小学校の英語教育必修化。2020年に向けた親としての準備とは
JIJICO / 2019年12月23日 7時30分
小学校の英語教育必修化。2020年に向けた親としての準備とは
2018年から、小学5年生と6年生で外国語活動が実施され英語の授業が始まりました。そして2020年には小学3年生と4年生で英語の必修化、5年生・6年生では科目として英語が追加され、いよいよ本格的な小学校英語教育がスタートします。変わる英語教育について、親として気をつけなければいけないことについて解説します。
2020年教育改革のひとつ、英語学習の本格化に大きな期待と不安
2020年教育改革を目前に、教育の現場が動き出しています。今回の改革の目的のひとつ「英語を使う力を伸ばすこと」は、日本人の得意とする領域ではなく、その取り組みについては注目を集めています。小学校、中学校、高校の学習指導要領が改定されるのに並行して進められている英語教育改革では、2020年には、小学3年生・4年生で外国語活動の実施、小学5年生・6年生で教科として必修になります。
現代のグローバル社会においては、新学習指導要領の全面実施の前から使える英語の必要性や重要性が高まり、この数年はその変化が注目されています。大きな期待や不安と共に、家庭でも話題に上っていることでしょう。文部科学省による英語教育実施調査でも、小学校段階から英語を必須とすることに、保護者の約7割から積極的な回答がありました。また、2000年から段階的に始められた「総合的な学習の時間」では、多くの小学校で英語活動が実施されていることが報告されています。
「英語に関心や興味を持つようになった」「外国人と臆することなく接しようとするようになった」といった保護者の意見があり、好ましい状況が見られたことから、その後も90%以上の小学校が何らかの形で英語に触れる時間を設けてきました。ただ、自治体や各小学校によってばらつきがあるなど、不安視される点があったことも事実です。その中で、小学校段階における英語教育の充実を図るための調査・研究が行われ、全ての小学校で共通に指導することが検討され続けてきました。それだけに、このたびの教育改革に対する期待は大きいものと判断されるようです。
日本人が国際社会で活躍するためには、小学生の柔軟な適応力を生かすこと、そして英語教育を充実させることにより、次世代を担う子供たちに国際的な視野を備えたコミュニケーション能力を育成することが大切です。日本の英語教育を大きく飛躍させるためには、国家戦略として英語教育の充実を図る必要があります。国の動きをしっかりと理解してサポートしていければ、子供たちの未来は輝くものとなり、より良い結果につながるはずです。
文科省の調査によると約8割の学校で英語活動を実施
小学校英語教育に関する英語活動実施状況調査(文部科学省)によると、公立小学校の「総合的な学習の時間」で、約8割の学校が英語活動を実施しています。歌やゲームで英語に親しんだり、簡単な英会話や自己紹介に取り組んだり、その活動は約95%にも上り、73%が英語の発音練習を行っているということです。
以上のような働きかけや取り組みから、英語に対する関心や意欲が高まったことや、スキル面で一定の成果があったとの報告がなされています。良好な結果ではありますが、一時期、予測もしなかった外国語活動を迫られた小学校の先生たちは困惑したことでしょう。大学入試改革においては、今後の行方について心配を拭い去れない状況でもあります。
しかし、2018年に始まったこの教育改革は一歩ずつ前に進んでいます。英語活動実施状況調査を見ても、言語習得の理想から言っても、英語教育の早期化は間違いではないと言えそうです。急速に進んだグローバル化で使える英語、伝わる英語がより一層重要に使える英語力、伝わる英語力が求められるようになった背景には、経済や社会などが急速にグローバル化したことがあります。競争がグローバル化することで発生する地球規模の課題、深刻化する環境問題に地球人として立ち向かい、果敢に生き抜くためには、国際的理解や国際的協調性が求められるのは当然のことです。
また、昨今のI T技術の進展やインターネットの普及には目を見張るものがあります。数々の場面で必要とされる多種多様な知識や情報を、収集・発信するためにコミュニケーション能力は欠かすことができません。求められるものも大きいですが、グローバル化により、誰もが世界を舞台に活躍できる可能性も広がっているのです。
革命的ともささやかれる日本の英語教育への期待は増すばかりですが、残念ながら日本人の英語運用能力はアジア諸国で最下位とも言われています。この現状を脱出するためにも、この動きは決して早いわけではない、ということを忘れてはいけません。
グローバル化に伴い、日本では外国人労働者も増加傾向にあります。自分自身が国際的な場に立つことがなくても、用事で立ち寄った店などに外国人が働いていたり、自身が外国人を雇う側に立ったりする可能性も少なくありません。外国人労働者の増加やインターネットの普及により、国内においても外国語でコミュニケーションを図る機会が増えているのです。ひとりでも多くの日本人が、このことを意識すべきなのかもしれません。
英語の4技能「聞く・話す・読む・書く」について
「4技能5領域」は、この頃よく耳にする言葉です。4技能とは、「聞く・話す・読む・書く」のことです。そして、この4技能のなかの「話す」という技能を「やりとり」と「発表」の2つの領域に分けることで、5領域となります。さて、この4技能のひとつである「話す・やりとり」と「話す・発表」はどのように異なるのでしょうか?
