NiziUを生んだNizi ProjectプロデューサーのJ.Y. Parkさんに「理想の上司」の声 リーダーシップの極意とは?
JIJICO / 2020年8月25日 18時0分
NiziUを生んだNizi ProjectプロデューサーのJ.Y. Parkさんに「理想の上司」の声 リーダーシップの極意とは?
日本中を熱狂させたK-POPガールズグループのオーディション・プロジェクト「Nizi Project」。1万人を超える応募者の中から練習生を発掘、育成し、最終的に9人でデビューするまでの過程とその後を追った番組の中で、少女たちの成長とともに感動を呼んだのは、総合プロデューサーJ.Y. Parkさんの厳しくも愛情ある言葉の数々でした。
「自分のありのままの姿が特別だということをわかるときが来るはずです」 「隣にいるみんなの短所ではなく長所だけを見て心から感謝すること。それが謙虚です」 「才能がある人が夢をかなえられるわけではありません。自分自身に毎日ムチを打って、自分自身と戦って、毎日自分に勝てる人が夢をかなえられます」
厳しい指摘やマイナス評価を伝える時も、間違いのポイントを正しく伝え、自信を損なわず前向きになれるような言葉掛けで彼女たちの才能を引き出し、驚くほど高レベルのパフォーマンスへと導いています。
J.Y. Parkさんのアドバイスの言葉は、なぜ当事者だけでなく、視聴者の心にも響いたのでしょうか。理想の上司に求められるリーダーシップについて、チームビルディングコンサルタントの土屋佳瑞さんに聞きました。
ビジョンを明確に伝え、メンバーと共有できることがリーダーの必須条件。「この人と一緒に成し遂げたい」と思う〝フォロワー〟の存在なくして理想のリーダーにはなり得ない
Q:指導的な立場の人の言動によって、チームのパフォーマンスが左右されることはよくありますが、「Nizi Project」のJ.Y. Parkさんのように特別なパフォーマンスを導く指導者には、共通する特徴的な傾向があるのでしょうか? -------- 組織の中でリーダーと呼ばれる人には、個人の力とチーム全体としての成果、その両方を引き上げることが求められます。特に多様性を受容する現代は、チームのビジョンと個人のビジョンに重なる部分があることが重要です。
プロジェクトやチームのビジョンを明確に伝えるだけではなく、チーム全員がそれを自分のこととしてとらえ、共有できるかどうかが大きなポイントとなります。
「Nizi Project」のJ.Y. Parkさんの場合、デビューに向けての長期的なものだけでなく、すぐ目の前のミッション、メンバー個人の課題など、いくつかのポイントごとに明確なビジョンを伝えています。しかも一人一人の性格や能力を短時間で見抜いて、正確にその人のレベルに合わせた伝え方を心得ているようです。
そのため、メンバーは迷いなく課題を受け入れ、次の段階に向けて進むことができているようです。
「Nizi Project」の場合は、そもそも応募の段階で、最終的なビジョンはほぼ一致しているのですが、一般社会では最初から一致していることはあまりありません。
とはいえ、J.Y. Parkさんの観察力、コミュニケーション能力が特に優れているということ以上に、プロデューサーや指導者という立場だけでなく、「自身もそのメンバーの一員であり、ビジョンの下では対等な存在である」という姿勢があるからこそ、より明確に伝わるのかもしれません。
Q:一般社会でリーダーの思いを空回りすることなくメンバーに伝えるために具体的にできることはありますか? -------- 企業などで指導的な立場にある人は、その存在だけで威圧感があるものです。年齢的にも職務上の経験値にしても格別なものはあるにしろ、総じてリーダーが偉いのではなく、役割上のポジションにすぎないことを、リーダー、メンバーともに認識するべきです。しかし、一般社会でこの威圧感を払拭するのは、なかなか難しいことです。
細かいことですが、リーダーの方から「おはよう」などのあいさつや声掛けをするだけでも、チームのモチベーションは上がります。
またJ.Y. Parkさんのように、自身も一人のパフォーマーとして、あるレベル以上の才能を持ち、なおかつトレーニングの努力を惜しまない姿を見せられるのなら、これほど強いメッセージはありません。
リーダー自身に努力の姿勢が見えず、指導内容と行動に大きな乖離があるようでは、ビジョンを伝えることも共有することも難しいでしょう。
Q:J.Y. Parkさんは、個人テストの結果を伝える際に、下位に甘んじた人にも、次につながるようなコメントで評しています。新卒者のように未成熟な人のやる気を損ねることなく、マイナス評価を伝えたり、奮起を促したりするような言葉がけのポイントは? -------- J.Y. Parkさんは、「このオーディションはある特定の目的に合わせてそこに合う人を探すだけで、みなさんが特別かどうかとは全く関係ありません」と述べていて、その人の人格とミッションをクリアできる・できないは別ということを強調しています。まさに、このことが、多くの人の共感を呼んだようです。
