朝ドラ「スカーレット」が最終回へ 武志の病名「慢性骨髄性白血病」とは
JIJICO / 2020年3月27日 7時30分
朝ドラ「スカーレット」が最終回へ 武志の病名「慢性骨髄性白血病」とは
女優の戸田恵梨香さん主演のNHK連続テレビ小説「スカーレット」が3月28日にいよいよ最終回を迎えます。第131話で、主人公・川原喜美子の長男、武志(伊藤健太郎さん)が「慢性骨髄性白血病」と診断され、余命宣告を受けたシーンが放送されると、ツイッターで病名がトレンドに入り、SNSにも悲しみのコメントがあふれるなど、衝撃を受けた視聴者が多かったようです。
ドラマでは、唯一の治療法である骨髄移植に望みをかけるも、武志に適合するドナーがなかなか見つからず、不安を抱えながら病と向き合う親子の姿が描かれます。慢性骨髄性白血病とはどのような病気なのでしょうか。症状や現代の治療法とは。内科医の佐藤秀俊さんに聞きました。
時間をかけてゆっくりと進行するため、症状が出にくく自分で気付くことができない。定期的な健康診断で早期発見を
Q:慢性骨髄性白血病とは、どのような病気ですか? -------- 血液中には、3種の血球があります。外部からの細菌やウイルスと闘う白血球、体全体に酸素を送る赤血球、出血したときに血を止める血小板です。
もともとは、骨の内部にある「骨髄」で作られる造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)が、子どもの細胞から大人の細胞へと成長するように分化(ぶんか)し、3種の血球となります。
通常、血球の数は一定ですが、作られる過程で爆発的に増加する病気が「骨髄増殖性腫瘍」です。このうち、白血球が無制限に増加するのが、「骨髄性白血病」です。5年から10年かけて進行し、症状がわかりにくい「慢性」と、発症後数カ月などすぐに進行し、症状が出やすい「急性」に分類されます。
Q:自覚症状はありますか?何がきっかけで病気が判明することが多いでしょうか?。 -------- 慢性骨髄性白血病は、前述のとおり、5年から10年かけてゆっくり進行します。白血球が増殖し、がん化した白血病細胞は、しばらくの間、正常な白血球と同じ働きをするため、健康な状態との違いに本人が気付くことはできません。
病気が判明するきっかけのほとんどは、健康診断の血液検査で、白血球の数値に異常が見つかり、再検査で偶然見つかるケースです。当院の患者さんでも、最初は風邪で受診され、顔色が悪かったため血液検査をしたところ、異常が見つかり、総合病院での再検査で白血病と診断された方がおられました。
白血球の正常値は約3500~9000/μL(マイクロリットル)ですが、目安として2万/μL以上を示した場合は、再検査となります。風邪などでウイルスが体内に侵入していると、白血球の数値が一時的に増えることはありますが、健康な状態で数値に異常がある場合は、詳しい検査が必要です。
Q:具体的な症状は、どのようなものでしょうか? -------- 初期の段階では、自覚症状はありません。病気が進行するにつれ、貧血や全身のだるさ、体重の減少のほか、古くなった白血球や赤血球を処分する内臓「脾臓(ひぞう)」が大きくなることでお腹がはる、などの症状が出ます。
さらに症状が進むと、風邪をひいても治らない、原因不明のだるさが続くなどの症状が出てきます。
Q:発症の原因は何ですか?また年間の患者数はどれくらいですか? -------- 原因のほとんどは、染色体異常により「フィラデルフィア染色体」が形成されることによるものです。染色体上に異常な遺伝子が作られ、血液細胞を過剰に増殖させる働きにより発症します。
慢性骨髄性白血病と診断される患者さんは、年間、100万人あたり約7~10人です。年代・性別では、50歳代の中年期の男性の発症が多い傾向にあります。
Q.ドラマでは、時代設定が昭和で、唯一の治療法が骨髄移植とされていました。現代ではどのような治療が行われていますか? -------- 治療方法は、病気の進行や体の状態に応じて決定されます。病気の進行の程度は、「①慢性期」「②移行期」「③急性転化期」の3つの「病期」に分けられます。
③が最も悪化した状態で、いかに①の慢性期を長期間維持し、重症化させないかが治療の目的となります。
①の慢性期では、さまざまながん治療で導入されている「分子標的治療」が行われます。分子標的治療とは、がん細胞が持つ特性を見つけ、がん細胞のみを分子標的薬で狙い撃ちします。昭和のころにはなかった治療法で、現在はこの治療が主流となっています。
②移行期、③急性転化期へと進んだ場合は、分子標的治療薬の種類を変えたり、量を増やしたりすることを検討し、さらに抗がん薬を用いた化学療法も加えます。
一方、移植療法では、白血病で正常な機能を失った骨髄などの造血機能を回復させるため、造血機能を持つ骨髄などにある造血幹細胞を移植します。
ただ、適合するドナーは、家族同士でも見つかる可能性が低いのが現状です。昨年、水泳選手の池江璃花子さんが白血病を公表した際に、骨髄バンクへのドナー登録が増えたようですが、現在も十分ではありません。また、移植を受ける場合、体の負担が大きいため、本人の体力が残っているかも重要です。
慢性骨髄性白血病は、初期症状が出にくく、自分で気付くことができません。定期的な健康診断で、症状が出る前に異常を見つけることが大切です。また、少しでも体の不調を感じたら、早めにかかりつけ医に相談しましょう。白血病に限らずどんな病気でも、早期発見が、治療の効果をより高めます。
(佐藤 秀俊/内科医)
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