「やりとり」は、そばに相手がいて、その相手とのやりとりです。わかりやすく表現すれば、会話になります。それに対して「発表」は、相手はあっても言葉のやりとりが即座に発生するわけではありません。また「発表」とは準備や練習をする機会があり、「やりとり」は特別な準備はない、つまり即効性が求められます。
「読む」「書く」に関して、日本の英語教育では、文法力や語彙力に重きを置きその力をつけています。これら文法力や語彙力は「話す」技能にも必要で、しっかりと養う必要があります。しかし、私たちの多くはこれらの力を生かし、「話す」という技能を伸ばせていないのが現実です。
まず単純に「話す」ということは、人とは異なる意見であっても、多少の間違いがあっても、自分の思いを自分の持つ力で「どうにかこうにか伝える」という強い力です。
「読む」「書く」という技能があるにも関わらず、間違いを恐れてしまう、人と違うことに不安を感じてしまう日本人の気質が、英語を話すということに影響を及ぼしているように感じます。英語を話すためには、こういった性質に働きかける必要があると考えます。
では、どうすればいいでしょう?
小さい子供は、間違いがあっても恥ずかしからず条件反射的に「やりとり」を返すことができます。幼い頃は、自然に近い状態で本来の「話す」ことを身につけているのです。「やりとり」の領域でも「発表」の領域でも、まわりからの評価を気にせず、安心して自分の気持ちや考えを話すためには、日本語を習得するように、幼少期から英語の力を身につけることが大切です。
日本人が最も苦手とする技能、領域となっている「話す」力は、幼児期や小学校低学年からであれば、うまく導いていけるのではないかと感じています。先にも述べた通り、グローバル化やI T化が進むほか、政府の方針や働きかけにより外国からの観光客や労働者も増えています。
世界はどんどん小さくなっていくようです。日本はもう島国ではありません。グローバル化に伴い、商業面では特に高度なレベルのコミュニケーション能力が求められます。「読む」「書く」の2つの技能では足りず、「聞く」「話す」の4技能のバランスを取ることが必要だと言うことです。
幼い時期から成長力を生かすことで日本は変わる
大学入試が変わらなければ日本の英語教育は変わらないと、4技能、特に「話す」技能の必要性が指摘され、このたびの大学入試改革に大きな期待が寄せられていました。しかし、この秋、英語民間試験を活用した4技能評価を支援する「大学入試英語成績提供システム」の導入が見送られました。「英語を使う力を伸ばす」を達成するには4技能の強化が必要で、そのために試験のあり方を見直したり、小・中・高校の連携を図ったりすることもよく理解できます。しかし、幼・小からのアプローチも重要であること、その方が賢い選択であるかもしれないということに、国家レベルで気づいてほしいと思います。 私は、こうも考えています。 人は、お金を使わず脳を使えばいいのです。人間だからこそ持つ自然な成長力です。できれば柔らかな子供のうちにです。ちょっと飛躍した意見になりますが、そうすることで、日本特有の大学入試制度に変化をもたらしたり、指導教員養成の時間やお金が軽減されるような気がするのです。問題を難しくすることはないのです。私たち人間の力を見直してほしいと思っています。共通の言語を使って世界の人々と関わりを持つのは、特別な人だけではないからです。私は、ひとりでも多くの人に、さまざまな場面で活躍してほしいのです。
2020年から実施される外国語活動と教科の内容は?
