学力向上に必要な「学習習慣」 学習意欲を高めるために親ができるサポートとは
JIJICO / 2020年5月15日 14時0分
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学力向上に必要な「学習習慣」 学習意欲を高めるために親ができるサポートとは
5月半ばになっても休校が続く地域が多い中、改めて子どもの家庭学習について見直す保護者も多いのではないでしょうか。参考書やオンライン教材などを用意し、子どもに「勉強しなさい」と声をかけても、中高生にもなれば、素直に机に向かうケースは少ないかもしれません。
「勉強しなさい」と言わなくても、毎日進んで学習に向かってくれたらと、願う親たち。多くの東大生の「親から勉強しろと言われたことがない」という声がメディアで取り上げられるように、学習習慣が身に付くと、学力向上につながる印象があります。勉強を「やらされる」のではなく「習慣」にするコツとは。親はどのように働きかけるといいのでしょうか。母と子の教育相談を行う富田祥文さんに聞きました。
リビング学習で丸付けまで自分でさせる。親は先生にならず笑顔で見守ることに徹して。子どもの努力を見逃さず、ほめて伸ばす
Q:学習習慣が身に付くとは、どのような状態を目指すことですか? -------- 学習習慣を身に付けることは、子どもが自分の足で立てるようになることです。スポーツでは、練習を1日さぼると、取り戻すのに3日かかると言われます。勉強も同じく、1日でもしない日があれば、鉛筆を正しく持つための筋肉が落ちます。鉛筆を正しく持つとは、書くことへのストレスを減らし、学習への集中力が続くことを意味します。
学習習慣を身に付ける目的は、最終的には成績を上げることですが、2~3カ月ですぐに成果が出るものではありません。まずは、成績の良し悪しはさておき、毎日欠かさず勉強に向かう習慣をつけることに重点を置いてください。
Q:スムーズに学習習慣が身に付くタイミングはありますか。中高生からでも身に付きますか? -------- 小学生までに身に付けることが理想です。家庭学習は、親からの声かけなど、お母さんのおなかにいるときからすでに始まっており、絵本の読み聞かせなどを経て、幼児から小学校4年生くらいまでに、習慣づけを行っておくと、子どもは自主的に勉強するようになります。
中高生で、学習習慣が身に付いていない場合、まず、学校の宿題がきちんとできるかを確認してみてください。
宿題は、本来、授業で理解できているはずの単元を定着させるための学習です。毎日授業に出ているのに、宿題ができない場合は、それまでの学習で「つまずき」がある可能性があるので、学校の先生など教育のプロに相談しましょう。
授業がわからない状態では、自ら勉強する気にはなりません。特に、数学や英語、化学、物理などは、積み重ねが大切な科目です。例えば、数学の約数がわからない場合は、小学校の九九から始めるなど、本人が理解できているところまで戻り、改めて積み重ねていくことで、学習習慣につなげます。
中学生など成長するにつれ、親は「早く進め」とばかりに、子どもの後ろから背中を押そうとしますが、大事なのは、進むべき方向で「待つ」ことです。わが子が初めてハイハイをしたとき、進んでくる方でじっと待ち、たどりついたときに抱きしめた経験があるのではないでしょうか。学習習慣が身に付いていない理由を一緒に見つけ、できるようになるまで待つように意識してください。
Q:「勉強しなさい」と言わなくても、学習に向かう子どもにするコツは? -------- 勉強する場所は、リビングがおすすめです。子ども部屋を与えるだけでは、子どもは勉強しません。子どもにとって「子ども部屋」は、悩みがあるときに一人になれる、好きなマンガや音楽を楽しむ、など自分が落ち着く空間なのです。
親は、教えるのではなく「御用聞き」のスタンスで子どもの話を聞いてあげてください。つきっきりになる必要はなく、料理など用事をしていても構いません。 ただ、「さっきから進んでいないんじゃない?」「何でこんな簡単な問題を間違えるの?」など、横から口出しするとうまくいきません。怒られると、子どもは嫌になってしまいます。笑顔で見守ることを心がけてください。
