子どものキャッシュレス決済で金銭感覚を養う?利用できるサービスやルールについて
JIJICO / 2020年9月2日 14時0分
子どものキャッシュレス決済で金銭感覚を養う?利用できるサービスやルールについて
電子マネーやスマホなどで支払うキャッシュレス決済が急速に広がっています。マイナンバーカードとキャッシュレス決済サービスを連携させると、9月1日から始まった、ポイント還元が受けられる「マイナポイント」をきっかけに、子どもにもキャッシュレス決済サービスを使わせようかと考える保護者もいるかもしれません。すでに「お小遣いをキャッシュレスで」という家庭もあるようですが、お金を使い慣れていないうちからキャッシュレス決済を利用することに不安の声もあります。
子どもがキャッシュレス決済サービスを使う前に、親が教えておきたいことは。また、子どもが使えるキャッシュレスサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの平原憲治さんに聞きました。
目的を限定した交通系電子マネーから始めるとスムーズ。子どもとともに親もマネーリテラシーを高める機会ととらえ、一緒に学ぶ姿勢が大切
Q:キャッシュレス化が進んでいますが、子どもがキャッシュレス決済を利用する割合も増えていますか? -------- 親世代のキャッシュレス化が進み、相談に来られるお客さまの中に、子どもにもキャッシュレス決済を利用させている家庭が増えている印象です。電車で通学をしている小学生では交通系電子マネーの「こども用Suica」を持たせている、中高生ではコンビニの買い物を電子マネーで支払う、などの例が多いです。
お小遣いのキャッシュレス化として、プリペイドカードなどに一定額をチャージする方法をとっている家庭も一部にはあるようです。ある調査では、子どものお小遣いのキャッシュレス化に興味がある人は約6割ですが、実際には約9割が現金で渡しているという結果が出ています(イー・ラーニング研究所調べ「子どものお小遣いに関する調査」、2019年5月)。
Q: 子どもが使える主なキャッシュレス決済にはどのようなものがありますか? -------- 小学生以上から利用できる代表的なサービスは下記です。
・電子マネー(交通系) Suica、PASMO、ICOCAなど(いずれも小学生向けの子ども用あり)
・電子マネー(流通系) nanaco、WAONなど(いずれも年齢制限なし)
・プリペイドカード Visaプリペなど(満6歳以上から)
・スマホ決済 PayPay、LINE Payなど(いずれも年齢制限なし)
※年齢制限なしのサービスも、親の同意が必要な場合があります
小学生低学年のうちから取り入れやすいのは、子ども用の運賃が適用できる交通系の電子マネーです。流通系の電子マネーは、利用履歴をインターネットで確認できるものが多く、設定により、親の端末から子どもの利用履歴を見ることができます。
プリペイドカードの「Visaプリペ」では、家族全体で残高をシェアできる機能がついた「かぞくのおさいふ」サービスがあります。家族間で残高をまとめたり、移動させたりと、一元管理できるため、使い過ぎの防止につながります。
チャージタイプでは、例えば、高校生の子どもを持つ親から、「ひと月の金額を決めてチャージしても、月半ばで足りなくなり、塾や部活動でまだお金が必要と言われて、追加でチャージしてしまう」という悩みをよく聞きます。中高生になるとスマホ決済も増えてきますが、後払い形式やオートチャージの設定では、使いすぎる可能性があり、親側の管理が難しくなります。
Q:子どもがキャッシュレス決済を利用することに慎重な声もあります。メリット・デメリットは? -------- キャッシュレス決済は利用履歴が残るため、子どもが何に対してお金を使っているのかを親が把握することができます。子どものお金の使い方を、親が気にかけ、子どもと一緒にお金に向き合う機会をつくることができるのは大きなメリットでしょう。ただ、使い過ぎると、家計の支出が増えてしまうというデメリットはあります。
子どもに限らず、自由にキャッシュレス決済を利用していると、コンビニでふと目についた商品も「とりあえず買っておこう」と、本当に必要なものかをよく考えずに気軽に買ってしまう傾向があります。「財布の中に5000円しかない」と意識して買い物をするときと比べ、ムダな買い物が増えてしまう懸念はあります。
また、現金と比べて、お金のありがたみを感じにくいといえます。キャッシュレスに対応していない店もありますので、キャッシュレス一辺倒にせず、普段から現金にも慣れ、「お金には限りがある」と理解させておきたいですね。
Q:子どもがキャッシュレス決済を利用する上でのルール作りは? -------- 小学生低学年、高学年などの年齢で区切るのではなく、「子どもが正しいお金の使い方ができている」と思えたら、次のステップに進む形で、子どもの理解度や成長に合わせて、段階的にキャッシュレスの経験の幅を広げていくのがおすすめです。
最初は、「交通費は電子マネーで支払う」など、目的を限定すると取り組みやすいです。次に、月5000円など、金額を決めてチャージし、その範囲内でやりくりをする習慣をつけます。あわせて、現金で「お金は使うと減る」という感覚も身に付けましょう。
親が働くことでお金を受け取り、そのお金でお菓子を買ったり、遊びに行ったりできるなど、お金の流れを伝えておくこともポイントです。何よりも重要なのは、履歴を見ながら「これは必要な買い物だったのか」など、その都度、親子でお金について話し合うことです。
Q:キャッシュレス時代のマネー教育で、親が子どもに教えておきたいことは? -------- 社会はキャッシュレス化に進んでおり、子どもがキャッシュレス決済を利用する機会は今以上に増えるでしょう。
キャッシュレス決済は「ポイントが付くからお得」と、始める人が多いですが、特に後払い式では、「お金に限りがある」という感覚が薄れ、使いすぎてしまうデメリットもあります。多くの現金を持ち歩く必要がなくなり利便性は高まりますが、家計管理を劇的に変えるものではありません。
現金、キャッシュレスのどちらでも、まずは親子でお金の正しい知識を身に付け、マネーリテラシーを向上させることが大切です。親世代も、これまでに学校などでマネー教育を受けたことがあるという人は少ないはずなので、教育の一環として、親も一緒に勉強していく姿勢を見せましょう。
さらに、これからのマネー教育では、お金を使うだけでなく、増やすことにも目を向けるといいですね。お金の運用について、子どもにきちんと教えられる親世代は少数派かもしれませんが、これからの時代には重要な視点です。
例えば、キャッシュレス還元で貯まったポイントを投信運用に回すことができるサービスなどで、投資を体験することができます。また、毎月のお小遣いの中で、使わなかった分に対して、親が少し上乗せして貯蓄する方法もおすすめです。現金かキャッシュレスかという選択だけでなく、広い視野をもって、お金について親子で考えてみてください。
(平原 憲治/ファイナンシャルプランナー)
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