厳しい指摘をしなければならないような場合に、「ポジティブ サンドイッチ」という伝え方のコツがあります。相手にとってネガティブな内容や評価を、ポジティブな言葉で挟むようにして伝えるというものです。
実際J.Y. Parkさんも、まず「感動した」「ダンスに関しては完璧」などと、パフォーマンスの良かったところをほめ、次いで問題があると思われた部分について具体的に指摘しています。そして最後には必ず「努力に期待している」「成長はあなたの意思にかかっている」と、前向きな言葉で結んでいます。
実際に職場でミスなどを指摘するときにはむしろ〝ネガティブ サンドイッチ〟になっていることが多いのではないでしょうか。 開口一番に間違った点などを指摘して、少しばかりねぎらいの言葉をかけ、最後にまたダメ出しを重ねてしまうようでは、それがたとえ的確なアドバイスであったとしても、素直に受け入れてもらうことは難しいかもしれません。
Q:メンバーの選抜、コンテストやコンペなど、順位や優劣を明らかにするといった場合に、必ずしもその組織内の全員が納得できる結果とならないこともあります。不満が蓄積しないためには? -------- 職務上の評価の公正性がわかりにくいことは、チーム全体のモチベーションに影響する大きな原因になります。評価の基準や理由は、誰が見ても明らかでなければなりません。
業務内容や指示など、リーダーからメンバーへ伝える情報は、常に同じ内容、タイミングであるべきで、一部の人にだけ小出しにするような伝え方は厳禁です。
特に女性中心のチームでは、リーダーからの通達や情報は、あいさつひとつに至るまで〝チーム内平等〟が鉄則です。少しでも扱いに差があると、メンバー内の孤立や分断を招いてしまいます。
個人に対する指導やアドバイスにしても、熱量は変えずに、その内容はなるべくチーム内で共有できるものにすることです。
Q:女性の社会進出が進み、多くの企業で女性リーダーの登用を推奨する風潮も見られます。特に女性リーダーに求められるものなどはありますか? -------- これまで、能力があってもリーダーにはなれなかった女性を積極的にリーダー登用する企業は、ここ10年で確実に増えつつあります。とは言っても、日本の企業風土として、女性管理職や女性リーダーが存分に活躍できるには、まだまだ十分な環境が整っているとは言い難いでしょう。
数少ない女性リーダーが力を発揮するためには、組織としての理解が不可欠です。さらに、男性中心の管理職と部下との間で、女性リーダーが孤立しないよう〝味方〟のような存在を設けることもポイントとなります。
女性リーダーのメンタル部分のサポートや、部下への対応といった相談に応えるほか、組織全体の啓発のためにも、第三者の専門的な外部コーチのような存在が必要です。
実は職能は十分備えているのに、組織のマネジメントまでできる女性リーダーはまだ少ないというのが現状です。女性が多いチームを率いる場合、部下の心情を理解できるがゆえに、返ってストレートな指示・命令が下せないことが多いようです。
たとえば作業成果の提出期限なども、「なるべく早く」とか「時間があれば」などというように、強制を避けてしまう傾向があります。さらには「仕事を振り分けるより、自分でやった方が早い」となってしまうことも。これでは、本来のマネジメント業務に支障が出てしまいますし、何よりメンバーの成長を望めません。
女性リーダーに求められるのは、論理的なものの見方ができることに加え「個人のスキルと人間的な関わりの部分を、全く別のものとして捉えることができる能力」と言えるでしょう。
Q:J.Y. Parkさんが、母国語ではない言語を織り交ぜて語る言葉に、誰もが感銘しました。リーダーシップのスキルとして重要視される言葉の力とは? -------- 確かに言語能力に優れていることは、指導内容を的確に伝えるうえでは大切なことですし、チーム全体への影響力も大きくなります。ただ、どんなに言葉を尽くしても、それだけで伝えたいことを正しく相手に届けることは、容易ではありません。
ではなぜJ.Y. Parkさんの言葉は、メンバーだけでなく、多くの人の心をも惹きつけるのでしょう。
それは、メンバーのパフォーマンスを一人の観客として純粋に楽しんでいる様子が、その目の輝き、驚きの表情、漏れ出るため息から見て取れるからではないでしょうか。「エンターテインメントが大好き」という気持ちにうそ偽りがないことが、言葉以上にストレートに響いたはずです。
心から「もっとよくしよう」「一緒にがんばってプロジェクトを成功させよう」と語られる言葉は、素直に誰のもとにも届くものです。どんなに能力があっても、一人ではリーダーにはなれません。「この人と一緒にやりたい」と思う〝フォロワー〟の存在があってこそのリーダーなのです。
(土屋 佳瑞/人材コーディネーター)
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