問題集を与える場合は、解答が詳しく載っているものを選びましょう。丸付けまで自分で行うことがポイントです。
正答できなかった数が多いと親は気になりますが、できなかった問題を理解することこそが、「勉強」なのです。すでにできる問題を解くことは「作業」でしかありません。丸付けで、正答した問題をレ点で、間違えた問題に「〇」を付けてみてください。〇印がついた問題は、いわば「宝箱」です。ゲームと同じで宝箱に何度も挑戦し、クリアできるとスキルが上がります。
また、ルールは「学習時間」ではなく「学習量」で決める方がいいでしょう。「毎日2時間」とした場合、親の目安では問題集10ページだったのに、実際はダラダラと3ページしか進まなかったときに、すんなり終了できる親は少ないでしょう。
また、時間通りに終わっても、「とりあえず2時間やり過ごせばいいのか」と子ども自身が考えてしまうかもしれません。
一方、算数も国語も問題集4ページと「量」で決めておけば、早く終わらせようと効率よく解く工夫にもつながりますし、解けなくて時間内に終わらなかったときにも、子ども自身が「終わるまでがんばろう」と思うようになります。
Q:共働きなどで、親が子どもの家庭学習を見る時間を確保できない場合も。子どもと過ごす時間が少なくても、親が効果的に働きかけるにはどうすればいいですか? -------- 共働きでも、家事や子どもの教育などの大半を母親が担っている家庭が多く、家庭学習においても、母親が担う役割は大きいと思います。何より大切なのは、子どもが「お母さんにほめてもらってうれしい、またがんばろう」と思える良好な親子関係を普段からつくっておくことです。
家庭学習では、幼少期の読み聞かせや母親との会話の量の差が、子どもの「国語力」の差となります。「国語力」とは、将来、暗記や読解など学力の土台となるもので、学習スピードの差にもつながります。乳幼児のころに、「読み聞かせをしなかった」「テレビやスマホを見せていた」などがあれば、国語力を念頭に置いて子どもと向き合いましょう。
中学生くらいになれば、母親が一生懸命仕事をしている姿は良い影響を与えます。「お母さんはがんばっているな」と子ども自身が認めると、自分から進んで勉強に向かう姿勢が生まれます。最初は、親が帰宅するまでに宿題を、帰宅後にワークをすると約束していたとしても、徐々に帰宅するまでに、宿題もワークも自分で済ませるようになるでしょう。
子どもにつきっきりでいられないことは、マイナスではありません。「子どもと衝突したときに、スッと気持ちを切り替えることができる」など利点もあります。 「私は働いて忙しいのに、勉強くらいしておいてよ」と思うこともあるかもしれませんが、「帰る時間がいつも遅くてごめんね」など、子ども側に立った一言をかける方が、子どもは「やろう」と思えます。過ごす時間が少ないと思うなら、一緒にいるときこそ、笑顔でいましょう。
Q:学習の習慣づけを、成績向上につなげるために親ができることは? -------- 勉強を「させられている」うちは、成績にはつながりません。親は、先生や教育評論家になる必要はありません。大切なのは、子どもの努力を正当に評価し、ほめるべきところを見逃さないことです。
いくつになっても、子どもは親がほめてくれると「がんばろう」と思います。テストで75点だったとしても、間違えたのは25点分だけと考え直して、その場ではこらえましょう。次のテストで、点数が1点でも、順位が1番でも上がったらきちんとほめてあげてください。
また、テスト対策をその子なりにがんばっていたと思えたら、テスト当日の朝は「一生懸命勉強していたから、もう100点満点だよ」くらい言えるといいですね。
反対に、テストの結果だけがよくても子どもの努力が感じられなければ、あまりほめなくていいでしょう。日々の結果に一喜一憂するのではなく、1年、2年など長いスパンでとらえることが重要です。
「努力をきちんと見てくれている」と子どもが実感できると、学習習慣に良い循環が生まれ、成績につながります。
(富田 祥文/会社役員)
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