文部科学省が発表した小学校の英語教育は、2020年から本格化します。この改革は英語だけではなく、すべての科目において実施されるのですが、小学校英語教育に関してご説明します。小学3年生・4年生では、これまで5年生・6年生を対象に行われていた外国語活動を実施。教科書が配布され、年間35時間が設けられます。
学校担任主導のもと「聞く」「話す」にフォーカスされ、「読む」「書く」に関しての取り組みはありません。目的は「英語に慣れ親しむこと」であり、英語4技能のうちの2技能3領域、「聞く」と「話す(やり取り)」「話す(発表)」における言語活動、コミュニケーションが中心となります。この外国語活動は教科ではないことから成績をつけられることはなく、目的の通り、英語に親しむことを思い切り満喫できそうです。
小学5年生・6年生では教科として必修化され、全国一律の教科書が配布されます。年間70時間の授業が実施され、その目的も「英語によるコミュニケーションスキルの基礎を養う」と、小学生にしてはやや高度な印象です。授業の内容は、4技能5領域となり、「聞く」「話す(やり取り)」「話す(発表)」「読む」「書く」となります。「読む」「書く」にも取り組むことになりますが、基礎的な語彙や表現を使ったり、読んだり書き写したり、中学校での学習法にうまく引き継いでいけるようにと考えてあるようです。
なお、教科ですから評価基準も示されます。
地域や学校次第ではあったものの、移行期と呼ばれる2018年~2019年の取り組みを経て、着実に教育改革へ向かっています。教員や保護者の抱える不安は拭い去れないにしても、子供たちにそれを感じさせてはいけません。
あまり難しく考えずに、子供たちに「英語は楽しい!」「英語は自分の世界を広げてくれる!」「英語を通して数多くの興味深い文化や歴史に触れることができる!」ということに気づいてほしいと思います。
求められている学校側の対応、教師のスキルと現状について
「小学3年生から英語教育がスタートする!」「誰が教えるの?」「どれくらいのレベルまで教えることができるの?」「発音は大丈夫なの?」これらは、保護者の多くが抱く疑問です。小学校教諭には、もともと英語指導能力は求められておりません。ですから、これらの疑問はとても自然なことです。
実は、2014年から小学校の先生のために、各地域の研修センターで英語教育研修が実施されているそうです。 2020年からは、担任の先生とA L T(外国語指導助手)の研修だけではなく、国も一緒に英語教育に取り組むそうです。
その取り組みとは
① 国から英語の専門家が「推進リーダー」に英語研修をする。 ② リーダーが、各学校の「中核教員」に研修をする。 ③ 中核教員が担任に研修。英語専門の教員、専科教員の配置。
高学年になると、英語の専科教員が配置されますが、地域差があってはなりません。全国の小学校で統一されることを願います。小学校の先生は英語のプロではありません。期待は高まりますが、まずはこの改革により、全ての小学校で統一した英語教育が平等に提供されることに大きな一歩を感じてほしいと思います。
担任の先生に望むのは、担任にしかできないことを探ってほしいということです。というのも、担任の先生は保護者よりも多くの時間を子供と共にしている可能性があり、子供たちのことを知りつくしていると言っても過言ではありません。そんな小学校の先生だからこそできる関わり方、とにかく子供たちが英語を好きになるように関わってもらいたいと考えています。
担任の先生は子供たちと同じラインに立ち、一緒に学ぶ姿勢を見せてほしいのです。
教育とは、時に「教えようとしないこと」が大切だったりします。これは、日頃から私が伝えていることで、子供が英語を学ぶときの周りの大人たちと子供の関わり方によく似ています。
例えば、英語の発音がネイティブではないお母さんと赤ちゃんが英語絵本に触れる時などは、発音がかなり心配だと言われます。無理もありません。ですから音声教材などを利用して「決して教えようとはなさらずに、一緒に学んでください」と伝えています。
これと同じように、子供と一緒に英語学習に取り組む小学校の先生が、英語への学びを深めたいと感じた時には、先生たちの自主的な学びを国がサポートするべきです。
親としてのこころ構え、準備について
2018年から開始された英語教育改革が本格化する2020年はすぐそこです。英語教育がさらに生きてくるよう、私たち大人がその動きを正しく理解し、一緒にできることを実践しようとするか否かで、子供たちの未来は大きく違ってくるでしょう。大人がすべきことは、取り組みそのものを楽しむことです。英語教育改革で新展開を追い求めるあまり、無理やり詰め込むなんてことがあってはなりません。
子供たちはどんなことにでも、特に新しいことに興味を示します。子供の周りにいる大人は、そのタイミングを逃さぬよう、一緒に興味関心を示すことが大切です。子供たちは学びのプロ、真似のプロですから、周りの大人たちをよく観察して同じように前向きに取り組んでくれるでしょう。
細かいことになりますが、言語を習得するには、良質多量なターゲット言語を最低2000〜3000時間、聞く必要があると言われています。
私たちは、日本語学校に行き日本語を習得したわけではありません。ただただ、周囲から流れてくる言語を自然に耳にし、それらを脳がキャッチしてきただけです。 言語が日本語環境であっても、工夫をすることで英語を耳にする時間を増やすことは可能です。
子供が絵本を好きであれば、英語絵本に触れたり、できる限り音源がついているもので真似をしたり、一緒に歌ったり、チャンツで楽しんだりしましょう。
今は、とても便利です。インターネットがあるので選択肢も広がり、外国の映画や子供向けテレビ番組などを活用することができます。 その時、周りにいる大人たちとのリアルな関わりもバランスよくとることが大切です。つまり、ネットやDVDなどに頼りすぎるのはよくないということです。
英語に触れる機会を親子で増やし、英語は楽しいものとして、人が使うものとしてインプットできたらいいですね。
まとめ
新しいことには、何事でも期待や不安、意見はつきものです。そして、そこから生まれる課題があってこそ成功へつながるのだと思います。2020年英語教育改革の成功も、私たち個々の動きにかかっているはずです。子供たちの未来がもっと輝くように、大人たちがそれぞれの立場で、子供たちと一緒に楽しんでいきましょう。
(ゴーン 恵美/英会話講師)
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