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新型コロナウィルスの飛沫防止用シートに係る火災予防上の留意事項について

JIJICO / 2020年9月10日 7時30分

新型コロナウィルスの飛沫防止用シートに係る火災予防上の留意事項について

新型コロナウィルスの飛沫防止用シートに係る火災予防上の留意事項について

物販店等のレジカウンター等へ感染拡大防止対策の観点から、飛沫防止用シートの設置が増えていますが、防火防災の観点からは問題になるケースがあるのをご存知でしょうか?新型コロナウイルスの感染拡大により、世の中の対面式の場所の至るところで感染拡大防止対策の観点から、飛沫防止用シートの設置が増えているところです。皆さんも一度は、目にしたことがあるのではないでしょうか。この飛沫防止用シートによる対策、ウィルスの感染拡大の観点だけを捉えて考えると大変良い対策であるといえますが、防火防災の観点から捉えると問題はないのでしょうか?

飛沫防止用シートの火災危険性

飛沫防止用シートは、確かに人と人との間に一種の物理的な壁を設けることができるため、感染防止対策としての考え方としては、理にかなったものだということができると思います。しかし、火災予防上の観点からは、シートの材質にも配慮する必要があります。飛沫防止用シートの材質には、着火・燃焼しやすいものがあるからです。また、シートは透明なものであることから、これらに起因する危険性というのも認識しておかなければいけません。実際、今年4月に大阪府にある物販店舗内のたばこ売り場において、新型コロナウイルス感染症予防対策でレジに設置されている飛沫防止シートが焼損する火災が発生しました。そして、その火災の原因は、たばこ売り場で販売しているライターを客が試しに点火した火炎が飛沫防止シートに着火したというものでした。幸い、けが人の発生や延焼拡大することはありませんでしたが、災害というのは、このように思いもよらないことから発生するものです。このようなシートは、面積も大きいため、一度着火すると、火炎の延焼拡大にもつながり、大きな火災を引き起こしかねません。このようなことから、消防法では、物販店や飲食店等の不特定多数の方が出入りする建物(以下「物販店等」といいます。)にカーテン、じゅうたん等(以下「カーテン等」という。)を設ける場合は、法令で定める防炎性能を有するものを設置しなければならないという規制もあるところです。このような火災危険性を考慮しながら、また、飛沫防止シートはカーテン等に該当する場合もあるということを認識しながら、これらを設置する際は、次のことに留意しましょう。

・火気使用設備・器具、白熱電球等の熱源となるものから距離をとること ※熱源により、シートが燃えてしまう場合があります。シート状のものより、板状のものの(上図挿入写真のようなもの)方が火災発生のリスクは低減できます。

・必要に応じて難燃性又は不燃性のものの使用を検討すること ※防炎物品等の防炎性能を有する製品の使用推奨。詳細は所轄消防本部へご相談ください。

避難経路の視認障害が生じる危険性

建物には、火災等災害発生時に在館者を安全に避難させるために誘導灯という設備が設置されていることがあります。しかし、必要以上に飛沫防止シートを設置することにより、これら誘導灯の視認障害(シートが邪魔になって誘導灯や避難口が見えなくなること)が発生することがあります。飛沫防止シートを設置する際は、視認障害は生じないよう必要最小限とし、場合によっては、所轄の消防本部の指導を仰ぐことも必要です。

火災感知器やスプリンクラーヘッドの正常な作動の妨げる危険性

飛沫防止シートを自動火災報知設備の火災感知器やスプリンクラー設備のヘッドに近接して設けると、正常な動作の妨げになる場合があります。このような状況は、火災を早期に発見することを妨げ、初期消火を遅延させるばかりか、消防法に定める技術基準にも抵触します。これは、一般住宅における住宅用火災警報器についても同様です。新型コロナウィルスの感染防止対策が仇となって、大きな火災を引き起こしてしまったり、逃げ遅れてしまったりということがあっては、安全対策としては本末転倒です。

このように、「あちらを立てればこちらが立たず」といったように、1つの事項に対策を採ると、1つの事項に問題が発生するということは様々な法令規制がある中でしばしば発生することです。 例えば、防犯対策(簡単に建物に出入りさせない対策)と災害時の避難・救助の対策(簡単に建物に出入りできるようにさせる対策)は相反する側面を持っています。二つの要素の妥協点や落としどころを適正に見定め、それぞれの対策を採ることが大切です。どのように対策を採れば良いか分からない場合は、専門家や消防本部へ相談するとよいでしょう。建物の態様によって、最善の対策というのはそれぞれ個別の検討が必要な部分もありますが、このような新型コロナウィルス対策が、一方で火災危険性を増幅させる可能性をはらんでいるということを十分認識したうえでの対策が、ウィズコロナの時代には求められると思います。

【飛沫防止用シートの燃焼実験映像(秋田市消防本部ホームページ)】 https://www.youtube.com/watch?time_continue=11&v=ytS062j0A-c&feature=emb_logo

【消防庁リーフレット(総務省消防庁ホームページ)】 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/items/himatsuboushi_leaflet.pdf

(中野 秀作/防火防災コンサル)

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