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「いきなり!ステーキ」社長のメッセージに賛否 ブランディングの視点から見た問題点とは

JIJICO / 2019年12月27日 7時30分

「いきなり!ステーキ」社長のメッセージに賛否 ブランディングの視点から見た問題点とは

「いきなり!ステーキ」社長のメッセージに賛否 ブランディングの視点から見た問題点とは

一瀬社長が書いた張り紙がネットで炎上

ステーキを低価格で、立ち食いで提供するスタイルが話題となり、急成長を遂げてきたステーキ専門チェーン店「いきなり!ステーキ(運営・ペッパーフードサービス)」。最近になって業績悪化を伝える報道が続いています。

そんな中、店頭に張られた一瀬邦夫社長直筆の「お願い文」がネット上で話題になっています。

一瀬社長の言葉は、なぜ炎上を招いてしまったのでしょう?「いきなり!ステーキ」の事例から、ブランディングについて考えてみたいと思います。

メッセージは以下の通りです -----

社長からのお願いでございます  従業員、皆元気よく笑顔でお迎えいたします

いきなりステーキは日本初の格安高級牛肉の厚切りステーキを気軽に召しあがれる食文化を発明、大繁盛させて頂きました。 今では店舗の急拡大により、いつでも、どこでもいきなりステーキを食べることができるようになりました。

しかし、お客様のご来店が減少しております。このままではお近くの店を閉めることになります。 従業員一同は明るく元気に頑張っております。 お店も皆様のご希望にお応えしてほぼ全店を着席できるようにしました。メニューも定量化150g、200gからでも注文できオーダーカットも選べます。 創業者一瀬邦夫からのお願いです。ぜひ皆様のご来店を心よりお待ちしております

-----

この文章が「上から目線だ!」とネット上で炎上しています。 本来は「頑張っているので、ぜひ食べに来てください」とお客さまに伝えたかったのだと思うのですが、この張り紙を見た人には「客が来ないなら、近くの店舗を閉めるぞ!」と、高圧的なメッセージとして伝わってしまったようです。

コミュニケーションでは「伝えたい」より「伝わらせたい」が大切

コミュニケーションは、自分の思いを一方的に「伝える」だけでは不十分です。相手にも思いが「伝わる」ことでその目的を果たすことができます。

しかし、いくら思いが伝わるように発言や行動をしても、「どのように伝わるか?」「どの程度伝わるか?」はわかりません。情報の選択権は 100%受け手側にあるからです。そこで 情報の送り手側は、受け手側に対して「伝えたい」ではなく「伝わらせたい」と思ってコミュニケーションすることが大切になってきます。

今回のケースは、このメッセージを発信することで「受け手側がどのような感情を持つのか?」を想像する力が少し足りなかったようです。

ブランディング成功のポイントは「共感」の獲得と拡散

また、SNSが発達した今、ブランディング成功の秘訣は共感の獲得と拡散にあるのですが、今回の文章はお店側の一方的な主張ばかりです。 これではお客さまの「共感」を得ることはできません。それどころか、今回のような反発や経営不振の現状がネット上で「拡散」する結果になってしまいます。

ブランディングとは、ターゲットの心の中にメッセージを刻み込むためのコミュニケーション活動です。ひとりよがりの情報発信では決してお客さまの共感を得ることはできません。

ブランド価値は拡大に反比例、店舗を急増させたことが経営不振の一因

実は私は、以前に糖質制限ダイエットを行ってきた時期があったのでそれ以来、「いきなり!ステーキ」をよく利用しています。ですから、この1年半くらいの変化は身をもって体験しています。

2018年4月。姫路駅前店(兵庫県姫路市)ができた時は、物珍しさもあってどの時間帯に行っても店頭には長蛇の列ができていました。 当時は、店員さんに300g以上のお肉を強くすすめられました。女性や子供、お年寄りにはキツイだろうと思う一方で、ガッツリと食べたい男性や筋トレマニア、糖質制限中の人などには十分に需要があるだろうなと感心させられました。

しかし、2018年5月の値上げから雲行きが怪しくなってきました。 行列はいつの間にかなくなり、空席が目立つようになってきました。さすがにこれはまずいと思ったのか、無料のセットメニューをつけたり、プリペイドカードの特典を増やしたり、アルコールを含むドリンクが10円で飲める券を配ったりといろいろと対策をとったのですが、その後客足が戻ることはありませんでした。

値上げによる客離れや、ライバル店の出現も苦戦の理由だと思いますが、経営不振の一番の原因は、6年弱で約500店舗まで急拡大したことにあると私は思っています。

これだけ拡大すると、これまでの絞り込まれた客層だけではまかないきることができず、女性層やファミリー層まで取り込まなければいけなくなってしまいます。また、ブランドの要素として大切な、人材の確保や育成も追いつかなくなってしまいます。

ブランドの法則のひとつに「ブランド価値は拡大に反比例する」というのがありますが、「いきなり!ステーキ」は店舗拡大と共にそれまで築き上げたブランドを失ってしまったようです。

これまでは70%~60%と言われる原価率の高さを客の回転率でカバーしてきましたが、これからはこのビジネスモデルを維持するのは難しいでしょう。

今後、どのような方法で新しいブランドイメージを作り上げていくのか?しばらくは、お店に通いながら注目していきたいと思います。

(堀田 周郎/ブランディングコンサルタント)

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