント
Q:「女性従業員へのメガネ禁止」。そもそも女性差別ではないのでしょうか。 -------- 「女性のみ」という点が、大きな問題です。「メガネの禁止」が業務上必要であれば、同じ業務に就く男性も禁止されるべきです。
ルールの根底には、「女性は美しくいてほしい」という、差別意識があると考えられます。また、規定により、女性が「嫌だ、苦痛だ」と感じるならば、セクハラと判断されるでしょう。
Q:メガネ禁止の理由は企業によりさまざま。ある航空会社の客室業務員は「安全性に配慮するため」、化粧品会社の美容部員では「見栄えのため」。服装を規定する理由として、どこまでが認められるのですか。 -------- 企業運営において、会社の「自治」と、個人の「表現の自由」のバランスをとることは、難しい問題です。服装規定の理由に、「業務上の合理性」があるかどうかが判断の基準となります。
例えば、航空会社がメガネを禁止する場合、「緊急時は乗客にもメガネを外してもらう」「男性もメガネを禁止する」のような規定もあれば、合理性があるといえる可能性が高くなります。
一方、美容部員に対しての「メイクの見え方がよくない」など、「見栄えが悪いから」という理由は、主観に基づくもので、合理性があるとはいいにくいですね。
Q:「ビジネスマナーだから」と、服装が指導されるケースも多いようです。本来、就業規則に記載されるべきですか?また、採用時に伝えるなど、企業側が守るべきルールは? -------- 多様性が重視され、一人一人の物差しが異なる現代では、「社会常識だから」で片付けてしまうことは、難しくなってきています。まず、就業規則や、労働条件通知書などに、服装の規定をきちんと明記することが大切です。実際に、接客を行うサービス業や歯科医院など、就業規則で、華美な服装・ネイル・強い香水などを禁止する企業もあります。
そもそも服装のルールは、企業の経営理念や行動理念に基づく、「会社のコンセプト」として定められるべきもの。「一般的にこうだ」ではなく、「企業として大事にしていること」として、ルールがあるかどうかが重要です。
その上で、日々の社員教育や朝礼などを通して、社員に浸透させることができれば、働く側も納得感を持つことができ、企業と働く側のミスマッチを防ぐことになります。そのために、あらかじめ採用時に伝えておくことも大切です。
働く側が「事前にルールを知った上で入社を決めた」となれば、よほどの理由でない限りは、労働契約違反として、服装の規定を守らない社員に処分を下すこともできます。
Q:メガネの場合、医療器具としての側面もあり、服装規定を健康上の理由から守れないという人もいます。守らない人に、企業が処分を下すことができるのはどのような場合ですか? -------- 健康上の理由で従えない場合、企業が一方的に解雇することはできません。例えば、航空会社で「乗客の命を預かるのだからメガネは禁止」など、業務上ルールがどうしても必要なケースでは、企業側が配置換えなどの代替案を検討するべきでしょう。
ただ働く側も、単純に「嫌だから」という反発心だけでの理由では、認められにくいでしょう。スムーズな企業経営や利益追求のために定められた規則については、企業側にある程度の強制力があります。「労働契約を守らない」として、何らかの処分を下すことは可能です。
Q:「メガネ禁止」や「#KuToo」のように、女性への身だしなみ強要に、反対する声が高まっています。今後、女性の服装の自由に対して、企業の対応は変わると思いますか。 -------- 近年、自社のイメージ戦略をたてる上で、SNSなどでの個人の意見を無視できないと考えている企業は多いです。
また、大きな流れとして、多くの企業で服装に限らず、「男女別の対応」を見直す方向にあると感じます。例えば、女性のみに義務付けていた制服の着用を廃止する企業が一部にあります。新規採用の際に、制服があることで、ある面では良いイメージを持ってもらえず、人材が集まりにくいことなども背景にあるようです。
企業側は、服装規定が、企業としてのコンセプトを打ち出すために「どうしても必要なのか」をまず考えるべきでしょう。ゼロベースで見直してみると、意外と必要のない規定もあるかもしれません。
欧米で、職場での服装差別が問題視されているように、今後、日本の働く環境も欧米化していく可能性は高いと考えられます。「働き方改革」が叫ばれる中、働きやすい環境づくりの一環として、服装規定が見直される動きは出てくるでしょう。
(大竹 光明/社会保険労務士)
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