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シニアの「家じまい」、終活で快適なセカンドライフを送るために大切なこととは?

JIJICO / 2020年3月25日 7時30分

シニアの「家じまい」、終活で快適なセカンドライフを送るために大切なこととは?

シニアの「家じまい」、終活で快適なセカンドライフを送るために大切なこととは?

老後の住まいについて、頭を悩ませている人が増えているようです。家族が減り、使わなくなった部屋が物置状態になったり、家の傷みが目についたりするのも気になり始めます。リタイア後の田舎暮らしを夢見て、現役時代に住んでいた住まいを処分し、セカンドライフを満喫することがブームになったこともありました。近年では、若年層のマイホーム志向が減り、古い一戸建ての処分が待ったなしとも言われています。

年金の受給年齢引き上げや、介護保険料値上げなどの経済的な不安に加え、認知症のほか体の衰えに対する不安も尽きません。夢のセカンドライフより、どうやって子ども世代に迷惑をかけずに暮らすかが、シニアの最大の関心事となりそうです。子ども世代が処分に困らないよう、リタイア後の身辺整理の際に、「家じまい」を選択することを終活のひとつにする人も。老後の家じまいについて、いつ頃から考えておくべきでしょうか。ファイナンシャルプランナーの土田茂さんに聞きました。

現役時代から子ども世代と一緒にセカンドライフのイメージを話し合う機会を持つことが、スムーズな家じまいのポイント

Q:年齢を重ねるごとに、持ち家の維持管理が困難になったり、家の構造に不便を感じたりすることがあるようです。シニア世代にとっての住宅の問題点は?

古い住宅は、段差が多い、気密性が低い、子育て前提で建てたため部屋数が多いなど構造的な面で、シニアには住みづらくなってきます。 長年の傷みが目についても、自分で手直しするのも困難になりますし、まとまった修繕費用も負担となります。 また、清掃などが行き届かず、部屋が物置状態になることもあります。 都市部であれば、子ども世代が引き継いで住むということもできます。住まない場合でも、売却しやすかったりしますが、地方ではそれも難しいことが多く、結局のところ、空き家になってしまう恐れがあります。

Q:老後の生活をコンパクトにするために、住宅そのものに掛かる費用や手続きの負担を減らす方法の一つとして、家の売却などの「家じまい」をする人が増えているようです。「家じまい」とは具体的にどのようなものですか? -------- 現役時代に購入した一戸建て住宅を処分し、マンションやサービス付き高齢者住宅などへ住み替えることなどを「家じまい」と言います。

都市部なら選択肢は多く、売却だけではなく、他の人に賃貸物件として貸し出し、自分たちはコンパクトな賃貸マンションへ住み替えるなども可能ですが、地方では難しいというのが現状です。

しかし、単に住宅を処分するということだけを考えればいいという問題ではありません。

① セカンドライフを充実させるためのライフプランを立てる ② 資産をどのような形で活用(居住・賃貸・売却など)し、どのように相続するのか

この2つを明確にするために、子ども世代を含めた家族全員で話し合いを持つことが大切で、住宅の処分は、あくまでその手段の一つに過ぎません。

Q:現在住んでいる住宅とは別に、代々相続してきた地方の家や土地、現役時代に購入したセカンドハウスを所有していることもあるようです。こうした「空き家」についての対策は? -------- 地方の空き家については、どの自治体も頭を悩ませているところです。

空き家を借りたい人とのマッチングを図る「空き家バンク」などの対策を講じている自治体があるほか、民間レベルでも、地方への移住を積極的に受け入れ「田舎暮らし」をPRする地域もあります。

ただ、自治体が田舎暮らしを推奨するのは、比較的若いファミリー層が多いようです。

シニアが趣味などを楽しみたいと地方移住を考える場合、十分なリサーチなしで移住してしまうと、処分したいときにできず困ることにもなります。 例えば東北地方への移住なら、雪の季節の住みにくさなども知っておくべきでしょう。

また、代々相続してきた家屋や山林などは、子ども世代へ資産として残したい親と、希望しない子ども世代で意見が分かれる場合があります。 相続物件については、後々争いの種になりかねませんし、登記義務化などの法改正の動きもあるので、親子間できちんと話し合う必要があります。

Q:シニアになってからの住み替えには、かなりのエネルギーを要しそうです。住み替えや不動産の売却を考えはじめるとしたら、そのタイミングは? -------- 65歳を過ぎると、身元保証人の不在や、家賃の支払い能力の問題、孤独死の懸念もあり、賃貸物件は契約しにくいと思われています。

ただ今後、高齢者が増え需要が高まることを見越して、バリアフリーやリスクサポートシステムを充実させた賃貸物件をシニアに貸し出す業者が出てきているのも事実です。

数は多くありませんが、UR賃貸の「高齢者向け賃貸住宅」もその一つです。さらに、家賃の連帯保証を請け負うサービスが登場するなど、シニアが賃貸しやすい環境が整いつつあります。

資金面で言うと、大手銀行では、自宅を担保に融資を受けられる「リバースモーゲージ」制度を打ち出しています。 しかし、これも注意が必要で、「長生き」「金利上昇」「家の評価減少」といったリスクのほか、契約者が亡くなった場合に、配偶者が継続して住むことができなくなる可能性もあり、事前に契約内容などをよく検討しておく必要があります。

いずれにしても、こうしたことを決断して実行するのは人生において重要なことです。現役時代から、リタイア後のライフプランを具体的にイメージしておくと、十分に時間を掛けてセカンドライフに向けての準備をすることができます。 そのときに大切なことは、自分たちだけでなく、相続も考え、子ども世代と一緒に考えるということでしょう。 親世代、子ども世代ともに元気で若く、「親の老後はまだまだ遠い先のこと」といった時期から親子の話題にしておくだけでもいいと思います。

Q:快適なセカンドライフのための、住まいの条件とは? -------- 賃貸、分譲に関わらず、子ども世帯や親族に近いと心丈夫なのは言うまでもありません。それが困難なら、将来の孤立を避け、コミュニティーが充実しているか、介護サービスが受けやすい地域であると安心でしょう。同じく医療機関や文化施設に近い、アクセスがよいといった環境であれば、なお充実した生活が送れそうです。

そういう意味では、「家じまい」は今後の人生をどう生きていくかという、シニアライフプラン(終活)の一つと考えるべきだと思います。

(土田 茂/ファイナンシャルプランナー)

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