アントニオ猪木さんが難病「心アミロイドーシス」を告白。症状は?どのような病気?

JIJICO / 2020年8月28日 16時0分

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アントニオ猪木さんが難病「心アミロイドーシス」を告白。症状は?どのような病気?

元プロレスラーのアントニオ猪木さんが、7月26日、自身のツイッターで「心アミロイドーシス」という難病におかされていることを告白。SNS上では、驚きの声とともに、病と向き合う猪木さんに多くの応援コメントが寄せられました。日本では特定疾患に指定されている「心アミロイドーシス」とは、どのような病気なのでしょうか。症状や治療法について、内科医の古家敬三さんに聞きました。

息切れや呼吸困難、夜間の呼吸が苦しくなるといった症状が。かかりつけの内科、もしくは循環器内科を受診し早期診断・治療が重要

Q:「心アミロイドーシス」とは、どのような病気なのでしょうか? -------- まず、「アミロイドーシス」とは、アミロイドと呼ばれる難溶性のタンパク質繊維が、心臓、肺、腎臓などのさまざまな臓器の細胞外に沈着し、臓器機能が低下して発病するものです。

アミロイドーシスは、複数の臓器にアミロイドが沈着する「全身性アミロイドーシス」と、特定の臓器にだけアミロイドが沈着する「限局性アミロイドーシス」に大別されます。

限局性アミロイドーシスの一例としては、脳にアミロイドβというタンパク質が溜まって発症する、アルツハイマー型認知症などがあります。

全身性アミロイドーシスのうち、心臓にアミロイドが蓄積し、心臓の働きが悪くなる状態を「心アミロイドーシス」といいます。診断確定が難しく、治療困難な疾病と見なされてきましたが、近年、診断法の進歩により、心不全の原因として珍しくないことも明らかになってきました。

予後は病状の進行具合により大きく異なるため、早期診断・治療が極めて重要といわれています。

現時点での発症者は人口100万人あたり6.1人と推定されています(「心アミロイドーシス診療ガイドライン」2020年版より)。

Q:発症の原因は何なのでしょうか。遺伝も影響するのでしょうか? -------- アミロイドーシスには、遺伝性のものと、非遺伝性のものがあります。遺伝性のアミロイドーシスの多くは、トランスサイレチンというタンパク質の遺伝子異常を持つ人に生じます。血縁者にアミロイドーシスを発症した人がいる場合、この遺伝子を持つ可能性が高くなります。

非遺伝性のアミロイドーシスは、誰にでも発症する可能性があります。

心アミロイドーシスを引き起こす主な病型としては、

①骨髄内の形質細胞で産生される、免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質の異常に起因するもの ②野生型(遺伝子変異ではない)トランスサイレチンに起因するもの ③遺伝子異常を伴うトランスサイレチンに起因するもの

などがあります。

①は心アミロイドーシスの症例として最も多く、②は60歳以上の男性に多いといわれ、加齢が発症に関与していると考えられていますが、いずれもアミロイドが発生する細かなメカニズムは不明とされています。

Q:具体的にどのような症状がありますか? 何がきっかけで病気が判明することが多いのでしょうか? -------- 心アミロイドーシスは、全身性の疾患であるため、心臓やほかの臓器にも症状が出る場合があります。症状は、アミロイドの種類や沈着する臓器によって異なります。

心臓にアミロイドが沈着すると、心室の壁が厚くなり、心不全を引き起こします。進行すると、息切れや呼吸困難、夜間の呼吸が苦しくなるなどの症状が出ます。治療を進めなければ、難治性の不整脈を引き起こし、心停止に至る場合もあります。

心臓以外では、例えば腎臓にアミロイドが沈着すると、腎不全を引き起こし、むくみや蛋白尿などの症状が出ます。末梢神経に沈着すると手足のしびれを感じ、舌に沈着すると巨舌症(舌が大きくなる)が見られます。

このように、病状が1カ所だけでなく、複合的に症状があらわれた場合、アミロイドーシスの可能性が考えられるため、医師の総合的な判断が重要です。

健康診断や人間ドックの受診は、早期診断の第一歩となります。「心電図異常が見られる」「蛋白尿が出ているのに糖尿病ではない」といった所見が、アミロイドーシスの診断の入り口になるケースもあるのです。

Q:心アミロイドーシスの診断を確定する方法は? -------- 息切れや心肥大、心電図異常といった、心アミロイドーシスと関連が深い症状をもとに病気を疑い、胸部レントゲン、採血、心臓エコー検査、心臓MRI検査などを行います。

診断を確定するためには、体の組織にアミロイドの沈着を確認する必要があります。生体組織診断と呼ばれる検査(生検)で、胃、直腸、皮膚、皮下脂肪などの一部を採取して行います。検出できない場合には心筋生検を行うこともあります。

上記の検査に加え、遺伝子解析などを経て、病型を確定します。

アミロイドーシスは病型により治療法が異なるため、さまざまな検査を実施する必要があります。そのため、診断が確定されるまで、数カ月程度を要する場合もあります。

Q:心アミロイドーシスは、現在どのような治療が行われているのでしょうか? -------- 前述の通り、心アミロイドーシスの治療法は、病型によって異なります。従来は症状をやわらげるための対症療法が中心でしたが、近年、新たな治療法も進められています。

一例として、遺伝型のアミロイドーシスは、アミロイドの沈着を抑制する薬の服用、肝移植などの治療法があります。血中のトランスサイレチンは肝臓で産生されることが多いため、肝移植によりアミロイド沈着の進行を抑えることができます。

形質細胞の異常に起因するアミロイドーシスの場合は、悪い細胞をやっつけ、正常な免疫グロブリンを作れるように、自家造血幹細胞移植、抗がん剤を用いた化学療法を行います。この病型は進行が速いので、早急に治療を始める必要があります。

その他、各臓器の機能を悪化させないための治療や、症状や徴候を軽減する治療なども行われます。あくまでも上記の治療法は一例であり、病型や病状の進行具合によって、治療法は大きく異なります。

Q:心アミロイドーシスと診断された場合、日常生活を送る上で注意すべきことは? -------- 一般的な心不全患者の方と同様に、血圧を上げないことが大切です。塩分を控え、ストレスのない生活を心がけてください。心臓に負担がかからない程度の軽いウオーキングは良いですが、過度な運動は避けましょう。

インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種を行い、心不全悪化の原因となる感染症を防ぐことも重要です。

Q:気になる症状がある場合、どうすれば良いでしょうか? -------- まずは、かかりつけの内科、もしくは循環器内科を受診してください。心アミロイドーシスの疑いがあると診断された場合、専門の医療機関へ転院し、検査・治療を行います。適切な治療を受けなければ、徐々に病状が進行する難病のため、早期発見・早期治療が何よりも重要です。

現在、日本では発病メカニズムの解析や薬剤の開発など、新たな治療戦略が日々進められており、治療法も進歩しています。全身性アミロイドーシスは難病指定されており、一部の病型は、国の難病医療費助成制度を使うことで、医療費の補助を受けることも可能です。   自分で気付くことが難しい病気ですが、家族の病歴や定期的な健康診断などにより、発病のサインを見つけることはできます。日々の健康管理に十分留意することが大切です。

(古家 敬三/内科医)

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